自他商品識別力を有すること
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 06:16 UTC 版)
「立体商標」の記事における「自他商品識別力を有すること」の解説
立体商標が登録されるためには、商標の本質的機能である自他商品識別力を有していなければならない(商標法3条1項各号)。たとえば、立方体や球のようなありふれた立体的形状や、商品の形状そのものの範囲を出ない立体的形状は自他商品識別力(商標法3条1項)をもたないから、商標登録を受けることができない。 自他商品識別力の有無が争われた事件として、たとえば「乳酸菌飲料収納容器(ヤクルト容器)事件」(東京高等裁判所 平成13年7月17日判決)がある。本事件は、乳酸菌飲料収納容器(ヤクルト容器)の形状を有する立体商標の商標登録出願を拒絶した特許庁の審決に対し、それを不服としたヤクルト本社が、東京高等裁判所に審決の取り消しを求める訴訟を提起したものである。 原告であるヤクルト本社は、「瓶の中程、真中より稍上部に丸みを帯びた『くびれ』を付したこと、『飲み口』の形状を『哺乳瓶の吸い口』の形状としたこと、『くびれ』によって、円筒部分の直径を大きくし、視覚上(見かけ)の大きさが小さく見えない形状となっていること」を理由として、容器の形状が独特なものであり、自他商品識別力を有することを主張した。しかし、裁判所は「これらの点を考慮しても、本願商標の指定商品である『乳酸菌飲料』の一般的な収納容器であるプラスチック製使い捨て容器の製法、用途、 機能からみて予想し得ない特徴が本願商標にあるものと認めることはできない。」として、3条1項3号により商標登録を拒絶した特許庁の審決を支持した。 しかしながら裁判所の立体商標に関する判断傾向は変化してきている。平成22年11月16日、ヤクルト本社の別の立体商標の事件(第2次ヤクルト立体商標事件)に関して、知的財産高等裁判所は自他商品識別力を有するとの判決を出した。ヤクルトは、当該商標と同一の立体形状の無色容器を用いて「ヤクルト」を想起するかどうかのアンケート調査を行い、98%以上が想起するとの回答であった。このアンケート調査結果が裁判官の心証に影響を与えたと分析されている。
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