ほうしゃ‐のう〔ハウシヤ‐〕【放射能】
【放射能】(ほうしゃのう)
放射性物質が放出している放射線の強さ。
あるいは、ある物質が放射性物質であるという事実。
放射能の単位としては「ベクレル(Bq)」が使われ、ベクレルは放射性物質の質量に比例して増加する。
慣用表現として、安全限度を越えて人体に有害な放射能を持つ放射性物質そのものを指す語としても使われる。
実際には、単に放射能の強弱だけでは人体への被曝量は量れない。
これは例えていえば、単にマグニチュードから地震の被害総額や死傷者数が推定できないのと同様である。
例えば、発生する放射線が遮蔽の容易なα線であれば、体内に吸い込んでしまったか、よほど長時間か多量に触れていない限り実質的な被害はない。
一方、X線であれば相当に離れていても被曝したものとみなすべきだが、放射能の量に比べて実質的な被曝の深刻さにはかなりの余裕がある。
また、当然ながら事故に対する対策の度合いも被害を著しく増減させる。
「原子炉で事故が発生したので、取りうる最大限の安全措置を講じてから避難する場合」と、「紛失した放射性物質を、全く知識のない民間人が面白がって剥き出しの状態で近所に配り回った場合」とでは、明らかに後者の方が甚大な人的被害をもたらすものと推定できる。
放射能
英語表記:radioactivity,activity
放射能には、2つの意味があり、一つには、放射性核種(=放射性物質)がアルファ線、ベータ線またはガンマ線等の放射線を放出する性質またはその能力をいう。
他の一つは、放射性物質の量を表すもので放射能の強さを意味し、1秒間あたり1個の原子核が崩壊するとき放射能が1ベクレル(Bq)であるという。
この放射能の単位は、1896年にA.H.Becquerelがウラン塩が日光にさらされなくても長時間放射線を出すことを発見し、このベクレルの名前から付けられた。
旧単位のキュリー(Ci)は、1898年にM.Curieがこの現象にRadioactivityという名を付けたことからキュリー夫人の名前にちなんで付けられた。またピッチブレンドの研究ではじめに発見した核種を、故郷ポーランドにちなんで、ポロニウムと名づけた。
放射能(Bq)
放射能
放射能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/29 15:36 UTC 版)
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放射能は、単位時間に放射性崩壊する原子の個数(単位:ベクレル [Bq])で計量される。
なお、ある元素の同位体の中で放射能を持つ元素を表す場合は「放射性同位体」、それらを含む物質を表す場合は「放射性物質」と呼ぶのが適切である[注釈 1]。
概要

すべての物質は原子から構成される。さらに原子は負電荷を持つ電子と正電荷をもつ原子核[注釈 2]からなる。原子核の種類を核種という[注釈 3]が、核種によってはその量子力学的バランスの不釣り合いから、放射線(α線、β線、γ線など)を放出して放射性崩壊と呼ばれる崩壊現象を起こして他の核種に変化することがある。そのような放射線を放出して放射性崩壊を起こす性質のことを放射能 (radioactivity) と呼ぶ[注釈 4][注釈 5]。
元素の同位体で放射能を持つものを「放射性同位体」と呼び、放射性同位体を含む物質を「放射性物質」と呼ぶ。しかし、一般には放射能をもつあらゆるもの(同位体や物質、核種、放射線など)に対する総称として、表現としては不適切と承知の上で使用されたり、不適切であることを知らないまま使用されたりもする。
放射性崩壊
放射性崩壊(Radioactive decay)によって放出された粒子や電磁波は高いエネルギーを持つ。このエネルギーは崩壊エネルギーと呼ばれる。崩壊エネルギーは最終的に熱エネルギーに変質する[注釈 6]。
放射性崩壊の速さとしての放射能 (activity) とその単位
一般に放射性物質の単位時間あたりに放射性崩壊する原子の個数(放射性崩壊の速さ)を、その放射性物質の放射能(activity)と呼び、単位としてはベクレル(Bq [s−1])が用いられる[注釈 7][注釈 8]。またベクレル以前に用いられていた単位であり、現在補助単位として用いられているキュリー (Ci) と呼ばれる単位もある。
- ベクレル (Bq)
- 放射性物質が1秒間当たりに崩壊する原子の個数 (d/sec) の単位をベクレル(記号:Bq)と言う[注釈 9][注釈 10]。毎秒壊変(崩壊)数 (dps ; decay per second) などとも呼ばれていた[注釈 11][注釈 12]。
- キュリー (Ci)(補助単位、旧単位)
- 歴史的な理由から、放射性物質であるラジウム 1 g が1秒間に崩壊する原子の個数(d/sec , Bq)をもとに定められた放射能の単位をキュリー(記号:Ci)と言う[注釈 13]。1Ci(キュリー)はベクレル (Bq) を元に以下のように定められる。
- 1 Ci = 3.7×1010 Bq (370億ベクレル)
- また、1ベクレルは2.7×10−11キュリーである[7]。なお、キュリーは現在でも補助単位として使用されている。
放射能の測定
放射能(ベクレル)を直接測定することは難しいので、測定対象物から発する放射線の数やエネルギーを測定して、間接的に放射性物質の量(ベクレルと質量は対応する。比放射能も参照)を求める方法を採ることが多い。
- α線の測定には、液体シンチレーションカウンタや硫化亜鉛シンチレーション検出器、半導体検出器[8]が用いられる。
- γ線の測定には、Ge半導体検出器やNaIシンチレーションカウンタが用いられる。
- 表面汚染を検出するには、ガイガー=ミュラー検出器が用いられる。
放射線障害とその防護
放射線を浴びることを被曝という。被曝線量によっては放射線障害と呼ばれる影響が身体に現れることがある。被曝は大きく外部被曝と内部被曝に分類される。外部被曝を防ぐには、遮蔽、距離、被曝時間が重要である[注釈 14]。
脚注
注釈
- ^ 日常会話やマスコミ等において「放射能を浴びる」「放射能に汚染される」などの誤用が一般に定着し常用されている。ここでいう「放射能を浴びる」とは放射性物質から放出される放射線を浴びることを意味し、「放射能に汚染される」とは放射性物質に汚染される事を意味している。
- ^ なお、原子核は電気的に中性な中性子と正電荷を持つ陽子からなる。中性子と陽子を合わせて核子と呼ぶ。
- ^ あくまで原子核の種類を核種というのであって、単に核種といった場合は放射能を持たない安定同位体も含まれている[2]。
- ^ ウランやトリウムといった自然界に存在している原子核の放射能を天然放射能といい、核爆発や原子炉などの核反応で人工的に作り出されたプルトニウムやセシウムの一部の同位体などの放射能を人工放射能ということもある[3]。
- ^ 1896年にアンリ・ベクレルにより発見され、マリ・キュリーにより命名された[4]。
- ^ 原子力電池ではこの熱エネルギーを電気エネルギーに転換して利用する。
- ^ 放射能は壊変毎秒 (decay per second ; dps) または壊変毎分 (decay per minutes ; dpm) で表されることもある。
- ^ 放射能研究の当初は標準単位がなくアーネスト・ラザフォードも独自の単位を使用していた。そこで、標準となる単位の必要性を感じていたラザフォード自身が基準委員会の委員長となり、1910年の第一回国際放射線学会にて 1 g のラジウムが持つ放射能を単位とした1キュリー (Ci) が定義された。その後、1974年にSI単位として国際度量衡総会でベクレルを採択し1975年から国際標準として用いられている。日本においては法改正がなされた1989年からベクレルが公式使用されている。
- ^ たとえば、ある物質が 1 Bq の放射能を持つとは毎秒 1 個の原子が放射性崩壊により崩壊しているということである。
- ^ 1 kg あたりの放射能として比放射能という目安もある。
→詳細は「比放射能」を参照
- ^ ただし、原子核が崩壊する時に放射線を放射するが、1個の原子核が崩壊するときに1個の放射線が出てくるとは限らない。さらには、出てくる放射線の種類やエネルギーなどの確率が異なることがある。この確率を分岐比という[5]。
- ^ なお、ある物質が 1 モル (mol) だけあれば、それを構成する分子の個数はアボガドロ定数 NA = 6.02214129 × 1023 個である。
- ^ ただし、毎秒370億個のラジウム原子が崩壊(3.7×1010Bq)してアルファ粒子を放出するという値は古い値であり、現代における正確な値は3.61×1010Bq である。そのため、放射能の単位としてのキュリー (Ci) と放射性物質のラジウムの間に直接の関係はなくなってしまった。[6]
- ^ 放射線障害を防止するため、法令により、人体が被曝する放射線の量(線量)に限度が設けられており、放射性物質を取り扱う場合はこの値を超えないようにする必要がある。また放射性物質を取扱う施設の仕様、放射性物質の購入・保管・廃棄の管理、汚染の管理、管理被服や放射線防護服、保護具の着用も法令や施設の内規で定められている。
出典
- ^ 草間(2007) p. 99.
- ^ J.E.BRADY・G.E.HUMSTON著 『ブラディ一般化学 下』若山信行・一国雅巳・大島泰郎訳、東京化学同人、1992年、863頁。ISBN 4-8079-0348-9
- ^ 長倉三郎ほか編、『岩波理化学辞典 』、岩波書店、1998年、項目「放射能」より。ISBN 4-00-080090-6
- ^ 物理学辞典編集委員会編、『物理学辞典三訂版』、培風館、2005年、項目「放射能」より。ISBN 4-563-02094-X
- ^ 大塚徳勝・西谷源展 『Q&A放射線物理 改訂新版』、共立出版、2007年、152-155頁。ISBN 978-4-320-03453-2
- ^ 原子核工学(1955) p. 23.
- ^ 大塚徳勝・西谷源展 『Q&A放射線物理 改訂新版』、共立出版、2007年、152-155頁。ISBN 978-4-320-03453-2
- ^ “アルファちゃん”. 2012年10月22日閲覧。[リンク切れ]
参考文献
- 日本アイソトープ協会(編) 編『放射線・アイソトープ 講義と実習』丸善、1992年。
- Raymond L.Murray 著、杉本 朝雄(訳) 編『原子核工学』丸善、1955年。
- 草間 朋子(編) 編『看護実践に役立つ放射線の基礎知識―患者と自分をまもる15章』医学書院、2007年。
関連項目
外部リンク
放射能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 09:12 UTC 版)
グラシエール通りのアパートで新生活が始まった。マリはESPCIで研究を続けながら家事もこなした。裁縫は前から得意だったが、独身の頃はろくにやらなかった料理もどんどん腕を上げた。収入を助けるために中・高等教育教授の資格を取得した。1897年9月12日には長女イレーヌに恵まれ、その出産と育児には義父で医師のウジェーヌ・キュリー(フランス語版)が彼女を助けた。同年末には鉄鋼の磁化についての研究論文を仕上げた。 マリは夫と話し合い、博士号取得という次の段階へ進む検討に入った。2人はここで、1896年にフランスの物理学者アンリ・ベクレルが報告した、ウラン塩が放射する、X線に似た透過力を持つ光線に着目した。これは燐光などと異なり外部からのエネルギー源を必要とせず、ウラン自体が自然に発していることが示されたが、その正体や原理は謎のまま ベクレルは研究を放棄していた。マリとピエールは、論文作成のため この研究を目標に据えた。 ピエールが確保したESPCIの実験場は倉庫兼機械室を流用した、暖房さえない粗末なものだった。訪問したある学者が「ジャガイモ倉庫と家畜小屋を足して2で割ったような」と例える ほどだった。そこにピエールと兄のジャックが15年前に発明した光テコを利用する高精度の象限電位計と、ピエール開発の水晶板ピエゾ素子電気計など機器を持ち込み、ウラン化合物の周囲に生じる電離を計測した。そしてすぐに、サンプルの放射現象が実際のウラン含有量に左右され、光や温度など外的要因に影響を受けないという結果を得た。つまり、放射は分子間の相互作用等によるものではなく、原子そのものに原因があることを示す。これは、夫妻が明らかにしたものの中で最も重要な事柄である。次にマリは、この現象がウランのみの特性かどうか疑問を持ち、既知の元素80以上 を測定し、トリウムでも同様の放射があることを発見した。この結果から、マリはこれらの放射に放射能と、このような現象を起こす元素を放射性元素と名づけた。 彼女は発見した内容を即座に発表することを強く意識し、科学における先取権(英語版)を持つことに敏感だった。2年前にベクレルが自身の発見を科学アカデミーに速やかに公表せずにいたら、発明者の栄誉も、そしてノーベル賞もシルバナス・トンプソン(英語版)のものになっていた可能性があった。夫妻も彼と同じく素早い手段を取り、マリは研究内容を簡潔に要約した論文を作成し、ガブリエル・リップマンを通じて1898年5月12日に科学アカデミーへ提出した。しかし、夫妻はトンプソン同様、トリウムの放射能発見競争では敗れた。2か月前にベルリンでゲルハルト・カール・シュミット(英語版)が独自に発見・発表していたからである。
※この「放射能」の解説は、「マリ・キュリー」の解説の一部です。
「放射能」を含む「マリ・キュリー」の記事については、「マリ・キュリー」の概要を参照ください。
放射能
「放射能」の例文・使い方・用例・文例
- 許容範囲内の放射能とはどのくらいか
- 放射能の影響を調べる
- 事故のあと,彼らは放射能を調べた
- 放射能関連死はまだ報告されていない。
- 大量の放射能を放出する。
- この辺りは放射能の被害を受けている。
- 私の会社は食べ物に含まれている放射能数値を調べている。
- この辺は放射能で汚染されている。
- この辺りはいたるところで放射能に汚染されている。
- 放射能の流出
- 放射能で汚染された日本から逃げてきた。
- 私たちは放射能が健康に及ぼす影響に注意しなければなりません。
- 放射能の影響は皆無です。
- 放射能が原子力発電所から漏れた。
- 今回の雨には放射能はない。
- もう一つの面白いエネルギー源は、放射能の廃棄物質から取り出せる熱である。
- 放射能汚染.
- 放射能に被曝する.
- 放射能に被曝すること.
- 放射能漏れ.
放射能と同じ種類の言葉
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