DTM音源としてのSCC
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ソフトウェアの添付品という側面から、市販されたハードウェアとしては珍しく、カートリッジに制御BIOSなどを持っておらず、マニュアルに資料が掲載されるなどしているわけでもなかったため、当初はユーザーからの利用は困難な状況にあった。 ユーザーに制御方法が知られるようになったのは、マイコンBASICマガジンが1989年7月号から、MSXでスナッチャー付属のSCC音源カートリッジを制御するという解析記事を連載したためである。連載では、完全ではないものの大部分の内容を解説と、それを補完するツールなどの掲載が行われている。 その後、1990年にMSXマガジンで発表された音楽ソフトMuSICA(ソフトベンダーTAKERU販売の「MSXディスク通信'90年10月号」に収録)には、MSX版スナッチャー及びSDスナッチャーに付属するSCC音源カートリッジを制御、演奏させる機能があった。のちに同誌で、SCCを制御するためのコナミ提供の公式仕様が掲載され、草の根BBSなどで発表されたMGSDRVなど、フリーソフトでも対応する動きが広がった。 SCC音源カートリッジは単体としては流通しておらず、後にスナッチャー・SDスナッチャー共に中古市場でプレミア扱いされたことにより正規に販売されたものを入手するのは困難となり、実際の流通量は少なかった。しかし、コナミのSCC搭載のMSX用ゲームはユーザーに広く普及していたため、ゲームカートリッジをゲームが起動しないように改造して用いる方法や、MSX起動後に後からカートリッジを差す方法が考案された。そのため、かなり多くのユーザーがSCC音源を自由に利用可能になっていた。ただ、MSXが電源オン状態でもカートリッジの抜き差しは物理的には可能だが、本体やカートリッジはその動作を想定して作られていないため、後者の方法は抜き差し時の電流や信号によって精密回路を破損する恐れがあった。 後差し方法については、誤動作を抑えるために、Shiftキーを押しながらカートリッジを差し込む方法や、PAUSEボタンでシステムを強制停止させている間に差し、PAUSEを解除する方法が知られている。PAUSEボタンを用いる方法の方が安全性は高いといわれているが、PAUSEボタン搭載機種はFS-A1シリーズ以降の松下製MSX数機種と同時期以降のソニー製数機種のみであり、turboRではPAUSEのハードウェア的な実装が変更されているので、回路のタイミングが停止しない。また、いずれにしても電源オン状態でスロットに無理やり挿入していることには変わりはなく、故障の原因となる可能性が高かった。 なお、現在はMSXエミュレータやSCC互換音源を搭載した1チップMSXなど、SCC相当の音源を利用できる環境は多く存在する。 SCC対応の演奏ソフトが普及した当時は、既にFM-PACやMSX2+の登場によってFM音源(YM2413(OPLL))もまた普及しており、標準的なMSXの環境ではPSG3音+FM音源9音+SCC5音で最大17音が出せ、音を重ね合わせることで深みのある音楽を奏でることが出来た。FM音源搭載MSXとコナミのSCC搭載ゲームの組み合わせで、同時期に流通していたPC9801やX68000等に比べ非常に安価かつ手軽にDTM環境を構築する事が可能であった。
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