細胞内構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/07 08:22 UTC 版)
藍藻は原核生物であり、DNAは核膜に包まれず、また葉緑体やミトコンドリア、ゴルジ体などの細胞小器官をもたない。細胞内で生体膜に包まれた構造としては、光合成における光化学反応の場であるチラコイドのみが存在する。チラコイドはふつう重なることなく、細胞内で同心円状 (下図2c, d)、放射状または不規則に配置する。ふつうチラコイドには、フィコビリンタンパク質からなるフィコビリソームが付着している (下図3a)。一部の藍藻 (原核緑藻) はフィコビリソームを欠き、チラコイドが重なってラメラを形成している (下図2d)。藍藻では、酸素呼吸における呼吸鎖の酵素もチラコイド上に存在することがある (一部の酵素を光化学系と共有する)。最も初期に分かれた藍藻であるグロエオバクター属 (Gloeobacter; 下図2e) はチラコイドをもたず、光化学系は (呼吸鎖とともにパッチ状に) 細胞膜上に存在する。プロクロロン属 (Prochloron) では、チラコイドの一部が膨潤して液胞状になることがある。チラコイドは、細胞膜と直接つながることはないと考えられていたが、現在では”チラコイド形成中心” (thylakoid center) が細胞膜上に存在することが示されている。光学顕微鏡下では、チラコイドが存在する細胞周縁部が色付き、チラコイドを欠く中心域が淡色に見えることがあり、伝統的に前者を有色質 (chromoplasm)、後者を中心質 (centroplasm) とよぶ。中心質にはふつうDNAが存在するため (下図2c)、この領域は核質 (nucleoplasm) ともよばれる (ただし藍藻の中には、DNAが細胞周縁部に存在する例もある)。 2c. 藍藻の細胞内模式図. 扁平な袋であるチラコイドが同心円状に配列し、中央の繊維はDNA. 2d. プロクロロコックス属の透過型電子顕微鏡像 (着色). チラコイドが同心円状に配置しており、中央にカルボキシソームがある (濃色部). 2e. グロエオバクター属 (チラコイドを欠く藍藻). 2f. 藍藻細胞の元素マッピング像. 赤はカルシウム (炭酸カルシウム)、緑はリン (ポリリン酸). 2g. ドリコスペルマム属. 細胞中の黒い部分はエアロトープ (ガス胞の集合)、中央右上の異質細胞両端にシアノフィシン顆粒がある. 細胞内にはカルボキシソーム (carboxysome, polyhedral body) とよばれる直径200〜700 nm ほどのタンパク質顆粒が存在する (上図2c, d)。カルボキシソームは主にルビスコや炭酸脱水酵素からなり、殻タンパク質で包まれている。カルボキシソームは、おそらく効率的な二酸化炭素濃縮機構に関わっており (重炭酸イオンから二酸化炭素を生成)、このため藍藻はほとんど光呼吸を示さない。ただし、おそらく特異なグリコール酸代謝経路をもつ。カルボキシソームは、炭素固定を行う他の細菌 (光合成細菌や化学合成細菌) に見られることもある。 ふつう貯蔵多糖としてグリコーゲンが存在するが、α-1,6結合の分枝が少ないセミアミロペクチンやアミロースをもつものもいる。このような藍藻が貯蔵するα-グルカンは、藍藻デンプン (cyanophycean starch) ともよばれる。多くの藍藻は、アルギニンとアスパラギン酸からなる非リボソームペプチドであるシアノフィシンの顆粒 (藍藻顆粒 cyanophycin granule) をもち、おそらく窒素貯蔵体としている (上図2g)。ただし光合成に機能するフィコビリソームを窒素貯蔵体としていることもある (窒素欠乏下ではフィコビリソームが分解され、これに由来する窒素を利用する)。細胞内には、油滴やポリリン酸体 (polyphosphate body; リン貯蔵体として機能; 上図2f) などもふつうみられる。またβ-ヒドロキシブチレート重合体 (バイオプラスチックの一種) や炭酸カルシウム (上図2f) を細胞内に貯めるものも知られている。 プランクトン性藍藻の中には、ガス胞 (gas vesicle) をもつものがいる。ガス胞は細長い小胞であり、多数のガス胞が平行に密集して"エアロトープ" (aerotope, gas vacuole) を形成している。ガス胞の膜は脂質ではなく、タンパク質からなる。この膜は水を透過しないため、ガス胞は空気で満たされ比重が軽くなり、細胞は浮くことができる。つまりガス胞は細胞中の気泡のようなものであり、水と屈折率が異なるため光学顕微鏡下では目立つ (上図2g, 下図4a)。光合成産物の増加やイオン取り込みによって細胞内の膨圧が高くなるとガス胞はつぶれて細胞は沈降し、そこで光合成産物の消費やイオン排出によって膨圧が低下すると再びガス胞が膨らんで細胞は浮上する。ガス胞は藍藻に特有の構造ではなく、他のプランクトン性原核生物に見られることもある。
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細胞内構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/24 12:43 UTC 版)
珪藻は全て光合成を行う独立栄養生物で、細胞内に1個から多数の葉緑体を持つ。光合成色素としては、褐藻等と同じくクロロフィルa、c1、c2を持つ。補助色素としては、カロテノイドであるフコキサンチン、ディアトキサンチン、ディアディノキサンチン、βカロテンなどを含み、黄褐色を呈する。葉緑体は包膜が4重膜であり、紅藻の二次共生に由来するものと考えられている。 葉緑体は細胞の周囲に配されるものが多い。核は細胞の中心付近に位置し、その周りを発達した液胞が取り囲む。ミトコンドリアは管状クリステで、細胞質内に分散して配置されている。 羽根型鞭毛を持つストラメノパイルの一員であるが、珪藻では通常の(殻に入った)細胞は鞭毛を持たず、中心珪藻の遊走細胞のみが鞭毛を備える。遊走子の鞭毛は前鞭毛一本で両羽型、内部の微小管配列は一般的な9+2構造ではなく、中心対微小管を欠く9+0構造構造である。鞭毛小毛は、他の不等毛藻同様に3部構成である。
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細胞内構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/01/27 00:52 UTC 版)
真核生物と比べて、細菌細胞の細胞内構造は非常に単純である。細菌は真核生物と同じ意味での細胞小器官を持たず、簡単に観察できる構造は染色体とリボソームのみである。しかし特殊な細菌では、後述するようなより複雑な細胞内構造を持つものもある。
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