検疫官(国家公務員の食品衛生監視員)の不足問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/10 18:04 UTC 版)
「食品衛生監視員」の記事における「検疫官(国家公務員の食品衛生監視員)の不足問題」の解説
日本の食料自給率は約40%で、世界最大の食料輸入大国であるにもかかわらず、検疫を行う食品衛生監視員が不足している。国防を担う自衛隊は23万人を超える人員をもっていることと比較しても、輸入食品の安全性の脅威から日本国民を守っている食品衛生監視員はわずか399人(平成24年度)と非常に少なく、国の検査体制を支える人員が不足していると指摘されている。 人員不足の原因のひとつは、全国規模の転勤である。検疫所は全国に13か所の本所の他、14か所の支所と83か所の出張所があり、配属先は北海道から沖縄まで日本全国に及ぶ。また、概ね約2年から3年ごとに異動があり、場合によっては転居(引越し)を伴う。厚生労働省検疫所の異動辞令は、転居を伴う場合でも約3週間前に出るのが通例であり、自分の次の住居地となる都道府県が直前にならないと分からない。配偶者の勤務先や子の通学区域が頻繁に変わってしまうことから、家族への負担を考慮し、転職する者も多い。 全国の検疫所では輸入食品等の一層の安全を確保することを目的として、輸入食品監視指導計画に基づくモニタリング計画が策定されており、平成31年度(令和元年度)では、約99,000件としている。食品ごとのリスクを考慮し、統計に基づいた検査実施件数としているが、実施容易性が考慮されているわけではない。そのため、都心部でのモニタリング検査は、場合によっては、1日中、保税倉庫での輸入食品の収去に追われることがある。 また、特に都心部では1日に平均で2,000~2,500件にも及ぶ食品等輸入届出書を審査する必要があり、事務所での書類審査業務に追われることも多い。 審査結果が違反の場合はその旨輸入者へ説明するが、複数の関連法の理解は当然として、輸入者によっては莫大な金額の輸入を行っているケースも多く、論理的な説明・説得が必要となる。 配属先によっては、食品衛生に関する専門知識や技術が生かせる職場環境ではないこともあり、獣医師、薬剤師等の免許保有者は、本来の資格を生かした職へ転職する者も多い。
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