高機能化に伴う倫理上の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/29 08:58 UTC 版)
「雪崩ビーコン」の記事における「高機能化に伴う倫理上の問題」の解説
詳細は「雪崩遭難時の意思決定戦略(ドイツ語版)」を参照 W-Linkには埋没者の個人情報を表示する機能があるが、W-Link対応ビーコンには個人情報を表示しないという暗黙のルールがある。生存の可能性が高い埋没者が近くにいるにもかかわらず、他の人を恣意的に優先して救出してしまう問題をこれにより排除できる。埋まっている人が誰であるのかということを特定せず、誰を救出するべきかという決定を救出者任せにしないことにより、救出者が恣意的な選択をしたとして批判を浴びることを防げる。W-Linkの生体反応送信機能は、たとえ個人情報を提供しなかったとしても、W-Link機能があるビーコンを持つ埋没者と持たない埋没者との間に差別が生じるため公平な救出活動を難しくするという点で特に批判がある。高級機または最新機種を持つ埋没者の救出活動が優先され、公平に救出されるチャンスを失うことにつながると批判されている。このためビーコンメーカーのArva Equipmentは同社のLinkシリーズでは生体反応情報を受け取っても表示させないという選択をした。Beacon Review は次のような例を提示して、W-Linkについての議論を喚起した。 4人のグループが雪崩の危険がある奥地へのツアーへ行く。ある夫婦はいずれもW-Linkの生体反応検知機能を持つビーコンを所持していた。彼らは前日に別の2人と出会い合流した。この2人のうちの1人は基本的な機能を持つデジタルビーコンを持ち、もう1人はW-Linkに対応しているものの生体反応データ送信機能を持たないビーコンを持っていた。ツアーの最中に3人が雪崩に閉じ込められ、夫婦の内の夫が取り残され、救出することになった。かれはすぐにビーコンを使って3人の被害者の場所を特定した。ディスプレイには正面の10~12メートル先に2つのビーコンが表示され、1つはW-Linkの反応があり、もう1つは普通のシグナルのみだった。また33メートル後ろにはW-Linkで生体反応が送られており、生きていることが示されていた。 この状況において、各ビーコンは名前を表示していないが、3人の被害者を区別可能である。彼の妻は33メートル後方におり、残りの2人は近くにいて、お互いの場所も離れていない。夫は他人の2人を危険に晒して妻を救うか、妻を見殺しにして他人の1~2人を救うかという選択に迫られる。もしこうした追加の情報がなければ救出者はまず近くの2人を救出するだろう。もし夫がこの選択をして妻が死亡した場合でも、妻を見殺しにしたという後悔に一生悩まされることがないかもしれない。
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