番組収録素材の保存
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 21:08 UTC 版)
1970年代まで、放送局では、さまざまな理由のため、VTRの収録素材を保管する例が少なかった。 初期のVTR機器は重厚長大であり、価格も維持費も非常に高額であった。1958年より日本で使用され始めた2インチVTRを例に取ると、テープについては、最初期はアメリカ合衆国からの輸入品しかなく、当時の価格で100万円以上、1964年に国産テープが発売された後も当時の価格で10万円以上(いずれも60分1巻の場合)であった。さらに当時、放送収録用テープは税制上、消耗品ではなく固定資産とみなされていたため、固定資産税の課税対象とされていた。また、著作権に関わる問題も放送局単独による保存・管理を困難にした。 そもそも、放送番組におけるVTR素材の使用目的は、映像の保存のためよりも、出演者の負担減や放送時間調整のための意味合いのほうが強かった。テープの内容は放送終了後に消去され、他の番組収録に使い回されていた。そうしてテープ自体が劣化すると、積極的に廃棄されていた。 これらの理由のため、この時期の放送番組は、収録放送であっても全部または一部が現存しないか、かろうじて異なるフォーマットで保存された事例(キネコ変換、カラー放送がモノクロで現存など)が多い。運よく保存されたVTRについても、機器やテープの劣化、代替部品・機材が存在しないことによる修復不能などによって、再公開ができなくなる事例が当然考えうる。 1970年代以前の多くの放送番組の内容の再公開や、それによってなされるべき検証は、この問題のために困難になっている。視聴者が放送番組を録画するための家庭用VTRの普及は、1970年代後半を待たなければならなかった。 日本では、放送ライブラリーおよびNHKアーカイブスが、放送番組の収集と公開を行っている。
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