日本手話の社会学的性差
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/10 05:57 UTC 版)
言語学における性差とは、同じ言語の男性話者と女性話者の表現が客観的に見て明らかな相違を示すことを言う。 たとえば「朗読」の際,朗読者が男性であれ女性であれ,女性の発言は聴衆からは「女性的」と受け止められ,男性の発言の部分を朗読すると「男性の発言だ」と認められることが多い。 日本手話においても性差が認められる。しかし,近代になって音声語の世界がそうであるように「中性化」する傾向も見られる。 手話辞典などでは男性の用いている表現が「標準的」とみなされて掲載され,いわゆる「女性語」は排除される傾向がある。高齢の女性の手話使用者にこの形態(女性語の手話)を見いだすことができる。この女性語の手話表現はたいへん「優雅」で「美しく」「洗練されている感じ」に見え,世代を越えて「魅力的」と評価される。 また手話落語では複数の人物表現の要求から「女性的な」あるいは「男性的な」手話が必要とされ,今後の研究の資料となる可能性を持つ。 下の画像は「遠慮する」の女性語と“辞書型”。 女性語の「遠慮する」:両手を引っ込める仕草。手が上下に重なっている。 一般的な“辞書型”の「遠慮する」:男性,女性共に用いる。手は向かい合わせて30cmほど離れている。やはり両手を引っ込める仕草。最初の位置からまっすぐ両手を体に引き寄せる表現もある。 下の画像は「おいしい」という意味の三つの手話表現である。 おいしい:一般的な表現。男女ともに用いる。 うまい:男性が使う。女性も友人同士などに用いる。“フォーマルな”表現とはみなされない。くだけた感じ。 女性語の「おいしいわ」:男性サイナーは特別な時以外はほとんど使わない。女性的な表現と受けとめられる。
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