風洞、そして久慈川での実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/11 08:50 UTC 版)
「日立鉱山の大煙突」の記事における「風洞、そして久慈川での実験」の解説
高層気象観測の他にも大煙突の有用性を検証する試みがなされた。まず風洞による実験が行われた。続いて煙突の高さと煙害について考察するために久慈川で実験が行われた。久慈川での実験はまず川底にヘチマを並べて貼りつけ、その中心にゴム管を繋げたガラス管を立てた。その上でゴム管に赤インクを注入し、赤インクの広がり具合を観察した。底にゴム管を繋げたガラス管は煙突、川の流れは気流、赤インクは排煙、そしてヘチマは農地や山林に見立てたのである。もちろん煙突に相当するガラス管の長さは長短さまざまな場合で実験を重ね、排煙に当たるインクの流量も変えながらデータを集めた。実験結果から煙害を防ぐためには煙突は高い方が良いことが示されたが、煙突を高くするだけでは煙害を無くすことは不可能であるとの結論が導き出された。 このように大煙突の有用性を示すデータは積み重ねられてきたというものの、未だその有用性に確証を持てる段階には至らなかった。建設反対派はあくまで煙突の高さは高ければ高いほど被害地域が拡大するとして、巨額の費用を投じて大煙突を建設した挙句、煙害の被害地域を広げてしまい今まで以上の賠償金を支払わねばならない羽目に陥ったらどうするのかと主張し続けた。 結局久原は この大煙突は日本の鉱業発達のための一試験台として建設するのだ。幸いに予期のごとく奏功し煙害を縮小し得れば、日立鉱山のため、日本の鉱業界のため慶賀に堪えないし、よし不成功に終わっても、我が鉱業界のためには悔いなき尊き体験となる。今後いかなる煙突を創案建設すべきかを示唆し得れば、以って我々の労苦は償われたと見るべきではないか。 と、大煙突建設の断を下した。久原の決断には、当時の景気動向は堅調で、日立鉱山を始めとする久原の事業は急速に発展している最中であり、煙害対策のための大煙突建設という生産に直接プラスとならない大規模投資が可能であったという背景があったことも見逃せない。
※この「風洞、そして久慈川での実験」の解説は、「日立鉱山の大煙突」の解説の一部です。
「風洞、そして久慈川での実験」を含む「日立鉱山の大煙突」の記事については、「日立鉱山の大煙突」の概要を参照ください。
- 風洞、そして久慈川での実験のページへのリンク