かく‐さん〔クワク‐〕【拡散】
拡散 (かくさん)
拡散
diffusion | ||
物質を構成している原子が熱エネルギーによって移動する現象。
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diffusion treatment | ||
鉄鋼表面に持ち込まれた元素(例えば、浸炭、ほう化又は窒化などによって)を製品の内部に向かって拡散させることを意図して行う熱処理(又は操作)。 |
拡散
化学反応や酵素反応生体経路など: | 循環的光リン酸化反応 抑制因子 抗体価 拡散 拮抗阻害 接合因子シグナル伝達系 暗反応 |
拡散
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/19 05:31 UTC 版)
拡散(かくさん、英: diffusion)とは、粒子、熱、運動量、等が、散らばり、広がる、物理的な現象[1]。この現象は着色した水を無色の水に滴下したとき、煙が空気中に広がるときなど、日常よく見られる。これらは、化学反応や外力ではなく、流体の乱雑な運動の結果として起こるものである。
理論的背景
拡散は輸送現象の一種であり、拡散方程式で表現される。たとえば巨視的な分子の拡散はフィックの法則に、また巨視的な熱エネルギーの拡散はフーリエの熱伝導の法則に従う。電場中での電子の拡散は基本的にはオームの法則に従う。
いずれの場合にも、物理量の場に勾配があるときにのみ明らかな拡散が見られる。たとえば熱拡散では、温度が一定のときには熱は一方向とその逆方向に同じ速度で移動するから、全体としては変化は見られない。これらの流束密度(それぞれ分子、エネルギー、電子の流れ)は、勾配(濃度勾配、温度勾配、電位勾配(電場))に、物理的性質を示す係数(拡散係数、熱伝導率、導電率)をかけた値に等しい。
拡散現象の発展として、拡散が移流と同時に起きる現象(移流拡散方程式)や化学反応と同時におきる反応拡散系がある。
物質の拡散
物質の拡散とは、各分子(または原子)の熱運動に基づく物質の運動であり、固体、液体、気体、また超臨界流体中でも起きる。以下のような例がある:
- ヘリウムを詰めた風船は数日置くとわずかにしぼむ。これはヘリウム原子が風船の壁を通して拡散するからである。
- スパゲッティをゆでると水分子が内部へ拡散し、スパゲッティは膨張し柔らかくなる。
- におい物質は気体として拡散し部屋に充満する。
- 水中に入れた砂糖はかき混ぜなくてもゆっくり溶解し砂糖の分子が拡散して水全体に広がる。
物質拡散の理論的研究は以下のように発展した[2]。
- 拡散現象を初めて定量的に研究したのは、スコットランドの化学者トーマス・グレアムで、1829年に気体における拡散、1850年には液体における拡散の詳細な観察を報告している。「気体の拡散速度は分子量の平方根に逆比例する」というグレアムの法則、コロイド化学のパイオニアとして知られている。
- 1855年にアドルフ・オイゲン・フィックがフィックの法則を提唱した。フィックによる貢献は、拡散係数を定義し、実験データを簡潔に整理することを可能にしたことであると言われている。
- 1896年、ロバーツ・オーステンにより、固体内拡散の定量的研究がおこなわれた。彼はLe Chatelierにより1888年に発明された白金・白金ロジウム熱電対を用いて系の温度を一定に保ち、鉛中の金の高速拡散を測定した。
- 1920年、ゲオルク・ド・ヘヴェシーにより天然RIを用いた自己拡散(マックスウェルによって示唆された)の測定がなされた。
原子の拡散
固体中の原子が熱によってランダムに跳躍し、結果として正味の原子の移動が起きる過程である。例えば風船の中のヘリウム原子は風船の壁を通して拡散し逃げることが可能であり、そして風船は少しずつしぼむ。他の空気中の分子(たとえば酸素、窒素)は移動度がもっと低いので、風船壁を通しての拡散速度は低い。風船内にはヘリウムが詰められ、外気にはヘリウムはわずかしかないので、壁には濃度勾配ができている。移動速度は拡散係数と濃度勾配に支配される。カーケンドール効果も参照。
ブラウン運動
ブラウン運動は不連続的な粒子が液体中で拡散するときに起きる。熱エネルギーによるものであるから、運動が観測できる(