さいさ‐うんどう【歳差運動】
歳差
歳差運動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 02:06 UTC 版)
2012年10月には、ポラリスの赤緯は、+89°15′41.2″であった。そのため、常に天の北極を1°以内の精度で指し示し、また屈折やその他の要因を補正した後の真の地平線に対してなす角度は、観測者の緯度と1°以内の精度で一致する。2100年には、天の北極はポラリスに最も近づき、その後はさらに遠ざかる。 歳差運動のため、北極星の役割は、時間の経過とともに受け継がれていく。紀元前3000年には、りゅう座の暗い星であるりゅう座α星(トゥバン)であり、天の北極から0.1°以内と、肉眼で見える極星としては最も近くにあった。しかし、等級は3.67とポラリスの5分の1程度の明るさであり、21世紀現在の都市部では光害のため肉眼で見えづらくなっている。 紀元前1000年紀には、コカブが天の北極に最も近い明るい星だったが、極を指すと言えるほど近くはなく、ギリシアの探検家ビュアテスは紀元前320年頃に、天の極は星を欠いていると書いた。ローマ帝国時代には、天の極は、ポラリスとコカブからほぼ等距離にあった。 軸歳差は、一周するのに約25,770年かかる。歳差と固有運動を考慮したポラリスの平均位置は、2102年2月には、天の北極から0.4603°離れた+89°32′23″の最大赤緯に達する。章動と光行差を考慮に入れた見かけの赤緯の最大値は、2100年3月24日に天の北極から0.4526°離れた+89°32′50.62″に達する。 歳差運動により、次に天の北極に近くなるのは、ケフェウス座内の恒星である。3000年頃までには、ポラリスとケフェウス座γ星(エライ)からほぼ等距離になり、4200年頃に、エライは天の北極に最も近づく。5200年頃には、ケフェウス座ι星とケフェウス座β星が天の北極の両脇に来るようになり、その後、7500年頃に、2等星のケフェウス座α星(アルデラミン)が最も近い星になる。 その後ははくちょう座に移り、10000年紀には1等星のデネブが近くなるが、紀元前1000年紀のコカブがそうであったように、天の極から7°も離れており、極の方向を指し示すほど近くはならない。3等星のはくちょう座δ星は、11500年頃には、天の極から3°まで近づく。その後、13700年頃には、天の極から5°離れているものの、こと座に移動し、北天で2番目に明るい星であるベガが極星となる。 最終的に天の極はヘルクレス座に移動し、18400年頃には、ヘルクレス座タウ星を指す。さらにその後、天の極はりゅう座を経て、現在のこぐま座に戻る。27800年頃には、再びポラリスが極星となるが、固有運動のため、天の極との距離は現在よりも遠くなる。 地球の26000年周期の軸歳差の過程の中で、北半球から肉眼で見られる見かけの等級で+6等以上の明るい恒星が、北極星と呼ばれてきた。この間には、地上の観測者から肉眼で見えない恒星が天の極に近い位置にあることもあり、この間は、はっきりした北極星がない状態であった。また、北極星から真の天の北極までの角距離が5°を超え、だいたいの北の方角を示す役にしかたたない時期もあった。 現在の北極星であるポラリスから始まり、26000年周期での北極星と、北極星が存在しない場合には「北に近い」指標となる恒星の平均の光度や、天の極に最も近い時の角距離は、以下のとおりである。 バイエル符号固有名見かけの等級星座天の極備考こぐま座α星 ポラリス 1.98 こぐま座 - 0.5° 現在の北極星 ケフェウス座γ星 エライ 3.21 ケフェウス座 - 3° 3100年頃、北極星になる。 ケフェウス座ι星 3.51 ケフェウス座 - 5° ケフェウス座ベータ星と同時期に天の北極に近くなる。 ケフェウス座β星 アルフィルク 3.51 ケフェウス座 - 5° 5900年頃、北極星になる。 ケフェウス座α星 アルデラミン 2.51 ケフェウス座 - 3° 7600年頃、北極星になる。 はくちょう座α星 デネブ 1.25 はくちょう座 - 7° 10200年頃、北極星になる。 はくちょう座δ星 ファワーリス 2.87 はくちょう座 - 3° 11600年頃、北極星になる。 こと座α星 ベガ 0.026 こと座 - 5° 紀元前11500年頃北極星であった。13700年頃、再び北極星になる。 ヘルクレス座ι星 3.75 ヘルクレス座 - 4° ヘルクレス座τ星 3.89 ヘルクレス座 - 1° 紀元前7400年頃北極星であった。18400年頃、再び北極星になる。 りゅう座α星 トゥバン 3.65 りゅう座 - 0.2° 紀元前3000年頃に北極星であった。 りゅう座ι星 エダシク 3.29 りゅう座 - 5° りゅう座κ星 3.82 りゅう座 - 6° コカブと同時期に天の北極の近くにあった。 こぐま座β星 コカブ 2.08 こぐま座 - 7° 紀元前1100年頃北極星であった。
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