こう‐ら〔カフ‐〕【甲羅】
甲羅(こうら)
甲羅
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/08 08:22 UTC 版)
甲羅(こうら)とは、カメやカニなどの動物に見られる、背側の外骨格または殻状の部位である[1]。種類により甲皮(こうひ、carapace)ともいい[2]、また背部に持つことを強調して背甲(はいこう)とも言われる[3]。
節足動物
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エビの背甲(赤)
節足動物の甲羅は背面の外骨格(背板 tergite)由来で、一般に背甲といい、主に甲殻類と鋏角類が持つ。古生物まで範囲を広げると、カンブリア紀に栄えたイソキシス類(イソキシスとスルシカリス)やHymenocarina類(ワプティア、カナダスピスなど)なども発達した背甲を持つ[4]。
甲殻類
甲殻類の背甲は、頭部背面の外骨格(head shield)に由来し、縁辺部が出張って胸部まで覆い被さる甲羅である[5]。これは分類群により胸部から分離(カブトエビ、ミジンコなどの鰓脚類)、もしくは胸部と癒合して頭胸部を形成する(カニ・エビなどの十脚類、ウオジラミなどの鰓尾類)[6]。一部の分類群(貝虫、カイエビ、ミジンコなど)は背甲が可動の二枚貝状に特化し、左右から頭部と胸部を包む[5]。
鋏角類
鋏角類の背甲は、前体(prosoma, 頭胸部ともいうが、頭部そのものに相当[7])背面の外骨格で形成される甲羅である。甲殻類の頭胸部を形成する場合がある背甲から区別できるように、英語では「carapace」の代わりに「prosomal dorsal shield」や「peltidium」と呼ばれる場合がある[8]。クモガタ類(クモ、サソリなど)の背甲は前体の本体部分のみを覆い被さるが、カブトガニ類の背甲は正面から左右にかけて縁辺部が大きく張り出し、脚まで覆い被さったドーム型の甲羅となる[7]。
爬虫類
カメの背面の甲羅、いわゆる背甲は脊椎や肋骨と癒合した皮骨からなる甲板(骨甲板)と、鱗からなる甲板(角質甲板)の2つの甲板で構成されている。背面の甲羅は背甲、腹面の甲羅は腹甲(plastron)という。なお、スッポンなど一部の種では角質甲板が無く、皮膚に覆われた骨甲板のみの甲羅を持つ。また、オドントケリスなどカメの基部系統に近いとされる化石爬虫類は腹甲のみを持つと考えられる[9][10]。
カメとは別系統とされる化石爬虫類板歯類の中には、カメと似た甲羅を収斂進化した例がある(ヘノドゥス、プセフォデルマなど)[11]。
軟体動物
軟体動物の殻(貝殻)は一般に甲羅とは呼ばないが、陸生の腹足類(陸貝)では、ナメクジのように貝殻が退化して皿状になる例があり、これを甲羅と呼ぶ場合がある[12]。そのような殻が外套膜の下に隠れ、外見からは判別しにくいものもある。
また貝殻が退化した例としては他にも、コウイカなどの「イカの甲」を指して甲羅と表現されることがある[13]。
哺乳類
哺乳類では被甲目、いわゆるアルマジロの仲間の甲皮が甲羅と呼ばれることがある[14]。化石種のグリプトドンはカメに似た形状の甲羅で知られる。
なお鱗甲目では甲羅と言うより鱗を甲羅のように使って身を守るのだが、この仲間の総称である「穿山甲(センザンコウ)」は山に穴を穿ってくらす甲羅をもつ動物ということで、この名がある[15]。
脚注
- ^ 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典内言及, 精選版. “甲羅(こうら)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年4月16日閲覧。
- ^ 日本国語大辞典,世界大百科事典内言及, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,デジタル大辞泉,精選版. “甲皮(こうひ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年4月16日閲覧。
- ^ 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典内言及, 精選版. “背甲(せごう)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年4月16日閲覧。
- ^ Aria, Cédric; Caron, Jean-Bernard (2017-05). “Burgess Shale fossils illustrate the origin of the mandibulate body plan” (英語). Nature 545 (7652): 89–92. doi:10.1038/nature22080. ISSN 1476-4687 .
- ^ a b “Crustacea Glossary::Definitions (carapace)”. research.nhm.org. 2020年11月20日閲覧。
- ^ Fusco, Giuseppe; Minelli, Alessandro (2013). Minelli, Alessandro; Boxshall, Geoffrey; Fusco, Giuseppe. eds (英語). Arthropod Segmentation and Tagmosis. Berlin, Heidelberg: Springer Berlin Heidelberg. pp. 197–221. doi:10.1007/978-3-642-36160-9_9. ISBN 978-3-642-36159-3
- ^ a b Lamsdell, James C. (2013-01-01). “Revised systematics of Palaeozoic ‘horseshoe crabs’ and the myth of monophyletic Xiphosura”. Zoological Journal of the Linnean Society 167 (1): 1–27. doi:10.1111/j.1096-3642.2012.00874.x. ISSN 0024-4082 .
- ^ Dunlop, Jason A.; Penney, David (2012) (英語). Fossil Arachnids. Siri Scientific Press. ISBN 978-0-9567795-4-0
- ^ Li, Chun; Wu, Xiao-Chun; Rieppel, Olivier; Wang, Li-Ting; Zhao, Li-Jun (2008-11). “An ancestral turtle from the Late Triassic of southwestern China” (英語). Nature 456 (7221): 497–501. doi:10.1038/nature07533. ISSN 1476-4687 .
- ^ Schoch, Rainer R.; Sues, Hans-Dieter (2015-07). “A Middle Triassic stem-turtle and the evolution of the turtle body plan” (英語). Nature 523 (7562): 584–587. doi:10.1038/nature14472. ISSN 1476-4687 .
- ^ Rieppel, Olivier (2002). The dermal armor of the cyamodontoid placodonts (Reptilia, Sauropterygia) : morphology and systematic value. Chicago, Ill: Field Museum of Natural History
- ^ “チャコウラナメクジ / 国立環境研究所 侵入生物DB”. www.nies.go.jp. 2023年4月16日閲覧。
- ^ “コウイカ (スミイカ) | 市場魚貝類図鑑”. ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑. 2023年4月16日閲覧。
- ^ “甲羅を持つ唯一の哺乳類!アルマジロの特徴とマメ知識7選”. anicom you. 2023年11月8日閲覧。
- ^ “有鱗類 センザンコウのなかま”. ガイアプレス. 2023年11月8日閲覧。
甲羅
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/15 05:08 UTC 版)
「レギオン (架空の怪獣)」の記事における「甲羅」の解説
甲羅状の外骨格は硬質シリコン樹脂によく似た絶縁物質でコーティングされ、あらゆる攻撃を弾き返す。
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甲羅
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「スーパーマリオUSA」の記事における「甲羅」の解説
投げると地面を滑っていく。敵キャラの列に甲羅を投げ込んで一掃する事ができる。甲羅に乗る事も出来る。本作では甲羅が壁や障害物にぶつかると跳ね返らずに消える。また、GBA版では壁などにぶつかると跳ね返り、一定の数の敵を倒すと、軌道上に敵がいる限り永遠に1UPする。
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甲羅
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 04:57 UTC 版)
カメの形態上の最大の特徴は、甲羅を持つことである。甲羅は脊椎や肋骨と一体の甲板(骨甲板)と、鱗からなる甲板(角質甲板)の2つの甲板で構成される。腹甲の一部は鎖骨や肋骨が変形したとされる。骨甲板と角質甲板の継ぎ目がずれており、強度をあげている。 カメの甲羅(骨甲板)は肋骨や背骨のみが変形してできたとする説と、肋骨や背骨が「皮骨」と融合してできたという説とがあった。しかし2013年、理化学研究所は、カメの胚の発生プロセスの組織学的な解析と三畳紀の化石の調査により、カメの骨甲板は肋骨だけが拡張・変形して進化してきたことを立証したと発表した。ワニやアルマジロなど他の脊椎動物の装甲は、真皮層で形成された皮骨という組織からなるが、カメの背甲の板状の骨は肋骨が作られたのち骨膜が拡張し、その骨膜内で形作られるもので、その形成は真皮より下の結合組織内で起きるというものである。 角質甲板は以下のように多くのパーツから構成されている。分類群によってこれらの有無や数が決まっているが、発生時の環境や外傷、疾病などにより奇形を生じることもある。 背甲(carapace) 背面にある甲羅。項甲板(nuchal、precentral、または、cervical) 背甲の頭部側の先端にある左右の縁甲板をつなぐ甲板。これが無いカメもいるので、識別の重要なポイントになり得る。 椎甲板(vertebral、または、central) 脊椎の上部にある甲板。多くのカメでは5枚。前から第一椎甲板、第二椎甲板、…、第五椎甲板と呼ぶ。 肋甲板(pleural、costal、または、lateral) 背甲の肋骨(人間と違い、肩帯から腰帯まで覆う)上部にある甲板。椎甲板の左右に4対ある。 縁甲板(marginal) 背甲(背面だけでなく腹面も含めて)の外縁を覆う12対ある甲板[要検証 – ノート]。ワニガメでは肋甲板との間に上縁甲板があり原始的な特徴とされる。分類群によっては最も後部にある臀甲板が癒合し1枚(臀甲板と呼称されることもあるが一般的でない)になる。 臀甲板(prostcentral、caudal、または、supracaudal)[要検証 – ノート] 背甲の最も尾側にある縁甲板。第十二縁甲板は特別に臀甲板と呼ぶ。種類によって、左右1対か融合して1枚になっている。臀甲板が1つのことを「第十二縁甲板は融合している」、2つのことを「第十二縁甲板は分かれている」ということがあり、種の識別に役立つ。 上縁甲板(supramarginal)[要検証 – ノート] ワニガメには肋甲板と縁甲板の間に上縁甲板(supramarginal)がある。 腹甲(plastron) 腹面にある甲羅。いくつかの属や種では甲板の間に1、2つの蝶番状の構造があり可動することができる。間喉甲板(intergular) 、ヨコクビガメ科、ヘビクビガメ科などの、喉甲板の上か間、肩甲板・胸甲板の間に存在することがある。 喉甲板(gular) 腹甲のうち、一番頭部に近い位置にある左右に1対の甲板。左右の喉甲板が癒合し1枚になった分類群もいる。種類により1枚の場合と2枚の場合がある。 肩甲板(humeral) 前足の付け根に近い位置にある左右に1対の甲板。 胸甲板(pectral) 前足の後ろの位置(胸)にある左右に1対の甲板。 腹甲板(abdominal) 股甲板(femoral) 肛甲板(anal) 腹甲のうち、一番尾に近い位置にある左右に1対の甲板。種によってはこの甲板の間にある切れ込みにより、雌雄を判別できる。 橋(きょう、bridge) 背甲と腹甲の間の部位。上記の胸甲板や腹甲板が外側へ張りだし、縁甲板と接している分類群が多い。下縁甲板(inframarginal)[要検証 – ノート] 縁甲板と胸甲板の間、橋の前肢の基部後方にある甲板 腋下甲板(axillary) 腋(わき)の下、前足の付け根の甲板。 鼠蹊甲板(ingunal) 縁甲板と腹甲板の間、橋の後肢の基部前方にある甲板。鼠蹊部、すなわち、後ろ足の付け根の甲板。 現生種では化石種と比較して甲板が薄く軽量化し、甲板数も少ない傾向がある。例外もあるが陸棲傾向の強い種では甲板が分厚く背甲がドーム状に盛り上がり、水棲傾向の強い種では水の抵抗を減らすため甲板が薄く背甲が扁平になる傾向がある。一方で例外も存在し、陸棲種でもパンケーキガメのように非常に甲羅が扁平で、素早く岩の隙間等に潜り込む種もいる。水棲種にもフロリダアカハラガメやマレーハコガメの亜種などのようにドーム状に盛りあがる背甲を持つ種もいて、これは同所的に分布するワニなどの捕食者に対する防衛手段(甲羅が分厚くなることで飲みこみにくくなる)と考えられている。陸棲種では腹甲が大型(背甲よりも長いことが多い)になり、水棲種では腹甲が小型になる傾向がある。スッポン上科やオサガメは軽量化のため角質甲板が無く骨甲板も退化しているが、これは浮力により体重を支えることができ表面を甲板ではなく皮膚で被うことで水の抵抗を減らす効果があると考えられている。複数の科において腹甲に蝶番状の機構がある分類群が存在し、これにより腹甲を折り曲げて可動することができる。蝶番のある多くの分類群で1か所、ドロガメ属のみ2か所、セオレガメ属のみ背甲に蝶番がある。蝶番により腹甲が可動する利点としては背甲と腹甲の隙間を減らすことによる外敵や乾燥からの防御、逆に背甲と腹甲の隙間を増やすことで大型の卵を産むことができる(幼体や栄養分の増加により死亡率を減らせる)などの効果があると考えられている。 なお、甲羅を持つがゆえに他の生物には見られない特徴が見られる。本来、肩帯は、肋骨が存在している場合は胸郭の肋骨より外側に付くのが普通である。しかし、カメでは発生時に肋骨が外側に広がり肩帯を取り込むため、四足動物では本目のみ肋骨(甲羅)の内側に肩帯がある。また、肘関節は他の爬虫類とは逆に外側に曲がるようにできている。腰帯は他の四肢動物と同じく仙椎を介して体幹に繋がっているが、仙椎直前の胴胸椎肋骨と癒合した肋骨板が仙椎と癒合した上尾骨板とともに後方に伸長して甲羅後縁を形成するため、結果として甲羅の内側に位置する。また、かつて胴体を動かしていたと思われる筋肉は、甲羅により胴体を曲げたりしなくなったため退化したように見えるが、肺呼吸をするうえで鞴(ふいご)のように働き、呼吸運動に必要な力を供給する隔膜として転用されている。ただし、隔膜は人間の横隔膜と違い、縦に付いている。カメは主に肺呼吸を行うが、肺は大型であるものの胴体が甲羅で覆われているため、胸筋や腹筋を使って肺を収縮・膨張させて呼吸することはできない。そのため頭部や四肢を甲羅に入れることで肺を収縮させ、肺の中の空気を吐き出し、逆に頭部や四肢を甲羅から出すことで肺をふくらませ空気を吸いこむ。水棲種では鼻や口、喉の粘膜、総排泄口にある粘液嚢、皮膚を使い、副次的ではあるが皮膚呼吸によるガス交換をおこなう種もいる。 また、カメの甲羅は、カリウムやマグネシウムといった栄養素を貯蔵する役割も持つ。
※この「甲羅」の解説は、「カメ」の解説の一部です。
「甲羅」を含む「カメ」の記事については、「カメ」の概要を参照ください。
「甲羅」の例文・使い方・用例・文例
- その矢は甲羅に当たりました。
- カニは甲羅に似せて穴を掘る.
- カニは甲羅に似せて穴を掘る
- 亀の子が甲羅を干す
- かには甲羅に似せて孔を掘る
- 蟹は甲羅に似せて穴を掘る
- 骨性の甲羅と泳ぐためのひれ足のような四肢を持つ様々な水生と陸生の爬虫類の総称
- 下方の甲羅に赤い斑点があるチェサピーク湾の支流にすむ淡水ガメ
- 米国西部に棲息する甲羅にいぼのある川カメ
- 蹄鉄とかたい先鋭なテールのように形成される半球形の甲羅を持っている北アメリカの大西洋岸の大きい海洋の節足動物
- とげのある甲羅があるが、本物のロブスターの大きなはさみが不足している大きな食用の海洋甲殻類
- ある種のカメの甲羅に見られるまだらの角質の物質
- 堅い甲羅や殻
- 蟹や亀などの甲羅
- カメ類の甲羅の背の部分
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