ATV発展型の計画
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NASAが2010年までにスペースシャトルを退役させると決定したことから、欧州宇宙機関はATVの発展型や改良型の可能性を研究した。研究の多くは、ATVに物資回収能力を持たせるものだったが、いずれも検討段階までで終わった。 小型宇宙ステーションMSS (Mini space station) コンセプトは、将来へ向けて検討中のATV発展型案であった。この提案は、2つのドッキング装置を持つATVを複数、前後に連結していくものである。現在使われているATVでも主推進システムは筒型のトンネル状になっており、後方にドッキング装置を追加することを考慮した設計になっている。これにより、ATVがISSにドッキングしている間でも、ソユーズやプログレス補給船などのロシアの宇宙船は、ATVを間に挟むようにして後部へドッキングできるようになる。また生命維持システムを搭載すれば、MSSだけで小型宇宙ステーションとして利用することも考えられた。 PARES (PAyload REtrieval System) と名付けられた最初の研究は、ラデューガ (Raduga) に似た弾道カプセルをATVのドッキング部に組み込み、数十キログラムの貨物を帰還できるものであった。PARESは展開型の耐熱システムを特徴としていた。ESAはこのシステムを、プログレス補給船と宇宙ステーション補給機 (HTV) にも提案していた。 貨物往復機 (CARV: Cargo Ascent and Return Vehicle) 計画では、数トンの貨物を帰還できる、より大きなリフティング・カプセルを研究した。これは、ATVの与圧貨物区画の代わりに取り付けられることになっていた。さらに、最終的にはISSのアメリカ側にドッキングすることを目標としており、そうなれば現状では不可能な、国際標準実験ラック (ISPR) を丸ごと通すことができる。この構想は2010年までに実現できる可能性があったが、ESAの財政状況を理由として、CARVよりもPARESが優先された。しかし結局は、PARESの承認を得るための提案がESAの閣僚会議に提出されることもなかった。 ATVの打ち上げをアリアン5以外で行なう可能性も研究された。特にCOTSでは、アトラスやデルタによってATVを打ち上げる案が検討されたが、NASAはアメリカだけで補給ミッションを行なうことを選択し、ATVは不採用となった。 人員輸送機 (CTV: Crew Transport Vehicle) は、検討されたもう一つの案である。CARV案と同じく、現在の貨物キャリアを、与圧再突入カプセルと置き換える。貨物型との大きな違いは、非常事態が起きると有人カプセルをロケットやサービスモジュールから引きはがすため、いくつかのブースターロケットを装備した乗員脱出システムを備えている点である。ATVのCTV派生型は、4〜5人の乗員を乗せることができる仕様であった。
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