最近の知見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 09:10 UTC 版)
2007年11月、井村有希は雌雄の交尾器、特に雄交尾器の内袋を完全に反転膨隆させて形質を比較することで、日本鞘翅学会の英文誌"Elytra"に日本産ルリクワガタ属の分類を再検討する論文2報を発表した。これらの論文でタカネルリクワガタ Platycerus sue Imura が新種記載されるとともに、従来、ニセコルリクワガタ Platycerus sugitai(基産地四国)の紀伊半島に産する群とされた個体群がキイルリクワガタ Platycerus akitaorum、九州に産する群とされた個体群がキュウシュウルリクワガタ Platycerus urushiyamai と種に格上げされ新たに新種記載、Platycerus sugitai の和名はシコクルリクワガタとあらためられた。タカネルリクワガタを含めた上記4種は、外形的にはよく似ているが、井村によると雌雄生殖器の形態が大きく異なり既知種との判別は容易であるとされている。 またここで新種タカネルリクワガタ Platycerus sue Imuraについては、生息地が四国の石鎚山の一部であり、産地名の公表が採集者の殺到と乱獲を招きかねないため、分布範囲、生息環境、生態等に関するより詳細な知見が明らかになり、かつ保全対策に対する目処が立つまで、産地名の公表は差し控えたいとしており、詳細な原記載産地が公表されない形で新種記載が行われるという異例の事態となった(のち記載者らにより公表された)。 また、ルリクワガタ Platycerus delicatulus については、1969年のコルリクワガタの記載以前はルリクワガタ属の各種が「ルリクワガタ」と称されていたことなどから、混乱を避けるため、種としての和名を「オオルリクワガタ」と変更することが提案されている。 これら井村に従えば、日本産のPlatycerus属は次の7種となる。 オオルリクワガタ Platycerus delicatulus Lewis, 1883 [ルリクワガタの和名改称]基亜種 Platycerus delicatulus delicatulus - 本州・四国・九州に生息する。 ウンゼンルリクワガタ Platycerus delicatulus unzendakensis Fujita et Ichikawa, 1982 - 長崎県の雲仙岳、長崎県から佐賀県にまたがる多良岳に生息する。オスは青い。 ホソツヤルリクワガタ Platycerus kawadai Fujita et Ichikawa, 1982 - 関東地方から中部地方に生息する。♂は緑または青、♀は緑色でルリクワガタ属のなかでも美麗。 コルリクワガタ Platycerus acuticollis Y. Kurosawa, 1969 - 地域ごとに多くの亜種があるが、種単位でさえ判別が難しいため、亜種を判別するのは更に難しい。基亜種 Platycerus acuticollis acuticolis - 東北地方から信越地方に生息する。 トウカイコルリクワガタ Platycerus acuticollis takakuwai Fujita, 1987 - 関東地方に生息する。 キンキコルリクワガタ Platycerus acuticollis akitai Fujita, 1987 - 中部地方以西の本州に生息する。 ミナミコルリクワガタ Platycerus acuticollis namedai Fujita, 1987 - 四国・九州に生息する。 シコクルリクワガタ Platycerus sugitai Okuda et Fujita, 1987 - 四国に生息する。[ニセコルリクワガタの原記載産地個体群である四国産個体群:和名改称] キイルリクワガタ Platycerus akitaorum Imura, 2007 - 紀伊半島に生息する。[ニセコルリクワガタの紀伊半島産個体群とされていたものを新種記載] キュウシュウルリクワガタ Platycerus urushiyamai Imura, 2007 - 九州に生息する。[ニセコルリクワガタの九州産個体群とされていたものを新種記載] タカネルリクワガタ Platycerus sue Imura, 2007 - 四国石鎚山に生息する。体長9、8mm~12、1mm。2007年に[新種記載]され2008年3月26日から2011年3月25日まで絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律による緊急指定種に指定されていたがこの間産地を公表しなかったため新しい産地で本種を採集しても違法になる可能性があると批判もあった(後に記載者らにより産地は公表された)。 ※なお日本鞘翅学会などの調査で生態的特性の近いコルリクワガタと比較しても生息密度が高いことや生息地は国定公園や森林生態系保護地域などにより保護されていることや生息地が急峻な斜面であるため人工構造物を設置することや捕獲は難しいなどの理由で絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律による国内希少野生動植物種への指定は後に見送られることになる。
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