命題論理との差異
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 04:10 UTC 版)
命題論理では文を構成する最も基本的な命題(原子命題)は命題記号と呼ぶ一つの記号によって表していた。それに対し、一階述語論理においては、最も基本的な命題は原子論理式と呼ぶ記号列によって表す。原子論理式とは述語記号( P {\displaystyle P} )と呼ぶ記号と、項( t 1 , ⋯ , t n {\displaystyle t_{1},\,\cdots ,\,t_{n}} ) と呼ぶものの列、からなる P ( t 1 , ⋯ , t n ) {\displaystyle P(t_{1},\,\cdots ,\,t_{n})} という形の記号列であり、これは個体の間の関係を表すものである。 命題論理にない一階述語論理のもう一つの特徴は量化 (quantification) である。例えば、定言的命題論理の範囲において、次のような推論の妥当性を扱うことはできない: すべての人間は死ぬ。 ソクラテスは人間である。 したがってソクラテスは死ぬ。 一階述語論理では、このような「すべての…について」という表現や、また「ある…について」といった表現を扱えるように、全称量化記号 (universal quantifier) と呼ぶ記号 ∀ {\displaystyle \forall } ; と存在量化記号 (existential quantifier) と呼ぶ記号 ∃ {\displaystyle \exists } ; を新たに導入する。これらを用いると「すべての x {\displaystyle x} について ϕ {\displaystyle \phi } ; である」という命題は ∀ x ϕ {\displaystyle \forall x\phi } ; 、「ある x {\displaystyle x} に対して ϕ {\displaystyle \phi } ; である」は ∃ x ϕ {\displaystyle \exists x\phi } ; と表される。これらの記号を用いると上の三つの文はそれぞれ、例えば、 ∀ x [ P ( x ) ⇒ Q ( x ) ] {\displaystyle \forall x[P(x)\Rightarrow Q(x)]} P ( a ) {\displaystyle P(a)} Q ( a ) {\displaystyle Q(a)} のように記号化することができる。ここで、 P ( x ) {\displaystyle P(x)} と Q ( x ) {\displaystyle Q(x)} はそれぞれ「 x {\displaystyle x} は人間である」「 x {\displaystyle x} は死ぬ」を表し、 a {\displaystyle a} はソクラテスを表すことを意図している。上の日本語による定言命題推論の妥当性は不決定的だが、仮言命題推論化されるならば、一階述語論理において Q ( a ) {\displaystyle Q(a)} が { ∀ x [ P ( x ) ⇒ Q ( x ) ] , P ( a ) } {\displaystyle \{\forall x[P(x)\Rightarrow Q(x)]\,,\,P(a)\}} の論理的帰結 (logical consequence) であるという事実に反映される。一般に、論理式 ϕ {\displaystyle \phi } ; が論理式の可算集合 Σ {\displaystyle \Sigma } ; の論理的帰結であるとは、 Σ {\displaystyle \Sigma } ; の論理式のすべてをみたす解釈は必ず ϕ {\displaystyle \phi } ; もみたすこととして定義され、これは、あるいくつかの前提からある結論が論理的に導かれるという概念の数学的な定式化である。 命題論理においては、論理式の解釈は各命題記号に対する真理値 0 , 1 の割り当て与えられた。これに対して、一階述語論理の論理式の解釈は構造 (structure) と呼ばれ、これは領域 (universe, domain) と呼ぶ空でない集合と、それぞれの非論理記号(述語記号・関数記号・定数記号)の "意味" の割り当てからなる。領域とは「すべての x {\displaystyle x} について」といったときの x {\displaystyle x} が動きうる値の範囲である。一階述語論理の論理式は構造を一つ与えることによって真偽が決定される。 二階述語論理(およびそれ以上の高階述語論理)では、述語および関数に対する量化を導入する。
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