所属する種
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/10/09 10:01 UTC 版)
C. albipes (Zeller) A. H. Smith and Sing. 柄は子実体の内部に完全に包み込まれ、外からは見えないか、あるいは僅かに外部に露出して、未熟なクギタケに似た外観を呈することもある。子実体の表面は暗赤色で、迷路状に変形したひだを包む組織は厚くて黄褐色ないし帯橙黄褐色を呈し、アミロイド性を示すとともに、硫酸鉄(II)水溶液ですみやかに黒変、水酸化カリウム水溶液によって赤色ないし暗紫赤色となる。表層部の菌糸にはアミロイド性を示すものが存在するとともに、菌糸同士の間隙にはアミロイド性の顆粒が散在する。シスチジアはひんぱんに存在し、菌糸はかすがい連結を有する。コントルタマツ (Pinus contorta Douglas ex Loudon) あるいはポンデローサマツ (Pinus ponderosa Douglas ex C.Lawson) の樹下に発生し、北アメリカ(カリフォルニアおよびアイダホ)に産する。 C. asiaticus O.K. Miller クギタケに外観が類似するが、子実体はやや赤みが強い。ネパールから記載された種類で、ヒマラヤマツ (Pinus roxburghii Sargent) の林内に生える。 C. confusus Yan C. Li & Zhu L. Yang 次のC. flavipes に非常によく似ているが、子実体はより大きく、かさの中央部はあまり顕著に盛り上がることはない。また、柄の下半部は黄色を呈し、ひだの実質はアミロイド性を示さない点でC. asiaticus と異なっている。二葉針マツ類に属するウンナンマツ (Pinus yunnanensis Franch.) やPinus densata Mast.(中国南西部)・アカマツ (Pinus densiflora Sieb. and Zucc.)、あるいは五葉針マツ類のチョウセンゴヨウ (Pinus koraiensis Sieb. and Zucc.)・モミ属・トウヒ属などの混交林(中国北東部)に発生する。チベット産あるいは桂林産の標本は、かつてはそれぞれクギタケおよびフサクギタケと同定されていた。 C. flavipes (Peck) O. K. Miller かさの径1-4cm程度のわりあい小形の種類で、柄の基部の菌糸は淡黄色を呈する。子実体の組織内でのアミロイド性の菌糸密度がまばらであるため、ヨウ素溶液による反応が肉眼的には確認しにくい。子実体の構成菌糸にはかすがい連結を欠く。最初はオウギタケ属の一新種として記載され、のちにクギタケ属に移されたが、原記載には発生環境(周囲の樹種)に関する記述がなく、分類学的位置については疑問が持たれていた。その後の報告では、カラマツやニオイヒバ (Thuja occidentalis L.)・クロトウヒ (Picea mariana (Mill.) Britton, Sterns & Poggenburg)などの樹下に発生するとされているが、外生菌根をどの樹種と形成するかについては、まだ確定されていない。北アメリカおよびカナダに分布する。 C. filiformis Yan C. Li & Zhu L. Yang わりあい小さな子実体(かさの径1-6cm程度)を形成し、かさは放射状に配列した繊維紋あるいは多少ささくれた小鱗片をこうむり、幼時は帯オリーブ灰色ないし帯橙灰色であるが、成熟するとくすんだオレンジ色となる。また、乾燥標本では鈍いピンク色を帯びてくる。柄の基部をおおう菌糸も、生時には淡黄色であるが、乾燥するとピンク色に変わる。タカネゴヨウ (Pinus armandii Franch. var. armandii) の林内、あるいはタカネゴヨウとウンナンマツとの混交林内に発生する。中国から新種として記載された。 C. helveticus (Sing.) Moser 前種C. filiformis によく似ているが、かさに粘性を欠き、かさの表皮層を構成する菌糸がより幅広い点で異なる。ヨーロッパに広く分布し、オーストラリアにも帰化している。なお、日本でも、石川県と岐阜県とにまたがる白山山系のハイマツ (Pinus pumila (Pall.) Ragel)の林内で本種ではないかと考えられる菌が見出され、仮にタカネクギタケの名が与えられているが、正式な報告はまだなされていない。ちなみに、ヘルベティコン(別名ボビキノン3)は、本種から初めて見出された橙色のベンゾキノン系色素の一種で、子実体の生重量当りの含有率は 0.5パーセントにおよぶことがある。 C. jamaicensis (Peck) O.K. Miller 種小名が示すようにジャマイカ産の標本に基づいて新種記載された種であるが、北アメリカ南部の暖かい地方(フロリダ州やアラバマ州など)にも分布する。ひだのシスチジアは全面にわたって厚壁であり、かさの表皮層の菌糸は非常に細い。また、胞子は比較的短い(長さ20μmに達しない)。なお、若いものでは、肉にリンゴのようなにおいがあるといわれている。テーダマツ (Pinus taeda L.)・カリピアマツ (Pinus caribaea Morelet)・ダイオウショウ (Pinus palustris Mill.) などと生態的関係を有すると推定されている。なお、分子系統学的解析の結果によれば本種はC. vinicolor にきわめて近く、両者を同一種とみる見解もある。 C. leptocystis (Sing.) O. K. Miller フサクギタケに非常によく似ているが、かさの表皮の菌糸はほとんどヨウ素溶液に反応せず、モンチコラマツ (P. monticola Douglas ex D. Don) あるいはアメリカツガ(Tsuga heterophylla (Raf.) Sarg.)の樹下で採集される。 C. ochraceus(Kauffman) O.K. Miller 種小名は「黄褐色の」の意で、その名のとおり、かさは明るい帯橙黄色ないし淡黄褐色を呈するが、かさの中央部は次第に灰色ないし灰紫色を帯びるにいたる。柄の基部は濃いピンク色ないし赤紫色を帯び、子実体を構成する菌糸には、通常はかすがい連結を欠く(柄の基部の菌糸においてのみ認められる)。ラジアータパイン (Pinus radiata D. Don) やポンデローサマツ、あるいはPinus attenuata Lemmon(オレゴン州・カリフォルニア州などに分布するマツ属の一種)などの樹下に生える。なお、しばしばキヌメリイグチ (Suillus americanus (Peck) Snell)とともに見出されるという。北アメリカ・カナダおよびスペインから報告されている。 C. orientirutilus Yan C. Li & Zhu L. Yang クギタケに非常によく似ているが、かさの赤みがより強いことや、ウンナンマツの樹下で見出されることなどにおいて前者と異なる。また、柄の基部の菌糸が類白色あるいはサケ肉色を呈する(クギタケでは、クリーム色ないし淡黄褐色もしくは淡黄色)点でも区別される。種小名は東洋産のクギタケの意味である。中国に分布し、従来はしばしばクギタケと混同されていた。昆明では、食用菌として市場に出されているという。 C. papillatus (Raithelh.) Raithelh. もとはクギタケの一変種として記載された菌である。現時点ではいちおう独立種として扱われているが、後者の単なる変異とみる意見もある。 C. pseudotomentosus O.K. Miller & Aime これも外観はフサクギタケに似ており、全体が橙黄色から橙褐色を呈し、かさの表面や柄の下半部には柔らかなビロード状の触感がある。ひだは時に分岐あるいは吻合し、柄の基部の菌糸は淡いサケ肉色を呈する。菌糸の隔壁部にはかすがい連結を持たない。マツ属・モミ属・トウヒ属・コナラ属などが混じり合った林内に発生する。日本産の標本をもとに新種として記載された種類であるが、まだ和名は与えられていない。韓国や中国およびネパールからも見出されている。 C. pseudovinicolor O.K. Miller 種小名は「C. vinicolor もどきの」の意で、C. vinicolor と共通点が多いが、かさに粘性をまったく欠き、微細な密毛をこうむる点や、胞子紋が明らかに緑色を帯びる点で異なる。ベイマツ(Pseudotsuga menziesii (Mirb.) Franco var. menziessi)とポンデローサマツとの混交林内に産する。 C. purpurascens (Vassiljeva) Nazarova かさは最初は灰色ないし鉛灰色を呈するが、のちには紫色あるいは暗灰紫色を帯びてくる。柄は帯橙黄褐色を呈し、その基部の菌糸はサケ肉色または帯紫赤色である。また、菌糸には、ときおりかすがい連結を備えているのも特徴の一つである。ロシア東部から記載された種であるが、中国・ドイツおよびチェコスロヴァキアにも分布する。チョウセンゴヨウやPinus tabuliformis Carr.の林内に生えるが、チェコではスイスマツ (Pinus cembra L.) の樹下から記録されている。 C. roseolus Yan C. Li & Zhu L. Yang 柄の基部の菌糸がピンク色を帯び、子実体を構成する菌糸には、ごくまれにしかかすがい連結が見出されない点が特徴である。Pinus densata Mast.(中国特産) とコナラ属 (Quercus) との混交林内に生じ、中国(雲南省)から記録されている。 クギタケ C. rutilus (Schaeff. Fr.) O.K. Miller タイプ標本の産地はドイツのババリア地方である。帯紫褐色ないし黄褐色あるいは帯紫赤色で中央部に顕著な盛り上がりを備えたかさと、黄色もしくは橙黄色の柄を有し、柄の基部の菌糸はクリーム色または黄色を呈する(乾いてもピンク色を帯びない)点が特徴である。 詳細は「クギタケ」を参照 C. sibricus (Sing.) O.K. Miller これもフサクギタケに酷似するが、かさの表皮の菌糸はヨウ素溶液に反応せず(非アミロイド性)、かさの肉を構成する菌糸に比べて非常に細い。また、ひだのシスチジアは薄壁で、子実体の構成菌糸はかすがい連結を欠いている。柄の基部はサケ肉色を呈する。C. leptocystisとは、かさの表皮を構成する菌糸の末端が、しばしば丸みを帯びた円筒状に膨らむことで区別されている。五葉針マツ類に属するシベリアマツ (Pinus sibirica Du Tour) とモミ属との混交林に生える。ロシアおよび朝鮮半島に分布する。 C. superiorensis (Kauffman & A.H. Smith) Sing. 肉はアミロイド性でヨウ素溶液に反応して青変し(かさの表皮はアミロイド性を示さない)、かさの表面に厚い粘液層を持たない点ではChroogomphusの定義に合致するが、柄の上部に多数の微細な腺点(束状に群生する柄シスチジアの集合体)を備え、カラマツ林に発生するという。北アメリカに産する。 フサクギタケ C. tomentosus (Murr.) O.K. Miller かさは淡い橙褐色あるいは淡黄褐色を呈し、短くて柔らかい綿毛状をなすか、もしくは圧着した細かい鱗片をこうむる。かさの表皮やひだの実質を構成する菌糸は、ヨウ素溶液で著しく暗紫色に染まる性質(アミロイド性)がある。菌糸に多数のかすがい連結を有する点で、外観が類似するほかの種類と区別することができる。マツ属・モミ属・ツガ属・トガサワラ属などの林内地上に群生する。 詳細は「フサクギタケ」を参照 なおC. loculatus Trappe & O.K. Miller(旧フサクギタケ節-北アメリカ産)は、かさがほとんど展開せず、ひだが著しい迷路状を呈し、その実質は散開型の構造をなすことなく、不規則に錯綜した菌糸で構成される点を大きな特徴として記載されたもので、おそらく、ひだを露出しないままに胞子を成熟させる腹菌型ハラタケ類への進化の途上にあるものと推定されていた。前述したように、分子系統学的解析の結果に基づき、今日ではフサクギタケと同一種であるとされている。 C. vinicolor (Peck) O.K. Miller 肉を傷つけると赤紫色に変色し、菌糸はかすがい連結を欠いている。ラジアータパインやテーダマツ・バンクスマツ (Pinus banksiana Lamb.)・コントルタマツ・モンチコラマツ・レジノーサマツ (Pinus resinosa Aiton)・リギダマツ Pinus rigida Mill.)およびバージニアマツ (Pinus virginiana Mill.) の林内に発生し、ヌメリイグチ属の一種Suillus pungens A.H. Smith & Thiers (日本では未記録)に寄生する。かさの表皮・かさの肉・ひだの実質は、いずれも強いアミロイド性を示す。外観はC. ochraceus にも似るが、シスチジアはむしろ厚壁なものが多い。ツガ属やトガサワラ属・クロベ属・トウヒ属の林内やカラマツ林にも生えるという。 ケンロクエンクギタケ C. sp. 石川県金沢市の兼六園およびその周辺から報告されたものであるが、まだ学名は決定されておらず、和名も仮のものである。かさは黄褐色ないし橙褐色の地に暗紫色で繊維状の細かい鱗片をこうむり、その表皮の構成菌糸はアミロイド性を有する。シスチジアは薄壁で、アカマツ林内の地上に発生するという。菌糸のかすがい連結の有無については、記載が欠けている。
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