耐震裕度向上工事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 14:33 UTC 版)
「浜岡原子力発電所」の記事における「耐震裕度向上工事」の解説
中部電力が行ったシミュレーションによると、震源が40km離れた想定の東海地震の時、地盤の震動加速度が垂直で約300Gal、水平で約600Galであった(加振加速度は、垂直方向で1,000Gal+、水平方向で1,000から2,000Gal)。これを元に、垂直700Gal、水平1,000Galに対応するため、炉の周辺の付属物とその支持などへの工事が、2007年から2008年にかけて行われ、2009年に財団法人発電設備技術検査協会によって評価が終了した。評価は炉を含め、震動の解析と規格強度との比較である 。 工事の結果、原子炉の設計上の耐震性(最大水平加速度)は次のようになった。 1・2号機 450Gal 3・4号機 建設当初600Gal、補強後1000Gal 5号機 補強後1000Galタービン建屋その他の建造物、設備は重要度分類において原子炉建屋と同等の評価ではないため、この限りではない。ただし、下表のように、機能面の検討を経てB,Cクラスなどでも補強対象となった箇所がある。 2005年 - 2008年に施工された耐震裕度向上工事の概要総括表種別評価対象数改造対象数改造内容重要度分類における耐震クラス配管ダクト周辺地盤改良工事3 - 5号機 各号機 3系統 各号機 3系統 配管ダクト周辺地盤を掘削しコンクリートに置き換え Cクラス 排気塔改造工事3 - 5号機 各号機 1基 各号機 1基 排気塔筒身を囲むように支持鉄塔を追加で配置 Cクラス 配管サポート改造工事3号機 約7,000箇所 約200箇所 以下に示す設備の配管・サポート・原子炉を停止するための設備・原子炉を冷やすための設備・原子炉を閉じ込めるための設備 As,Aクラス 4号機 約4,000箇所 約200箇所 5号機 約6,000箇所 約100箇所 計 約17,000箇所 約500箇所 評価対象全体の3%を改造 電路類サポート改造工事3号機 約5,500箇所 約1,700箇所 以下に示す設備の機器関連のケーブルトレイ、電線管のサポート As,Aクラス 4号機 約5,500箇所 約1,300箇所 5号機 約5,000箇所 約1,500箇所 計 約16,000箇所 約4,500箇所 評価対象全体の30%を改造 燃料取替レールガイドおよび原子炉建屋天井クレーン改造工事3号機 約730箇所 約3施設 ・燃料取替機レールガイド改造・原子炉建屋天井クレーン支持部材改造・余熱除去系交換機(3号機のみ) Bクラス(注) 4号機 約700箇所 約2施設 5号機 約680箇所 約2箇所 油タンク立替・改造工事3 - 5号機 各号機 2基 各号機 2基 ・軽油タンクは非常用ディーゼル発電機を約7日間連続運転させるために必要な容量を確保するために改造(基礎新設、防油堤改造) Cクラス 取水槽ポンプ室土留壁背後地盤改良工事3 - 4号機 3号機4号機 3号機 2箇所4号機 1箇所 ・取水槽周辺の土留壁背後の地盤を改良 Cクラス なお、原子炉圧力容器、原子炉格納容器に対しては耐震裕度向上工事の対象にはなっていない。その理由を中部電力は『WILL』に対して次のように説明している。耐震裕度向上工事の対象は、「耐震設計上重要な施設」に対して実施したが、これは原子力発電所の異常事態で重視される3つの能力「原子炉を止める」「原子炉を冷やす」「放射能を閉じ込める」を維持するための施設を指す。それらの中核である圧力容器、格納容器なども含め、耐震設計上重要な施設は1000Galの目標地震動に対しての耐震性が評価され、それが配管類やタンク類などについては表のような結果となっている。一方、3号機以降の各原子炉の格納容器、圧力容器については元々耐震設計重要度分類でも最高のAsクラスで造られた。目標地震動が大幅に引き上げとなった再評価の結果も十分な余裕を持っていると判断され、改造の必要がなかったため、工事は実施されなかったという。
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