早期教育が流行する要因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/28 00:26 UTC 版)
早期教育は江戸時代やそれ以前にも存在していた。教育者である親自身が手ほどきしたり、親戚や知人のもとで将来就くであろう職業に関わる教養や訓練、または躾として幼少より学問を修めさせていた。また神童とみなされた者が教育者のもとに預けられることもあった。 明治時代に年齢を基本にする学年制が確立し、義務教育機関における早期教育はなくなった。1990年代になって早期教育が加熱し始めたのは以下のような要因があるとみられる。 民間企業が戦略として早期教育産業に参入 メディアによる早期教育の紹介 少子化で子供一人にかける期待と費用の増加 ゆとり教育に対する危機感とその解決法としての先取り教育 親が自己の育児能力・指針に対して自信喪失 親が子育てによる自己実現・生き直しを求めている 臨界期など脳の発達研究の進度と興味の増大 受験準備の低年齢化 東京大学教育人間学教授の汐見稔幸は、中央教育審議会において自信喪失と企業戦略の二点を主な要因に挙げている。 汐見によると、社会や育児環境の変化で「こうやっておけば大丈夫」と子供を放っておける時代はとうの昔に終わっており、また親自身も放任された世代ではないため、積極的に育児参加・教育指導をするべきだと考えている。しかし時代の流れが速く選択の幅が広い現代社会では確固とした育児目標が持てない親は、ガイドラインを失い不安な状態に在る。自己の育児能力に対する自信を喪失しており、親が育児の「先生」を必要としている状態である。 親の先生代わりとして登場したのが、育児のノウハウを作り上げ教育産業へ進出した民間企業であり、早期教育論や右脳・左脳論を掲げる出版・メディア業界である。知育教育に関して「これだけやっておけば大丈夫」という安心感を親に与えるだけでなく、健康・躾・情緒の発達、また親の悩みといった面まで、常に情報不足を感じている親のニーズを上手くすくいあげ、ビジネス・チャンスにしている。受験を経験した世代である親は、短期間で効率的に成し遂げるという早期教育に共鳴しがちである。とくに公文式や進研ゼミは受講経験のある親が多く、安心感を与える。
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