し‐さいぼう〔‐サイバウ〕【視細胞】
視細胞
視細胞
視細胞(杆体・錐体)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/20 17:33 UTC 版)
視細胞 (photoreceptor) は網膜の視細胞層から外網状層にかけて存在し、光刺激を吸収し電気信号へと変換する役割を持つ。視細胞には、明所で機能する錐体 (cone) と暗所で機能する杆体(または桿体、rod)の2種類がある。錐体には光吸収の波長特性が異なるものが存在する。 錐体や杆体の外節と呼ばれる部分には視物質が蓄えられている。視物質は蛋白質オプシンにレチナールが結合した色素タンパク質で、オプシンのアミノ酸配列の違いにより吸収波長が異なる。錐体のもつオプシンとしては、紫外型・青型・緑型・赤型の4種類が知られる。ヒトの錐体では、視物質として異なる蛋白質オプシンを持つ3種類の細胞がある。それぞれ吸収波長が異なっており、L錐体(赤錐体)、M錐体(緑錐体)、S錐体(青錐体)と呼ばれる。これら3種類の錐体の興奮の割合の違いを利用して色を区別している。この3種類の錐体の1個〜複数個の欠損または吸収波長の違いにより色覚異常(色盲、色弱)が生じる。一方の杆体は視物質ロドプシンを持つ。杆体は1種類しかなく、色(波長)の違いを区別できない。このような視物質は数段階の化学変化を経て、細胞膜のイオンチャネルを開閉させ、その結果、イオン電流が発生して緩やかな電位変化をもたらす。網膜の多くの神経細胞は、脳神経系などで見られる活動電位と呼ばれるスパイク状の電位変化とは異なり、緩やかな電位変化を発生する。 祖先型の脊椎動物は紫外型・青型・緑型・赤型の錐体(および杆体)をもつ4色型色覚であったと考えられる。現生の魚類、両生類、爬虫類、鳥類は進化の過程で各オプシンを失わず、現在でも4色型色覚をもつ。一方、哺乳類では、4タイプ錐体のうち2タイプの錐体細胞を失い、青を中心に感知するS錐体と赤を中心に感知するL錐体の2錐体のみを保有するに至った。これは赤と緑を十分に区別できないいわゆる「赤緑色盲」の状態である。この色覚が哺乳類の子孫に遺伝的に受け継がれることとなった。ヒトを含む旧世界の霊長類(狭鼻下目)の祖先は、約3000万年前、X染色体にL錐体から変異した緑を中心に感知する新たなタイプの錐体(M錐体)視物質の遺伝子が出現し、ヘテロ接合体の2本のX染色体を持つメスのみが3色型色覚を有するようになり、さらにヘテロ接合体のメスにおいて相同組換えによる遺伝子重複の変異が起こり、同一のX染色体上に2タイプの錐体視物質の遺伝子が保持されることとなり、X染色体を1本しか持たないオスも3色型色覚を有するようになった。これによって、第3の錐体細胞が「再生」された。3色型色覚は果実等の発見に有利だったと考えられる。 中心窩と呼ばれる部位には受容野が小さい錐体が数多く集まり、最も視力が高い領域を形成している。
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