無農薬栽培のポイント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 09:36 UTC 版)
無農薬栽培では病害虫の発生後に農薬で抑えることが出来ない、したがって原因を持ち込まない発生させない管理が重要となる。 環境による防除 通風や陽当り、圃場の排水性などに注意し病害虫が発生しやすい環境を作らない。周辺の雑草や圃場内に放置された資材なども害虫の発生源となる。 農場や圃場全体を防虫網で囲い、害虫の侵入を防止する。病害虫に侵された作物を発見した場合は直ちに畑外へ持ち出すか深い穴を掘って埋める等の処置をして被害の拡大を防ぐ。 作物による防除 病害虫にかかりにくい農作物や品種を用いる。古くから栽培されている作物は、その地域の気候風土に適していると考えられる。反対に白菜など新しく入ってきた作物は日本の気候に適しておらず、無農薬栽培に向かない物が多い。 病害虫には種子や苗から感染・侵入するものも多い、従って無病で異物混入の無い種苗を用いる。 生育にバラツキがあると適切な管理が困難となる。従って粒の大きさや形に注意して健全な種子を選別して用いる。例えばイネの種もみを塩水に漬けることで比重の違いで良い種もみを選ぶことができる。 ショウガやサツマイモなどは種芋の貯蔵中に低温に遭遇すると腐敗や、その後の生育が悪くなるので貯蔵の段階から注意を要する。 栽培法による防除 適期・適地・適作を守る。例えば大根などの冬野菜を夏に無農薬で栽培するのは困難である。 機械や熊手などで土の表面1~2cm程度を頻繁に撹拌することで土が乾燥し雑草の発芽を抑えられる。藁や籾殻などで土の表面を覆うことでも抑草効果が期待できる 雑草が種を着ける前に除草することで種子の拡散を避ける。雑草種子は寿命の長い物が多く一度土に混入すると、その後数年から種類によっては十年以上雑草の発生に悩まされる。 有機肥料であっても肥料の過剰使用は作物の病害虫への抵抗力を著しく弱める。従って適正な施肥計画を実施する。特に有機肥料は温度や湿度の影響を受けやすく、低温期に施した肥料が気温の上昇に伴い急激に分解されることで肥料過剰となりやすい。 農作物が病害虫にさらされる期間を短縮する。例えばトウモロコシの早蒔き初夏取り栽培など。 化学的な農薬に替わる木酢液などの使用。梶みゆきが木酢液によるバラの無農薬栽培に成功しているが、木酢液は特定農薬としては認められていない。かつては農薬登録されていたが現在は「失効農薬」である。しかし、「販売禁止農薬」ではないので、農薬的な使用は取締の対象ではない。ただし、農薬としての効能をうたって販売した場合は、農薬取締法違反に問われる。加えて、木酢液や竹酢液は成分の不明な物が多く、発がん性物質などの危険を指摘する声も上がっている。従って化学農薬よりも有害な可能性もある。 その他 有機肥料や腐葉土などの有機物を大量に入れなければ無農薬で栽培できないと思われているが、過剰の有機物は不足しているのと同様に有害でしかない。例えば有機物の分解によって放出された成分(過剰の窒素や有機酸)が作物の生育を阻害することもある。有機物がさらに過剰の場合は分解菌の働きによって土中の酸素が消費されることで土が還元状態となりドブ川のヘドロと同様の悪臭を発する。こうなると硫化鉄や硫化水素などの作物にとって有害な成分が土に溜まり、健全な状態(土が酸化された状態)へ回復させるのに多大の時間と労力を要することとなる。また土を酸化させる際も硫化鉄や硫化水素によって土のpH(ピーエッチ)が酸性となるので石灰(カルシウム)などのアルカリ資材で作物の栽培に適した中性程度に矯正しなければならない。 以上のポイントに留意した栽培法を考える。
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