ちっそ‐こてい【窒素固定】
窒素固定
窒素固定
窒素固定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 05:20 UTC 版)
窒素は、タンパク質や核酸の原料として全ての生物にとって必須な元素である。窒素は窒素分子の形 (N2) で空気中に大量に存在するが、全ての真核生物を含む多くの生物は、窒素分子を直接利用することはできない。しかし原核生物の中には、窒素分子をアンモニアに変換できるものがおり、この反応は窒素固定 (nitrogen fixation) とよばれる。藍藻の中にも窒素固定が可能なものがおり、生態系において重要な役割を担っている (他の生物が利用可能な窒素栄養分の供給)。窒素を固定する酵素であるニトロゲナーゼは酸素に弱いため、酸素発生型光合成と窒素固定を1つの細胞で同時に行うことはできない。それに対応して、藍藻は以下のように光合成と窒素固定を分けて行っている。 一部の藍藻では、光が当たる日中に光合成を行い、光がない夜間に窒素固定を行う。糸状性のアイアカシオ属 (Trichodesmium) では、窒素固定を行う細胞 (diazocyte) とふつうの栄養細胞が分化しており、光合成と窒素固定を同時に異なる細胞で行うことが可能になっている。この例では細胞の形態的分化は顕著ではないが、ネンジュモ目の藍藻は、異質細胞 (heterocyte, ヘテロシスト heterocyst) とよばれる形態的にも極めて特殊化した窒素固定用の細胞を形成する (右図4a, 上図2g)。異質細胞は光化学系の一部を欠くため細胞内に酸素が発生せず、また酸素を通さない厚い細胞壁で囲まれている。隣接する栄養細胞と接する部分では、異質細胞の細胞質は極めて細くなっており、またその部分にはときに光学顕微鏡で確認できる程の大きなシアノフィシン顆粒 (極節 polar nodule) が存在する (右図4a, 上図2g)。異質細胞で固定された窒素はグルタミンの形で隣接細胞へ輸送され、隣接細胞からはその材料であるグルタミン酸やエネルギー源である糖 (窒素固定は大量のATPを消費する) が供給される。異質細胞は通常の栄養細胞から分化するが、種によってその位置や間隔はほぼ一定であり、重要な分類形質となっている。異質細胞が分泌するペプチドによって周囲の細胞が異質細胞になることが抑制され、これによって異質細胞の間隔が一定になる例が知られている。
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