大陸の区分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 02:39 UTC 版)
各大陸が水域によって区分されているという理想的な基準は、歴史的そして現実的には当てはまっていないと見なされている。この基準に合致するものは、かろうじてオーストラリア大陸と南極大陸のみである。いくつかの大陸は完全に独立した陸塊ではなく「そこそこの大きさの地面」と認識されている。アジアとアフリカはシナイ半島でつながり、南北アメリカの間にはパナマ地峡がある。どちらの地峡も大陸と比べれば非常に狭いもので、しかも人工の運河(スエズ運河とパナマ運河)によって両大陸は切り離されていると言うこともできる。 一方、ユーラシア大陸をアジアとヨーロッパに分ける考えは異例であり、そこには水域は何もない。この点からユーラシア大陸を含む6大陸という数え方が生まれている。この地理的な考えはヨーロッパとアジアをまたぐロシアではユーラシア主義思想とも結びつけられ、日本でもこの考えが主流である。それに対し2つの大陸に分ける考えはヨーロッパ中心主義の残滓もあり、「物理的、文化的そして歴史的な多様性では、中国やインドはヨーロッパの個別国ではなく全体に匹敵する。もしフランスと比類するならば、インド全体ではなくその中の一州、たとえばウッタル・プラデーシュ州を並べる方が完全ではないとしてもより適切である」という意見もあるが、歴史的また文化的な理由からヨーロッパではユーラシアを2大陸に分ける考えが本流である。 陸峡を挟む南北アメリカ大陸はユーラシアよりも明瞭に区分されるが、それでも以前はまとめて1つの大陸として認識されており、第二次世界大戦以前のアメリカ合衆国でも支配的だった。現在でも米州機構にこの概念が残っている。この、アメリカ大陸を1つとみなす考えは、スペインやポルトガルおよびラテンアメリカ諸国の概念から来ている。しかし19世紀ごろ、アメリカ合衆国との混同を避けるために使われ始めたアメリカ州(Americas)という言葉に見られる複数形から示唆されるように、このころには新世界は2つの大陸で成り立っているという認識が広まった。この区分は近代オリンピックのシンボルマークに使われており、大陸を表す環は南極を除き5つがデザインされている。 もし大陸の定義を離散的な陸塊とし、接触する場所がある陸地はまとめて考えるとするならば、アジア・アフリカ・ヨーロッパはアフロ・ユーラシア大陸という呼称のように1つの大陸と見なさなければならなくなる。この場合、南北アメリカもひとつと数えられ、地球の大陸は4つとなる。さらに、更新世の氷期によって海水準変動が起こっていた時期を考えれば、より広い範囲で大陸棚を介した陸橋で大陸はつながっていた。この時期、ニューギニアはオーストラリア大陸の一部であり、アメリカ大陸とアフロ・ユーラシア大陸はベーリング海峡を通じて連なっていた。グレートブリテン島など大陸周辺の島もことごとく大陸と一体化していた。この時代に冒頭の大陸と定義できる陸地は3つだけだった。
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