高温処理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 05:52 UTC 版)
高温処理することによって殺菌が可能である。微生物は有機物から構成されるため、特に水分存在下で加熱(湿熱)すると死滅しやすい。ただし、一部の細菌が作る芽胞は極めて耐熱性が高く、100℃で沸騰させても死なないため、滅菌する際には、100℃より高い温度を用いる必要がある。 焼却 (滅菌)有機物を完全に燃焼させる。最も確実な方法ではあるが、対象物も同時に喪失してしまうため、実用的とは言い難い。通常では伝染病の発生時に、病原微生物で汚染されたもの(衣服や紙や遺体など)を処分する目的で用いる。 火炎滅菌 ライター、ブンゼンバーナー、アルコールランプの火炎で対象物を直接加熱して滅菌する方法。微生物培養時の柄付きバリ、ピンセットなどに用いる。 乾熱滅菌 滅菌用のオーブンで180℃30分あるいは160℃2時間加熱する。水分を含まない耐熱性の器具(金属製のメスやピンセット、ガラス製品)に対して用いる。 高温高圧滅菌(オートクレーブ) オートクレーブと呼ばれる装置を用いて、飽和水蒸気中で121℃2気圧15分以上(通常20分)加熱する。湿熱で芽胞を死滅させるため、圧力を上げて100℃以上の温度にする。乾熱滅菌の高温には耐えられない樹脂製品器具やろ紙、本や書類、水分を含む培地などの滅菌に最も適している。逆に、濡れると都合の悪い器具には不向きである。また、対象物によっては、115℃1.7気圧30分以上の加熱でよい場合や、非常に病原性の高いもの(異常プリオン)に対しては、133℃3気圧で1時間も加熱する場合もある。 間欠滅菌 煮沸したあと一晩室温で放置して再び煮沸、さらにもう一晩放置後煮沸する方式。細菌の芽胞が、増殖に適した環境になると通常の菌体に戻ることを利用したもの。オートクレーブできない培地などに用いる。実施するには単純計算で3日かかるため、最近はあまり用いられていない。 水の煮沸 汚物などに接した水は、コレラ・腸チフス・赤痢などを引き起こす。また寄生虫の問題も引き起こす。それらを防ぐために、古代から水を一旦沸騰させてから飲む、ということが行われている。現代でも多くの地域で安全な飲料水が確保しづらく、そのような地域では飲用水は飲む前に一旦沸かすことが重要である。 熱湯消毒 台所用品、調理用品、ソフトコンタクトレンズなどに用いる。コンタクトレンズ用の器具では、家庭で簡便に使えるようにコンセントと一体になった小型の器具などもある。 低温殺菌(パスチャライゼーション) (消毒)100℃以下の温度(42,60,80℃など)でやや長時間(30分 - 数時間)かけて加熱処理する。オートクレーブなどの滅菌処理で変質してしまう食品や牛乳などの消毒殺菌に用いる。 高温殺菌 蒸気を利用し、100℃以上の湿熱で加熱する。耐熱性の芽胞を死滅させることができる。 超高温殺菌 120℃以上の湿熱で加熱する。缶詰の殺菌、LL(ロングライフ;長期保存可能)牛乳の殺菌などに用いられる。
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