履行
履行とは、履行の意味
履行とは、行動を起こすことである。決めたことや言ったことなどを実際に行うことであり、実行をさす。英語では implementation(インプリメンテーション)や、遂行を意味する execution(エグゼクション)が主に使用される。目的や場面により異なり、義務や契約に対しては「実績」を意味する performance(パフォーマンス)や抵当に入れた財産の「回収」を意味する redemption(リデンプション)なども用いられる。履行(弁済)期限とは、債権者と債務者の間の契約で決められ債務者が履行をしなければならない期限のことである。損害賠償債務など成立時が履行期であるものや、当事者間の契約ではなく慣例や法律で期限が規定されるものもある。
契約履行とは、契約内容の実現により債権、債務が各々消滅することを指す。売買契約などで「商品の販売」に対し「代金を支払う」ことがこれにあたる。
債務履行とは、債務者が債権者に対し債務の主旨に基づいた給付を行うことである。債務者側から見た契約履行を意味する。債務者に正当な事由なく債務が不履行になった場合、履行の強制・契約の解除・損害賠償などの責任を負う。
履行の使い方としては「いよいよ契約が履行される日が来る」「代議士が公約を履行する」などの例文が挙げられる。
り‐こう〔‐カウ〕【履行】
弁済
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弁済(べんさい)とは、債務者(又は第三者)が債務の給付を実現すること。債権(債務)の本来的な消滅原因である。
- 民法について以下では、条数のみ記載する。
概説
弁済とは、債務者が債権の目的を実現させることである。
- 債権の目的が金銭の支払の場合は、金銭の支払
- 債権の目的が物の引渡しの場合は、物の引渡し
- 債権の目的が劇場への出演の場合は、劇場への出演
弁済は債権の消滅という視点から見た表現であり、債権の実現という視点に着目すると履行と表現される。また、弁済(あるいは履行)の対象となる物や権利に着目して給付という表現が用いられることもあるが、給付は弁済の内容である。債務の本旨に従った弁済がなされないことを債務不履行といい、この場合には債権は消滅しない(なお、約定債権においては債務不履行に基づく契約の解除などがあれば債権は消滅する)。
弁済の提供
弁済の提供の意義
弁済の提供とは、債務の履行について債権者の協力が必要で債務者単独では給付行為を完了させることができない性質のものである場合に、債務者が債務の本旨に従って給付の実現のために必要な準備を行い債権者の協力を求めることをいう[1]。債務の内容が一定の場所に建物を建てないといった不作為債務のように債務者の一方的履行行為で足りる場合には弁済の提供は問題とはならない[1]。
弁済の提供の要件
- 現実の提供または口頭の提供がなされること
- 債務の本旨に従った弁済の提供であること(給付の内容・時期・場所などが問題となる)
弁済の提供の方法
弁済の提供の方法には現実の提供と口頭の提供(言語上の提供)がある。
- 現実の提供
- 債務の本旨に従って現実に行う弁済の提供の方法を現実の提供といい、原則的な弁済の提供の方法である(493条本文)。何が現実の提供にあたるのかは債務の性質により決定される。
- 口頭の提供(言語上の提供)
- 弁済の準備をしたことを通知してその受領を催告する弁済の提供の方法を口頭の提供(言語上の提供)といい、債権者があらかじめ受領を拒んだ場合(受領期日の延期、契約の解除の拒絶、反対給付の不履行などの債権者の受領拒絶)、あるいは債務の履行について債権者の行為を要する場合(取立債務、登記債務、加工債務、場所や期日の指定のある場合など)に認められる弁済の提供の方法である(493条但書)。
弁済の内容
- 特定物の引渡し(483条)
- 債権の目的が特定物の引渡しである場合において、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。2017年の改正前の民法483条は「債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。」と定めていたが、債務者が契約時から引渡時まで保存義務を尽くさなかったときでも引渡時の現状で引き渡せば免責されるとの誤解を生む可能性があるなどの問題があり、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないとき」の文言の追加が行われた[2]。
弁済の時期
弁済すべき時期(履行期)については412条に規定されている。
弁済の場所
弁済の場所については484条1項に規定されている。
- 別段の意思表示がないときは、以下の例による。
- 特定物の引渡し:債権発生時にその物が存在した場所が弁済の場所となる。
- その他の弁済:債権者の現在の住所が弁済の場所となる(持参債務の原則)。
弁済の時間
弁済の場所については484条2項により「法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。」とされている。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で商法520条にあった定めを一般化するため新設された[2]。これにより商法の旧520条は削除されることとなった。
弁済の費用
弁済の費用については485条に規定されている。
弁済の提供の効果
債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる(492条)。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で履行遅滞を理由とする損害賠償責任を免れるという弁済の提供の効果が明確化された[2]。
弁済の主体
弁済の主体と第三者弁済
通常は債務者が弁済に当たるが、債務の弁済は、第三者もすることができる(474条1項)。これを第三者弁済という。
第三者弁済には以下の制約がある。
- 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者の場合
- 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない(474条2項)。2017年の改正前の民法473条2項に当たるが、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは弁済を有効とするただし書が追加され、債務者の意思に反するかどうか把握できない債権者の利益を保護している[3][2]。
- 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない(474条3項)。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で追加された規定で、債権者はその弁済が債務者の意思に反するかどうかを知り得ない場合があるため、債権者は原則として「弁済をするについて正当な利益を有する者でない」ことを理由に弁済を拒絶できるとし債権者を保護している[3][2]。
- その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をした場合
- その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、第三者弁済はできない(474条4項)。
- 2017年の改正前の民法の473条1項ただし書に当たる。第三者による弁済の禁止について当事者の意思を尊重する趣旨で、実務では債権管理が煩雑になるのを避ける目的で第三者による弁済を禁止した契約がみられる[2]。
弁済による代位
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する(499条)。債権者に代位した者は、債務者に対して求償をすることができる範囲内で、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる(501条)。
2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で旧499条と旧500条の条文を一つにまとめるなど規定が整理された[2]。
弁済受領者
無権限者に対する弁済
債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者を受領権者という(478条)。原則として弁済を受領する権限を有しない者に対してなした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ弁済の効力を有する(479条)。
ただし、債権者としての外観を信頼した弁済者を保護するため、受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する(478条)。弁済を受領する権限を有する債権者は、弁済を受領する権限を有しないにもかかわらず弁済を受領した債権の準占有者に対して不当利得返還請求をなすことができる。
2017年の改正前の民法478条では「債権の準占有者」という用語が使われていたが、判例で範囲が拡張され、用語自体もわかりにくかったことから、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で「受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するもの」に変更された[2]。
また、2017年の改正前の民法480条に受取証書の持参人に対する弁済の規定があった。通説・判例はこの規定が適用されるためには受取証書が真正なものでなければならないとし、偽造の受取証書の持参人に対する弁済は478条の債権の準占有者に対する弁済として保護される余地があるとしていた。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では民法480条の規定内容は478条に実質的に包含されていることから削除された[2]。
支払の差止めを受けた第三債務者の弁済
差押えを受けた債権の第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる(481条1項)。この場合、第三債務者からその債権者に対して求償権を行使することは可能である(481条2項)。
弁済の効果
基本的効果
債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する(473条)。2017年の改正前の民法には弁済の基本的効果の規定がなかったが、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で明文化された[3][2]。
なお、債務者でない者が債務者のために弁済をした者が弁済した場合は、その者が債権者に代位し(499条)、債務者に対して求償をすることができる範囲内で、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる(501条)。この場合については代位弁済を参照。
受取証書の交付と債権証書の返還
- 受取証書の交付
- 債権証書の返還
- 債権に関する証書がある場合において、弁済をした者が全部の弁済をしたときは、その証書の返還を請求することができる(487条)。
弁済として引き渡した物の取戻し
弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは、その弁済をした者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない(475条)。
前条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は、有効とする。この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、弁済をした者に対して求償をすることを妨げない(476条)。
なお、旧476条は「譲渡につき行為能力の制限を受けた所有者が弁済として物の引渡しをした場合において、その弁済を取り消したときは、その所有者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない」と定めているが、適用場面が限定的である上に、再度の債務の履行と引き渡した物の取戻しに同時履行関係が認められない不合理な規定であるという有力な批判があり削除された[2]。現476条は2017年改正の民法で旧477条から繰り上げられた。
預金又は貯金の口座に対する払込みによる弁済
債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる(477条)。実務上の運用をもとに2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で新設された[2]。
弁済の充当
債務者が同一債権者に対して同種の数個の債務を負担しており、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りない場合に、いずれの債務に弁済をあてるべきか(弁済の充当)が問題となる。弁済の充当は次の順序による。
なお、債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない(489条1項)。これは費用、利息又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用される(489条2項)。現489条は2017年改正の民法で旧481条から繰り上げられ若干文言が変更されている。
代物弁済
債権者との間で債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約することを代物弁済という。この場合には弁済と同一の効力を有し債権は消滅する(482条)。代物弁済は有償契約であるから目的物の瑕疵につき担保責任が問題となり、また、当事者間で目的物に瑕疵がある場合には代物弁済による債務の消滅の効果を否定して本来の債務を復帰させる特約がなされることもある。
弁済供託
債権者が弁済の受領を拒むとき及び弁済を受領することができないとき、弁済者が過失なく債権者を確知することができないときには、弁済者は債権者のために弁済の目的物を供託所に寄託してその債務を免れることができる(494条)。これを供託(弁済供託)という。
出典
関連項目
外部リンク
履行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/15 14:27 UTC 版)
「国際連合安全保障理事会決議1441」の記事における「履行」の解説
決議の採択後の11月11日には国民議会でこの国連決議の拒否が採択され、サッダーム・フセイン大統領に最終決定をゆだねる動議を全会一致で採択した。11月13日にサッダーム・フセイン大統領はこの決議を受け入れることを表明した。 11月末には国連査察団のイラク国内立ち入りが行われた。国際連合監視検証査察委員会のハンス・ブリックス委員長と国際原子力機関のモハメド・エルバラダイ事務局長が先遣隊としてイラクに入国し、同月25日から査察団が入国、27日から査察が開始された。当初は少人数で行われていたが、12月に入ると85から100人規模に拡大された。しかし査察対象施設は1,000以上あったため、決議で定められた2003年1月27日までの最終報告書の提出は不可能であった 12月7日には決議に基づいてイラク政府が大量破壊兵器に関する申告書を提出したが、この申告書は1万3,000ページにのぼった。アメリカ合衆国のパウエル国務長官は即座にこれをイラク側の時間稼ぎだと批判し、その2週間後である12月19日には、生物兵器や化学兵器の申告がないとして決議で示された「重大な違反」であるとした。この翌日にブリックス委員長は、申告書には新しい情報が記載されていないとしてイラク政府を批判したものの「重大な違反」であるとの認識は示さなかった。 12月27日にはイラク人科学者へのインタビューが開始された。翌28日にはイラク政府より500人以上にのぼる大量破壊兵器関連の科学者・技術者リストが提出された。 2003年1月9日には査察団による安全保障理事会への中間報告が行われた。この中でブリックス委員長は、イラク政府が提出した申告書の内容が不満であるとしながらもイラクが大量破壊兵器を保有しているという確証を得られなかったとした。 最終報告書の提出期限である1月27日が迫るなか、1月15日には空の化学兵器弾頭11基が発見され、その4日後にはさらに4基が発見された。国際連合監視検証査察委員会の設置が定められた国際連合安全保障理事会決議1284では国際連合監視検証査察委員会の活動は120日とされており、これに従えば3月末までは査察活動を行うことが出来たが、アメリカは新しい決議である1441に従うのは当然であるとして1月27日までの最終報告を主張した。これにはフランスやロシア、ドイツが抵抗したが、最終報告は1月27日に安全保障理事会に提出された。 しかし、査察団は最終報告後もイラク国内で査察を行っていた。2月10日にはフランス、ロシア、ドイツは査察継続を求める共同宣言を行い、これを受けて査察団は2月14日に追加報告を国連で行った。この報告後、安全保障理事会では理事国の演説が行われ、アメリカ、イギリス、スペイン以外のすべての理事国が査察の継続を主張した。 3月7日には査察団による再追加報告が行われ、査察継続が求められたが、3月17日、アメリカは外交交渉の打ち切りを宣言し、同日夜にはイラクに対して軍事攻撃を開始する旨の最後通告を行ったため、査察団はイラク国外に退去した。
※この「履行」の解説は、「国際連合安全保障理事会決議1441」の解説の一部です。
「履行」を含む「国際連合安全保障理事会決議1441」の記事については、「国際連合安全保障理事会決議1441」の概要を参照ください。
履行
「履行」の例文・使い方・用例・文例
- 破約,婚約不履行
- 契約を履行する
- 法律を字義どおりに履行する
- 我が社の経営状況が悪化したために、債務不履行リスクが高くなった。
- ベンチャー企業はしばしば買戻条項を履行できずにいる。
- 保証人は検索の抗弁権を行使して保証債務の履行を拒否した。
- 履行引受は、債権者の同意を必要としません。
- 履行勧告は、その履行に対して強制力を持たない。
- もし義務者が履行命令に従わない場合、罰金を払うよう命じられる。
- もし法的な要件が履行される場合は
- 債務不履行率は再び増加している。
- それは借金により債務不履行になる。
- 今回の支払で全ての支払履行は完了したものとし、今後の追加支払請求は無効とする。
- 年末までに契約を履行しなければならない。
- この契約は当事者全部が履行すべきものである。
- この契約は当事者全部が履行すべきものである.
- 婚約不履行で人を訴える.
- 債務不履行に陥る.
- 6億ドルの債務の履行を怠る.
- (真意・精神を無視して)法文[契約]の条件を字義どおりに履行する.
履行と同じ種類の言葉
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