狼男の解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/01 02:12 UTC 版)
その後より合理的な解釈を求めて、生理現象や精神的な問題と結び付けられることも行われるようになった。17世紀末のジャン・ニノは狼への変身を「狼狂(folie louvière)」として捉え、知能障害や頭脳損傷などに由来する精神的な理由で月に向かって絶叫したり、4つ足で歩くなどの精神錯乱を起こしたと考えた。 実際の伝承では、映画などで知られた狼と人間の中間的な形態をもつ人型の狼男というものは少なく、人語を話すオオカミ、もしくは人間と同じ大きさの狼という形で語られているのが普通である。また、月や丸いものを見ると変身するという伝承も一般的なものではなく、その部分は映画や小説における創作に属する。しかし、グアラニー族に伝わる神話に登場するルイソンに同様の伝承があるため、言い切れるものではない。 また、民間伝承では満月とは限らず、新月とかクリスマスから蝋燭の祝日にかけての期間とか満月以外の日に変身するとされるものもある。13世紀のイングランドの神学者ティルベリのゲルウァシウス(en)の著書『皇帝の閑暇』第120章には月の満ち欠けに応じて狼に変身する人間の存在を記し、代表例として南フランスのリュック城近くに新月のたびごとに狼に変身する男性の話を述べている。 先天的に狼への変身能力を持つ人間(もしくは、人間への変身能力を持つ狼)の種族としての狼男の場合もあるが、大抵は呪いや魔術などによって後天的に狼男となる場合が多いとされる。その場合、狼憑き(おおかみつき)とも呼ばれる。 農作物や食料の保存方法が悪かった時代、ライ麦パンに繁殖した麦角菌(アルカロイドを含有し、四肢の麻痺、思考力の低下、幻覚・興奮等の作用がある)を摂取してしまい、その結果人格が豹変したり、凶暴な行動をとってしまった人や、同じような症状が発症後に起こる狂犬病に罹患した人が狼男扱いされてしまったという説もある。 現在は、動物に変身するという妄想、または自分が動物であるという妄想の起こる精神医学上の症候群を、「狼化妄想症」(人狼症、Clinical lycanthropy, または特に狼と特定しない Therianthropy という呼び方もある)という。
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