預金の種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 03:34 UTC 版)
普通預金 自由に預け入れ、払い戻しができる預金口座で、銀行取引の基本となる預金商品である。 日本では当たり前であるが、要求払い決済用口座として金利が付されるものは世界的には珍しい存在であり、米国では貯蓄貸付組合のNOW勘定口座がこれに近似している。 キャッシュカードの発行が可能で、自動取引装置(ATM)を利用した預け入れ、払い戻し、振込などの取引ができる。 当座預金と並び、振込金の受入、各種公共料金や代金、クレジットカードなどの口座自動振替を契約でき、給与、年金、配当金の受取に指定できるなど、決済口座としても大きな役割を担う。 毎日の最終残高に対し利息がつき、概ね6か月毎に支払われるものの(住信SBIネット銀行のように毎月付利の場合もある)、自由に預け入れ、払い戻しができる流動性、また自動振替や受取などの各種決済を取り扱うため、定期性の預金に比べ低い利率となっている。 このほか、一部の銀行においては一般の普通預金と別に、次に挙げるような特典の組み合わされた普通預金が取り扱われている。なお特典利用には一定の条件がある。 戦前は貯蓄銀行の商品であり、普通銀行には類似商品として「特別当座預金」が存在した。戦時中、ほとんどの貯蓄銀行は普通銀行に合併された結果、普通銀行が貯蓄銀行業務を兼業することとなったため、商品内容が重複する両者を戦後整理統合した。 決済用普通預金 無利息特約付の普通預金。預入した金融機関が経営破綻した場合も、当座預金同様に全額保護される。その他の商品性は一般の普通預金と同様である。 2005年4月より、民間金融機関の普通預金にもペイオフが解禁(金融機関が破綻した場合、預金保険の対象が一預金者につき元本1,000万円とその利息分に限られる)されたが、あわせて、決済サービス(振込金の受入、自動振替等)を提供し、いつでも払い戻しが可能で、かつ無利息である預金を「決済用預金」とし、これについては恒久的に全額を保護することが預金保険法で定められた。決済用普通預金はこの条件を満たす普通預金として取扱が開始された。 総合口座の普通預金も「決済用普通預金」にできるが、その総合口座の担保定期預金などは「決済用預金」に該当せず、全額保護の対象外となる。 当座預金(当座勘定、英: checking account) 一般に預金者(消費者、事業者、法人)が手形や小切手の支払を決済するための口座で、日本においては法令により、無利息と定められている。また、開設手数料を定める(その逆も)金融機関もある。払戻請求は原則、小切手または手形で行う。 預金保険法による「決済用預金」であり、預入した金融機関が破綻した場合も全額保護される。 口座開設には当座勘定の契約が伴い、当該金融機関の審査を経ることが必要である。これは、手形や小切手は現金同様の経済価値を持つ証券であり、振出人にその決済責任を担いうる経済的な信用が求められるからである。 一般的に大手優良企業が事業に使用する当座勘定であれば当該金融機関は、取引状況を審査する事により当座勘定開設は可能とされる。一方、個人での開設は近年の日本においては審査が厳しく後述のマル専口座などの例外を除きほぼ不可能である。これは、小切手の発行により当該金融機関に多くの事務的労力を必要とする事情から経済的な信用だけではなく特別な理由が無い場合には発行を受け付けないためでもあると同時に、日本においては資金決済の手段としてクレジットカードの利用・口座振替・口座振込・自動引落など小切手・手形を介する必要の無い決済手段が充実している事によるものである。 預金口座の残高を越える支払請求があった場合、契約した極度額の範囲で金融機関が不足額を貸し付けて支払う契約を結べる(当座貸越)。また、借り入れしている金額がゼロになるまでの間は当座貸越利息が別途発生する。預金者はあらかじめ、保証契約を結ぶか、他の預金や債券等を貸し付けの担保として差し入れる。 このほか、消費者がカードローンや割賦金の返済を行うための専用口座(マル専口座ともいう)も、決済用の口座である当座預金として開設されることがある。 金融機関により、通帳やキャッシュカードが発行されないケースもある。その場合は、入金帳(口座店での窓口で入金の際に使用する帳票)や当座勘定入金帳・入金専用通帳(口座店以外の店舗の窓口や、ATMでの入金に対応した通帳だが、出金の記録や振込等の他の方法で入金があった場合の記録が表示されない)を発行するケースもある。 貯蓄預金 残高に基準額を設け、最終残高が基準額に達した日について普通預金より高い利率を適用する出し入れ自由の預金。個人のみが口座開設できる。振込口座に指定できるが、口座振替や給与、年金、配当金等の受取には指定できない。その他の商品性は、おおむね普通預金と同じである。一部の金融機関においては上記に加え、下回った日について普通預金よりも低い金利を適用する、月毎に無料で払戻せる回数に制限を設けるなどの定めを置いている。 1992年の一斉発売開始時、基準額は20万円型と40万円型の2種類だったが、金融自由化の進展により多様化と集約化とを経た現在では、おおむね10万円となっている(ほかに20万円とする静岡銀行、30万円型を併せて取扱う一部の労働金庫、50万円とする三井住友銀行など)。 このほか、1か月複利とする金融機関(みずほ銀行、三井住友銀行など)、より有利な2段階以上の基準額を定める金融機関、デビットカード取引のできる金融機関、その後の政府のゼロ金利政策を受け、基準額ごとの金利階層差をつけない利率を提示する金融機関(もしくは普通預金と同じ利率とする場合も多い)、新規口座開設を中止する銀行(りそな銀行、三井住友銀行など)もあるなど、事業者ごとに特性の違いが大きい商品である。 JAバンクでも、貯蓄貯金として扱う組合がある(かつてのキャラクターであるちょきんぎょは、このプロモーションを行うために当初は登場していた)。 ゆうちょ銀行においては、通常貯蓄貯金が相当する商品となる(こちらも、通常貯金同様、振替口座機能の有無で、振込受け入れの可否が分かれる。ただし、通帳冊子は通常貯蓄貯金通帳とされ、総合口座通帳とは別のものが発行される)。 新たな形態の銀行に分類される銀行で開設可能な銀行はみんなの銀行のみ(普通預金口座に付帯)。 定期預金 満期日または据置期間を設定し、満期日まで、または据置期間中の払戻をしない条件で一定の金額を預け入れる預金。決済や手元資金管理の基本である普通預金に対し、貯蓄や中期運用の基本となる預金商品である。金融機関において、期間内流動の少ない資金として貸付や運用が行われることに対応し、期間に応じ普通預金よりも高い利率が付される。戦前の貯蓄銀行では据置貯金と呼ばれていた。 商品性の区別としては、次の点が挙げられる。預入期間の長短(1か月から10年。一般に長期ほど高利率であるが、市場金利情勢により逆転もある) 単利、複利の別 預入金額による金利階層の別 満期日のみの設定型か、据置期間設定型(期日指定定期預金、6か月据置型定期預金)か 固定金利、変動金利の別 自動継続の有無 運用についての特約の有無 中でもデリバティブを組み込み為替や金利変動に対応して払い戻し通貨や満期等が変わるものを仕組預金と呼ぶ。 積立預金・積立定期預金 おおむね、定期預金を毎月(あるいは一定の期間ごと)の一定期日に預入(自動振替)する契約。次のような方式があり、金融機関ごとに名称が違っている。目標日を定め、その日を満期日とする(満期日のそろった)定期預金を預入の都度作成していく方式。 取りまとめ日を設け、その日を満期日とする定期預金を預入の都度作成し、取りまとめ日に、より高金利の長期、大口の定期預金に取りまとめる方式。 自動振替により、預入の都度、期日指定定期預金を作成していく方式。 おもに消費者向けの商品であるが、事業者、法人向けに取り扱う金融機関もある。 定期積金 顧客が6か月から5年までの一定の期間、月毎に掛金を払込み、満期日に掛金に給付補てん金(利息)を加えた給付金が支払われる契約。 1回の預入が1件1件独立した定期預金となる積立預金や積立定期預金とは、制度上次の点が異なる。契約時に必ず月々の掛込額と満期の給付額、掛込期間が定められる。設定には毎月の希望掛込額から給付金を算出する方法、逆に満期時の希望給付金から毎月の掛込額を算出する方法のどちらも利用でき、このほか初回・特定月の掛込みを増額するなどの取り扱いもある。 1回目から最後の掛込みまでが一律の固定利回りとなる。期日に先立ち掛込みが行われた場合の利息(先払割引金)は満期日に精算され、掛込みが期日に遅れた場合は満期日が繰下がる。 訪問集金を前提とした商品であり、利回りは定期預金より低めとなっている。なお、店頭払、振替払なども利用できる。 証書や掛込帳は契約の都度、1契約につき1冊が契約内容を明示して発行される。 消費者、事業者、法人が広く募集対象とされる。特に信用金庫、信用組合の主力商品である。不動貯蓄銀行の牧野元次郎が考案。預金と違い双務的な契約であるが、預金と同視される。 譲渡性預金 他人に譲渡可能な定期預金。 通知預金 おおむね1週間から1か月未満の期間の預け入れに適した預金。通常、7日間の据置期間が定められ、それ以降の希望日の2日前までに予告(通知)して払い戻す。銀行間短期資金市場等における運用に対応し、おおむね普通預金と1か月定期預金との中間の金利が付される。一般的な通知預金は、制度や金利水準上、法人によるまとまった資金の利用が多い。 三井住友銀行(旧さくら銀行)の「Can」は個人向けの通知預金であり、ATMおよびテレホンバンキング・インターネットバンキング(SMBCダイレクト)による口座開設・預入・解約が可能な商品だったが、2006年3月に貯蓄預金と共に新規口座開設を停止した。 納税準備預金 納税に充てる資金を預け入れる預金。納税資金の計画的な貯蓄、および本預金からの口座振替による納税を推奨するため、預金利息は非課税。随時預け入れが可能。金融機関によっては現金自動預け払い機(ATM)での預け入れも対応している。ただし、払戻は納税時に限られる(金融機関によっては、納税準備預金口座を開設した取扱店でしか納税資金を引き出せない場合もある)。 金融機関によっては、納税準備預金の取扱を行っていない場合もある。 自治体により、例として、国民健康保険の保険料が税金扱いになる場合とならない場合とがあるなど、納税準備預金での口座振替による納付が可能な場合と不可能な場合とがある(金融機関窓口での納付については後述)。 一方で、入金のための利用であっても、通常は、キャッシュカードの発行はできない。 全銀システムに接続されていない場合がほとんどであるため、振込入金は通常では不可能だが、ごくまれに「その他」に預金科目がある金融機関からの振込ができる場合もある。ただし、国税庁や自治体等からの還付等がある場合は、納税準備預金に入金できる場合もある。 納税目的以外の払い戻しをした場合、預金利息が20.315%(法人の預金者は15.315%)の税率で課税される。このため、例として、上述の国民健康保険の保険料が税金扱いとされない自治体の保険料の決済に納税準備預金の残高を充当した場合は、利息は課税扱いとなる。 一般の通帳の見開きページに表示される「印紙税申告納付につき○○税務署承認済」は、納税準備預金通帳に関しては、印紙税法第5条の但し書きにある通帳への印紙税課税に関する例外規定が適用されるため、「租税特別措置法第92条該当通帳」という表示となる。よって、金融機関に対する同通帳への印紙税は非課税となる。 別段預金 銀行業務に該当しない預金。雑預金ともいう。以下の物が該当する。一時保管金(預金者の払出指示後、実際に受け取るまでに営業日をまたいだ場合等) 出資振込資金等 宝くじ当せん金の管理口座(みずほ銀行) 永年使われないため,休眠口座になった顧客の預金。 非居住者円預金 日本に居住していない個人や法人向けの円預金。 外貨預金 円以外の通貨の預金。
※この「預金の種類」の解説は、「預金」の解説の一部です。
「預金の種類」を含む「預金」の記事については、「預金」の概要を参照ください。
- 預金の種類のページへのリンク