大域的幾何と位相幾何
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 05:20 UTC 版)
「リッチテンソル」の記事における「大域的幾何と位相幾何」の解説
ここに、正のリッチ曲率を持つ多様体に関する大域的な結果の短い一覧を示す。リーマン幾何学の古典定理も参照されたい。簡潔に言うと、リーマン多様体の正のリッチ曲率は強い位相幾何的帰結を持つのに対して、(三次元以上では)負のリッチ曲率は何らの位相幾何的含意も持たない。(リッチ曲率は、リッチ曲率関数 Ric(ξ, ξ) が非零接ベクトル ξ の集合に対して正であるときに正であるという。)いくつかの結果は擬リーマン多様体についても知られている。 マイヤーズの定理(英語版)によれば、完備リーマン多様体においてリッチ曲率が下界 (n − 1)k > 0 を持つならば、多様体の直径は ≤ π/√k を満し、等号は多様体が定数曲率 k の球と等長のときだけに成り立つ。被覆空間にまつわる議論から、正のリッチ曲率を持つ任意のコンパクト多様体は有限基本群を持たなければならないことが導かれる。 ビショップ・グロモフの不等式(英語版)は、完備 m-次元リーマン多様体が非負のリッチ曲率を持つならば、球の体積は半径を共通にする m-次元ユークリッド空間上の球以下となる。さらには、 vp(R) を多様体上の p を中心とする半径 R の球の体積であるとし、V(R) = cmRm を m-次元ユークリッド空間上の半径 R の球の体積とするなら、関数 vp(R)/V(R) は非増加関数である。(最後の不等式は、一般の下界に一般化することができ、これがグロモフのコンパクト性定理(英語版)の証明の鍵となる。) チーガー・グロモールの分割定理(英語版)によれば、 Ric ≥ 0 を満たす完備リーマン多様体が「直線」、すなわち d(γ(u), γ(v)) = |u − v| が全ての v , u ∈ R {\displaystyle v,u\in \mathbb {R} } について満たされるような測地線 γ を持つとき、この多様体は直積空間 R × L {\displaystyle \mathbb {R} \times L} に対して等長となる。結果として、正のリッチ曲率を持つ完備多様体は多くとも一つの端しか持たないことがわかる。この定理は、いくつか追加で仮定を置けば、非負のリッチテンソルを持つ完備ローレンツ多様体(計量の符号が (+−−...) となっている多様体)についても成り立つ (Galloway 2000)。 これらの結果は、正のリッチ曲率は強い位相幾何的帰結を持つことを示している。対照的に、曲面の場合を除いて負のリッチ曲率には位相的含意が全く知られていない。Lohkamp (1994) によれば、次元が2より大きな任意の多様体でリーマン計量が負のリッチ曲率を持てることが示されている。(曲面の場合、負のリッチ曲率は断面曲率が負であることを意味する。しかし、重要なのはむしろこれがより高次の場合では全く通用しないことである。)
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