規制案と長期的解決策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/25 00:38 UTC 版)
「サブプライム住宅ローン危機」の記事における「規制案と長期的解決策」の解説
詳細は「en:Subprime mortgage crisis solutions debate」および「en:Regulatory responses to the subprime crisis」を参照 バラク・オバマ大統領と主な指導者らは2009年6月に一連の規制案を提唱した。これらの提案が取り扱うのは消費者保護、幹部報酬、銀行の財務的緩衝策または資本要件、シャドーバンキングシステムとデリバティブへの規制強化、そしてシステミックに重要な金融機関を安全かつ段階的に縮小できるよう連邦準備制度の権限を強化すること、などである。 現在の危機を縮小させ、かつ、再発を防ぐために、経済学者、政治家、ジャーナリスト、実業界の指導者らが様々な規制変更を提案してきた。しかしながら2009年6月現在これらの多くはまだ実行に移されていない。以下に一覧を示す。 ベン・バーナンキ:投資銀行やヘッジファンドのようなシャドーバンキングシステムに属する機関が経営難に陥ったときにこれを閉鎖するための決定手順を確立せよ。 ジョセフ・E・スティグリッツ:金融機関が利用可能なレバレッジを制限せよ。幹部社員に対する報酬をもっと長期的な業績と連動させるよう義務付けよ。1933年のグラス=スティーガル法で導入され1999年のグラム=リーチ=ブライリー法(en)で廃止された商業(貯蓄)銀行と投資銀行の分離規定を復活させよ。 サイモン・ジョンソン(en):システミック・リスク(en)を限定するために「大き過ぎて潰せない」ような企業を解体せよ。 ポール・クルーグマン:「銀行のように振舞う」企業は銀行と同様に規制せよ。 アラン・グリーンスパン:銀行はもっと強力な資本的緩衝力を持つべきで、そのために漸増的な資本要件があるべきだ(すなわち銀行の規模が増すにつれ自己資本比率要件を上げる)。これによって「彼らは大きくなり過ぎて競争力を失うことを躊躇うようになる」。 ウォーレン・バフェット:住宅ローンについて最低10%の頭金と所得証明を義務付けよ。 エリック・ディナーロ(en):金融活動を行ういかなる金融機関についても資本要件を設けよ。信用デリバティブを規制し十分な資本力を伴う取引だけを許容してカウンターパーティー・リスクを限定せよ。 ラグラム・ラジャン(en):金融機関に対して十分な「不測時用資本」を維持する(すなわち景気拡大期には政府に対して保険プレミアムを支払い、後退期には支払いを受ける)ことを義務付けよ。 マイケル・スペンスとゴードン・ブラウン:システミック・リスクを検知出来るよう早期警戒システムを確立せよ。 ニーアル・ファーガソンとジェフリー・サックス:税金を用いて資本注入を行う前に、債権者と取引相手企業に対し債権額のヘアカット(割引(en))を強制せよ。 ヌーリエル・ルービニ(en):支払い不能に陥った銀行は国有化せよ。金融システム全体の債務水準を債務とエクイティのスワップ設定により引き下げよ。将来的に住宅価格が上昇した場合に貸し手が取り分を得られるようにすることで、住宅ローン残高を削減し住宅所有者を助けよ。 ポール・マッカリー(en)は「循環相殺的(counter-cyclical)な規制政策を導入してヒトの経済行動を中和せよ」と提唱した。彼は経済学者ハイマン・ミンスキーの業績を引用したが、ミンスキーによればヒトの行動は親循環的(pro-cyclical)であり、つまりバブルの成長や破裂を何れも増幅する性質があるという。言い換えれば、ヒトは価値(value)に投資するのではなく場の勢い(momentum)に投資するのである。循環相殺的な政策としては、例えば景気拡大期には資本要件を増大させ、後退期には減少させることなどが考えられるだろう。 2009年10月29日、米国財務長官のティモシー・ガイトナーは米国議会を前に証言した。その中には、効果的な改革のために彼が最重要とする5つの要素が含まれていた。 FDICによる銀行解体メカニズムを拡張してノンバンク(シャドーバンキングシステム)をも扱えるようにする。 企業が秩序を保ちつつ破綻できる仕組みを確立し、「救済される」という事態は排除する。 納税者がいかなる損失をも被らないよう保障する。このために損失はその企業への投資家に回し、また最大手金融機関の拠出による資金プールを設立し受け皿とする。 この解体過程においてはFDICおよび連邦準備銀行との間で然るべき検査や預金残高の維持を求めることとする。 金融企業と関連する規制当局に対し、資本および流動性についてもっと強力なポジションを取るよう義務付ける。 2009年12月に米国下院が法案を通過させたのに続き、2010年5月には上院も規制改革法案を通した。これらの法案はこれから一本化しなければならない。ニューヨーク・タイムズ紙はこれら2つの法案について比較表を作ったが、これはガイトナー長官が列挙した諸原則について様々な度合いで対処している。
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