ユナイテッドアローズ(以下、UA)、ベイクルーズ、ビームスはこのほど、恒例の3社合同の販売員勉強会を開催した。今年のテーマは「対面接客の情緒的価値を知る」。各社から販売歴1~3年の若手販売員が参加し、ロールプレイング形式で販売員スペシャリストの接客を体験した。
UA丸の内店で行われたロールプレイングは、3人の若手社員と販売スペシャリスト1人がチームとなり、1人10分の接客を体験した。ビームスの若手社員・吉澤太地さんは、販売歴約35年のユナイテッドアローズ明石達司さんの接客を受けた。明石さんは、ダブルジャケットの購入を迷う吉澤さんに声をかけ、シーン別にシャツやネクタイなどを巧みに提案。「気になるとしたら、袖の丈感ですね。あと1cm短くすれば、ぐんときれいにきれますよ。お直しもお任せください」とこだわるべきポイントも丁寧に伝えた。
接客を受けた吉澤さんは、「全体的なトーンの明るさと商品を触る所作の美しさに感動した。スムーズな提案で、新しいアイテムに挑戦する時の不安な気持ちが自然になくなった。自分はお客さまのパーソナルな部分に入っていくことが苦手だったが、明石さんのように会話の中でヒントを見つけ、広げていく技を実践したい」と語った。
明石さんは、「商品情報は誰でも簡単に手に入る時代だからこそ、そのお客さまに合わせた着こなしなど、プラスアルファの何かを持ち帰ってもらうことを心掛けている。また、『僕はこのパーカの合わせがすごく好きなんです』とあえて自分の情熱を語ることも、お客さまから信頼を得て距離を縮めるテクニックの1つ。難しいことに挑戦しようとせず、まずは親切・丁寧・笑顔を徹底することから始めてみてほしい」と若手販売員へエールを送った。
今年は、実店舗での付加価値のある接客体験を生み出すことが各社共通の課題として上がった。UA販売支援部教育チームの五十嵐保行氏は、「コロナ禍の中で、(接触を避ける傾向があることから)必要なことを端的に回答する事務的な接客が目立つようになった。しかし、わざわざ来店してくださるお客さまは、物欲を満足させることではなく、感動を求めている。今販売員に必要なことは気持ちを揺さぶるスキルだ」という。特に若手販売員は、ECでの買い物に慣れている世代で、客としての接客体験がそもそも少ない。3社が協力し、リアルな接客の場を設けることで、オンラインの研修では伝わりづらい、接客時の視線や距離感、所作などの大切さを理解する機会になった。