流れの変化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 13:47 UTC 版)
詳細は「ロリコン漫画」を参照 この頃から次第に漫画に変化が生じ始める。特にロリコン漫画の台頭は、漫画全体の雰囲気を変えるものであった。これはエロ劇画においても、70年代後半より、中島史雄や村祖俊一のように次第に少女を中心に描く作家が出始めている。あるいは谷口敬や澤木あかねなどのように絵柄にもかわいさを前面に押し出す作家も出現し、内山亜紀(旧名・野口正之)や千之ナイフに至っては少年誌にまで進出を果たした。 この流れを決定づけたのは、吾妻ひでおであった。彼は少年漫画の舞台でマニアックな人気を得、エロ劇画誌『劇画アリス』にギャグ漫画『不条理日記』を連載した後、アリス出版の川本耕次からの依頼で自動販売機専門誌である『少女アリス』に現在の流れに通じるようなかわいらしい絵柄で本格的なエロ漫画作品「純文学シリーズ」(1980年)を発表した。これは自動販売機専門誌の連載で部数と読者が限られていたものの、この連載は後に奇想天外社から『陽射し』(1981年)という題で単行本にまとめられ一部の話題をさらうことになる。 80年代前半は吾妻ひでおや蛭児神建らのロリコン漫画同人誌『シベール』(1979年)を嚆矢としてロリコン漫画誌が登場し、『レモンピープル』(1982年)と、劇画誌からリニューアルされた『漫画ブリッコ』(およびその後継誌の『漫画ホットミルク』)が二大ロリコン漫画誌と呼ばれた。それ以外に数十誌の類似誌が出版されるも短命に終わる状況が続いたが、80年代半ばを過ぎて『COMICアットーテキ』や『ペンギンクラブ』らの創刊以降、次第に定着する雑誌が増え始め、それ以降はあっと言う間に類似誌が数を増やした。それらに描かれた世界はエロ劇画誌より比較的自由度が高く随分と垢抜けており、その絵柄もアニメ調で大きく異なっていた。それらはどちらかと言えば若い世代に受け入れられたが、それはエロ劇画を購入していた世代とも大いに重なるものとなりつつあった。ロリコン誌は数を増やすにつれて性質を変え始め、次第に描く対象を女子高生程度、つまりエロ劇画の範囲と被るようになり、一般的なエロ漫画との境目は不明瞭になり、その分エロ劇画の市場を奪って行った。 他方、より社会的な要因を指摘する向きもある。この頃より雑誌の購入場所としてコンビニエンスストアが重要になったが、そこでエロ劇画誌が受け入れられなかったからである。印象が暗く不潔感があったためであろう。それが販売先を大きく狭めた点が響いたという指摘である。 もう一つのアダルト系漫画雑誌の系列として、同じ頃から増加が始まったレディースコミックがある。当初はややソフトなムード的なセックス描写に止まっていたものは次第に過激になったが、これは読者層がエロ劇画誌とは異なっていたから、市場の取り合いという意味ではそれほど影響はなかったようである。むしろ新しい市場として、エロ劇画の書き手がレディースコミックへ流入する現象が見られた。したがって、その作風的にはエロ劇画誌の匂いが強い例もある。
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