「みんなが『ガニー』ガールズのとりこだ」と語るのは、デンマーク・コペンハーゲン発のファッションブランド「ガニー(GANNI)」のアンドレア・バルドー(Andrea Baldo)最高経営責任者(CEO)だ。
「ガニー」は2000年にカシミヤ製品を扱う店として創業し、09年にニコライ・レフストラップ(Nicolaj Reffstrup)とディッテ・レフストラップ(Ditte Reffstrup)夫妻がウィメンズブランドとしてリブランディングした。17年にはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の投資会社Lキャタルトン(L CATTERTON)が出資している。
「ガニー」はSNSマーケティングに優れ、ブランド着用者の画像を集めたハッシュタグ「#GanniGirls」はインスタグラム上で7万件以上の投稿を誇る。これにより、ブランド特有のプリントやルーズなシルエット、ピーターパンカラーを好む女性たちのコミュニティーを築いている。
バルドーCEOは18年にガニーのCEOに就任。ブランドのグローバル化のために尽力し、ブランドの成長をけん引してきた。「良いデザインを手の届く価格帯で提供することが重要だ」とバルドーCEOは好調の理由を語る。また、キルティングコートからクリスタルをあしらったニット、ラバーブーツ、ピーターパンカラーのシャツまで、あらゆるカテゴリーで“売れ筋”を生み出したことがブランド成功の秘訣だと付け加えた。
最重要市場は米国、そして中国へ
「ガニー」を真のグローバルブランドにするためにも、現在の最重要市場は米国だという。米国はこの3年間で、本国のビジネスを上回る、ブランドにとって最大の市場になった。ローカライゼーションに重点を置き、ロサンゼルスのメルローズ・アベニューとニューヨークのマーサー・ストリートに出店。現地のチームを結成し、ショールームも立ち上げた。
米国の次に狙う市場は中国だ。その足掛かりとして、まずはネッタポルテ(NET-A-PORTER)やエッセンス(SSENSE)といった第三者が運営するECサイトを通じて中国市場に参入。5月には中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)が運営するECサイト「Tモール(TMALL)」に単独で出店した。
「結果は驚くものだった。市場が整っていたため、われわれの予想をはるかに上回る成果を出すことができた。おそらく韓国やSNSにおける影響力の大きさが理由だと思うが、認知度が想定より高かった。この結果を受けて、やっと市場に直接進出することができる。この数字は次のステップである実店舗の出店を後押ししてくれる。実店舗出店は中期的目標だったが、現在は最優先課題だ」。
バルドーCEOが着任して以来、共同創業者のニコライ・レフストラップは完全にサステナビリティと循環型社会に焦点を移し、事業のあらゆる側面において試行錯誤を繰り返しているという。原材料については、リサイクル素材やデッドストック素材を増やし、コペンハーゲンの店舗ではレンタルサービスを試験的に開始。生産後の衣服の寿命を延ばす方法を模索している。
「われわれは、資源からより多くの価値を引き出せるようなビジネスモデルを構築する必要がある。経済的に成立させることは容易なことではないが、理想としては、同一の資源から価値を引き出す回数を増やしたい」とバルドーCEOは話す。「製品には残存価値があるのに、業界ではこれまで最初の取引にしか注目していなかった」。
この目標をかなえる可能性を秘めているのがレンタルモデルだ。レンタルモデルを導入することで、ブランドは1つの衣服で複数の取引を行い、その後、中古市場で販売することで利益を得る機会をさらに得ることができる。他方、需要の創出は継続課題だという。「最大級の二次流通市場を誇るデンマークで試験運用を開始し、このモデルが機能する手ごたえを感じた。しかし、現時点では経済的に成立せず、数量も思うように増えていない。だからこそ、より多くのトラフィックを生み出すために他の市場への拡大を考えている」とバルドーCEOは説明する。
最終的な目標についてバルドーCEOは、会計時に支払い方法を選択できるように、レンタル品、新品、中古品のいずれかを選択できるようにすることだと答えた。「顧客とこのようなやり取りを行うことが普通になるだろう。また、異なるビジネスモデルの間でバランスを取り、適切なコスト構造を構築できるかどうかはブランドにかかっている」と意気込む。