海面上昇に対する脆弱性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 05:26 UTC 版)
海抜の低いツバルは、海面上昇に対してもともと脆弱であり、水没までに至らずともそれによってもたらされる危機は何も新しい問題ではない。 こうしたサンゴ礁の島は水が浸透しやすく、地下には植物の根が張る淡水レンズと呼ばれる淡水部分があるが、これは比重差によって浸透した雨水が海水の上に薄くレンズ状に浮いただけの構造である。 第2次大戦中にアメリカ軍によってフナフティに滑走路が建設されたときには、サンゴ礁の基層の一部が壊されたためにこうした淡水レンズの塩水化が起こっている。 また、1972年にフナフティがサイクロン「ベベ(Bebe)」に襲われたときには、ほぼすべての家が壊れ、農作物が塩害を受ける、サンゴ礁の膨大なかけらが海岸を埋め尽くすなど、きわめて大きな被害を受けた。 このサイクロンの被害は結果的に首都フナフティの人口を急増させ、滑走路の周辺などかつて湿地であった低地へも人家が拡大することになった。第二次世界大戦中にフナフティに建設された滑走路は珊瑚礁の破片を用いた埋立地であるため、これを維持するためにはたゆまない工事が必要であるが、それは行われていない。埋立地の経年劣化による地盤沈下およびこれから起こるかもしれない海面上昇に対するフナフティの脆弱さは、このような市街地の拡大によって招かれたものであることが過去の土地利用などの分析によっても示されている。 こうした市街地の一部は春秋分に近い時期に発生する、通常より大きな大潮で満潮時に地中から湧き出してくる水によって0.6メートルまで浸水する。 特に強風が吹く2月を中心として発生する大潮は大きくなり、南太平洋では「キング・タイド(king tide)」と呼ばれている。
※この「海面上昇に対する脆弱性」の解説は、「ツバル」の解説の一部です。
「海面上昇に対する脆弱性」を含む「ツバル」の記事については、「ツバル」の概要を参照ください。
- 海面上昇に対する脆弱性のページへのリンク