高温焼戻し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/21 21:32 UTC 版)
低温焼戻しに対して比較的高温域で焼戻しすることで、靱性を高める焼戻しを高温焼戻しと呼ぶ。焼戻し温度は目安として温度400 - 680 ℃の範囲で行われる。加熱装置には塩浴や燃焼炉、電気炉が用いられる。 前述で説明した通り、焼戻し温度によって得られる組織が異なる。高温焼戻しと呼ばれる焼戻し温度域の中でも、400 - 500℃から焼き戻すとトルースタイトと呼ばれる組織が得られる。トルースタイトのビッカース硬さは約400HVで、硬さを残しつつ靱性もある程度高い組織が得られる。ただし、トルースタイトは錆びやすいのが欠点の1つである。実際の製品としては高級刃物やばね類などに適用される。 500 - 650℃から焼き戻すとソルバイトと呼ばれる組織が得られる。ソルバイトのビッカース硬さは約280HVで、鋼の組織の中では最も靱性が高いのが特徴となっている。適度の強さと高い靱性を得られることから機械構造用鋼に適しており、実際の製品としても、トルースタイトと同じくばね類も含め、機械部品全般で広く採用される。 日本工業規格によれば、高温焼戻しでトルースタイトかソルバイト組織を得る焼入焼戻しを、特に調質と呼ぶ。または、ソルバイト組織を得る焼入焼戻しに限って調質と呼ぶ場合もある。高温焼戻しが適用される製品としては、上記で述べたもの以外では、軸、高強度ボルト、軽中荷重用歯車などがある。
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