「特集記事:第1回 平成27年度介護保険制度の改正内容について」
これまで、2014年10月から介護保険の改正に関する特集記事を10回に亘って掲載してきました。
今回は、これまでの特集記事で解説した内容を基に、2015年以降の介護保険制度改正で、特にポイントとなる内容を紹介します。
なお、各関係者において、特に影響のある改正内容を利用者事業者市町村で示しています。
平成27年度 介護保険改正 11のポイント
1.全ての市町村で「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」を実施利用者事業者市町村
2.「要支援者」の方が利用している「訪問介護」「通所介護」が「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」に移行利用者事業者市町村
3.「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」で実施されるサービスの種類・基準・単位は市町村が規定利用者事業者市町村
4.市町村が定めたサービス単位数を基に介護保険サービス事業者は請求事務を実施事業者市町村
5.「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」における「介護予防支援費/介護予防ケアマネジメント費」の提出先について、注意が必要事業者
6.一定以上所得者の「利用者負担割合」と「利用者負担上限額」を引き上げ利用者事業者市町村
7.補足給付において「配偶者の所得」や「預貯金」を勘案し、判定利用者市町村
8.低所得者への介護保険料の負担軽減利用者市町村
9.特別養護老人ホームの入所要件に「要介護3」以上が新たに追加利用者事業者市町村
10.「住所地特例者」も所在市町村が提供する「地域密着型サービス」や「地域支援事業」を利用することが可能利用者事業者市町村
11.「新しい総合事業」の「高額介護サービス費相当事業」「高額合算相当事業」は市町村の判断により事業が実施市町村
1.全ての市町村で「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」を実施利用者事業者市町村
「平成27年度介護保険改正」では、「平成24年度介護保険改正」で創設された「介護予防・日常生活支援総合事業」を発展的に見直し、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」として、平成29年4月までに全ての市町村で実施されます。
参考
第4回 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要について(その1)
2.「要支援者」の方が利用している「訪問介護」「通所介護」が「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」に移行利用者事業者市町村
「要支援者」が利用している「訪問介護(ホームヘルプサービス)」「通所介護(デイサービス)」について、平成29年度末までに市町村が実施主体となる「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」に移行されます。
参考
第4回 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要について(その1)
3.「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」で実施されるサービスの種類・基準・単位は市町村が規定利用者事業者市町村
これまで「要支援の方」が利用していた「訪問介護(ホームヘルプサービス)」「通所介護(デイサービス)」に関するサービス種類・基準・単位は全国一律で同一の基準となっていましたが、今後は、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」に移行されることに伴い、市町村が地域の実情等を踏まえて、サービス種類・基準・単価等を定めます。
参考
第4回 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要について(その1)
第5回 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の概要について(その2)
4.市町村が定めたサービス単位数を基に介護保険サービス事業者は請求事務を実施事業者市町村
「ポイント3」で記載した通り、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の単位数は市町村が定めることになります。「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」を提供する事業者は、市町村が定めた単位数(基本的には、「市町村版介護予防・日常生活支援総合事業単位数表マスタ」で提示される見込み)の内容を確認した上で、請求書や請求明細書を作成する必要があります。
参考
第6回 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の事務処理について(その1)
5.「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」における「介護予防支援費/介護予防ケアマネジメント費」の提出先について、注意が必要事業者
「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」において、利用するサービスによって、「給付管理票」の提出有無や「介護予防支援費/介護予防ケアマネジメント費」の請求先が異なります。
総合事業対象者の場合、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」のサービスを利用した際は、「介護予防ケアマネジメント費」として保険者へ請求しますが、要支援者の方の場合、「介護予防給付」の利用有無等によって、「国保連合会請求パターン」又は「市町村請求パターン」となるため、注意が必要となります。
なお、「給付管理票」は、上記の請求先に関わらず、「介護予防給付」や「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の限度額管理対象サービスを利用している場合は、「給付管理票」を国保連合会へ提出する必要があります。
参考
第7回 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の事務処理について(その2)
6.一定以上所得者の「利用者負担割合」と「利用者負担上限額」を引き上げ利用者事業者市町村
平成27年8月から1号被保険者のうち、一定以上の所得基準を有している人の「利用者負担割合」が「1割」から「2割」に引き上げられます。
さらに、平成27年8月から同一世帯内に一定以上の所得者がいる場合、その世帯の「利用者負担上限額」が「37,200円」から「44,400円」に引き上げられます。
参考
第8回 一定以上所得者の利用者負担の見直しについて
7.補足給付において「配偶者の所得」や「預貯金」を勘案し、判定利用者市町村
これまで、利用者が世帯分離をした場合には、世帯分離前の状況に関わらず、本人が住民税非課税であれば、「補足給付(特定入所者介護(予防)サービス費)」の対象者とされていましたが、平成27年8月以降は、配偶者との世帯が分離していても、配偶者の所得を勘案し、「補足給付(特定入所者介護(予防)サービス費)」の対象者かを判断することになります。
さらに、「預貯金等」の要件も勘案し、「補足給付(特定入所者介護(予防)サービス費)」の対象者かを判断することになります。
参考
第10回 平成27年度介護保険制度のその他改正内容について
8.低所得者への介護保険料の負担軽減利用者市町村
平成27年度から、65歳以上の全体の約3割に該当する非課税世帯(第1段階~第3段階)に対して、新たに公費を投入し、介護保険料の負担軽減が行われます。
参考
第10回 平成27年度介護保険制度のその他改正内容について
9.特別養護老人ホームの入所要件に「要介護3」以上が新たに追加利用者事業者市町村
平成27年4月以降、特別養護老人ホームは、居宅での生活が困難な中重度の要介護高齢者を支える施設としての機能に重点化が図られることを踏まえて、新規に入所する方の要件として、原則として「要介護3」以上に限定されることになります。
ただし、「要介護1」や「要介護2」の方に対しても、やむを得ない事情により特別養護老人ホーム以外での生活が著しく困難であると認められる場合には、市町村の適切な関与の下、施設ごとに設置している入所施設検討委員会を経て、特例的に特別養護老人ホームへの入所が認められることになります。
参考
第10回 平成27年度介護保険制度のその他改正内容について
10.「住所地特例者」も所在市町村が提供する「地域密着型サービス」や「地域支援事業」を利用することが可能利用者事業者市町村
これまで、「住所地特例者」は入所後に所在している市町村の「地域密着型サービス」や「地域支援事業」を利用することが出来ませんでしたが、平成27年4月以降は、入所後に所在している市町村が提供する「地域密着型サービス」や「地域支援事業」を利用できるように見直しが行われます。
また、上記の見直しに伴い、保険者市町村(※1)において、平成27年4月時点で「新しい総合事業」が未実施だったとしても、「住所地特例」の対象者が施設所在市町村(※2)の「新たしい総合事業」サービスを利用した場合、「新しい総合事業」に関する給付費を支払う必要があります。
※1 「住所地特例」の対象者が施設に入所する前に所在していた市町村
※2 「住所地特例」の対象者が入所している施設の所在市町村
参考
第2回 「サービス付き高齢者向け住宅への住所地特例の適用」の見直しに関する概要について
第3回 「住所地特例」に係る事務処理の見直しについて
11.「新しい総合事業」の「高額介護サービス費相当事業」「高額合算相当事業」は市町村の判断により事業が実施市町村
「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」で利用したサービスの利用者負担を軽減するため、「高額介護サービス費相当事業」が実施される見込みであり、「高額医療合算介護予防サービス相当事業」も市町村の判断により、実施することが望ましいとされています
特に「高額医療合算介護予防サービス相当事業」を実施する市町村の場合、これまでは、国保連合会から送付された情報を基に「高額医療合算介護(介護予防)サービス費」の支給が行えましたが、今後は、「総合事業」の自己負担額の情報を基に、市町村が支給を行うことになるため、事務運用について検討する必要があります。
参考
第9回 「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」における「高額介護サービス費相当事業」、「高額医療合算介護予防サービス相当事業」について
まとめ
「平成27年度介護保険改正」では、団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据えて、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステムの構築」と「費用負担の公平化」を目指しています。
「地域包括ケアシステム」は、市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要とされています。
「地域包括ケアシステム」では、地域住民の「互助(お互いに支えあう)」が重要とされています。
地域住民の「互助(お互いに支えあう)」の仕組みを活用することが「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」の大きなポイントになります。
「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」では、ホームヘルパーの資格を有していない地域住民(雇用労働者やボランティア等)が家事援助や外出支援等のサービスを提供することが可能となります。
さらに、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」が平成29年4月までに全ての市町村で実施されることで、介護給付費の効率化も目指されています。
上記に記載している通り、「平成27年度介護保険」の大きな施策として、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業の実施」が平成27年4月から順次実施されますが、その他にも、「利用者負担の見直し」や「利用者負担上限額の見直し」等が平成27年8月以降に実施されます。
「利用者負担の見直し」に伴い、介護保険サービス事業者は、平成27年8月以降、「2割負担」の対象者が新たに増えるため、請求誤りがおきないように、利用者の「負担割合証」を確認することが求められます。
介護保険サービス利用者は、2015年8月以降、介護保険サービスを利用する際に、市町村から送付される「負担割合証」を介護保険サービス事業者へ提示する必要があります。
※当記事は平成27年3月31日までの間に厚生労働省から提示された資料を基に作成しています。今後、厚生労働省等からの提示内容により、記載内容が異なる可能性があります。
添付
厚生労働省HP
介護予防・日常生活支援総合事業の基本的考え方 - PDFファイル
介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要) - PDFファイル
介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(案) - PDFファイル
介護保険事務処理システム変更に係る参考資料(確定版)(平成27年3月31日事務連絡)
介護予防・日常生活支援総合事業におけるサービス種類の考え方について - PDFファイル
介護予防・日常生活支援総合事業における請求明細書と給付管理票の提出パターン - PDFファイル
介護保険最新情報Vol.417(平成27年2月4日掲載)
「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案」についてのQ&Aについて - PDFファイル
全国介護保険担当課長会議資料(平成26年11月10日開催)
1.新しい総合事業等について(振興課関連) - PDFファイル
1.指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(高齢者支援課関連) - PDFファイル
4.一定以上所得者の負担割合の見直しについて - PDFファイル
全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(平成26年2月25日開催)
1.介護保険制度の改正案について - PDFファイル
社会保障審議会 介護保険部会(第50回)(平成25年10月2日開催)
その他の検討事項について - PDFファイル