生酛造りの概要
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/28 05:37 UTC 版)
生酛系の酒母造りは、長い歳月のあいだに日本人が自然界の法則を巧みに利用して完成させてきた、以下のような酵母の純粋培養技術である。 生酛系の酒母の中では、じつに多様な菌が次々に活動して生存競争を繰り広げる。どのようなライバルの菌がタンクの中に同居しているか、また生育環境のpHはどれほどか、などによってそれぞれの菌の最適な生存環境が異なるため、菌たちの勢力の序列は刻々と推移するのである。 初めは硝酸還元菌、野生酵母、産膜酵母が隆盛を極めるが、酒母造りの5日目ごろを境にそれらは乳酸菌によって駆逐され急減していく。 一口に乳酸菌といっても多様な種類があり、大きく球型と稈型に分けられるが、12日目ごろは球型乳酸菌が、15日目ごろには稈型乳酸菌が隆盛のピークを迎える。しかしそれぞれのピーク後は、それらもやがて自らの生成した酸によって死滅していく。 このころに酒母は乳酸をたっぷり含んだヨーグルトのような状態となっており、もはや雑菌や野生酵母が入り込める余地はない。それを見極めると杜氏は、乳酸に強い清酒酵母(本来は蔵に棲みついている「蔵つき酵母」「家つき酵母」)を投入し、じわじわと増殖・培養させていくのである。 このように投入された清酒酵母の中でも、生命力の弱いものは途中で淘汰されていく。生存競争を生き抜いた強健な酵母だけをじっくりと育て、またその年の気候や酒米の状態などを考慮し、最適と思われる系統だけ選抜育成して醪の醗酵に用いることになる。
※この「生酛造りの概要」の解説は、「生酛」の解説の一部です。
「生酛造りの概要」を含む「生酛」の記事については、「生酛」の概要を参照ください。
- 生酛造りの概要のページへのリンク