同素体
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同素体(どうそたい、英語: allotrope、英語: allotropism)とは、同一元素の単体のうち、原子の配列(結晶構造)や結合様式の関係が異なる物質同士の関係をいう。同素体は単体、すなわち互いに同じ元素から構成されるが、化学的・物理的性質が異なる事を特徴とする。
- ^ ベルセリウス著(田中豊助、原田紀子訳)『化学の教科書』p30 内田老鶴圃 ISBN 4-7536-3108-7
- ^ Jensen W.B., "The Origin of the Term Allotrope", Journal of Chemical Education, 2006, 83, 838-9
- ^ http://www.iop.org/EJ/article/0305-4608/15/2/002/jfv15i2pL29.pdf?request-id=AFlRqDDL3BGhbarg2wi7Kg
同素体
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炭素は4本の共有結合ができ、結合の状態によって数種類の同素体を形成する。炭素同士がsp2混成軌道を形成し、正六角形の平面構造を取った膜が重なったものがグラファイトになる。2009年、グラファイトの基本構造である薄いグラフェンは非常に高い硬度を持つことが判明した。しかし、グラファイトから薄いグラフェンを経済的に剥ぎ取る技術は確立されておらず、事業性の確立は今後の開発を待つ必要がある。また、炭素がsp3混成軌道を形成して正四面体の立体結晶構造を取った巨大分子となったものがダイヤモンドとなる。同じ炭素の同素体であるが、前者は電気伝導性が高く軟らかい、後者は絶縁体で硬いなど、まったく異なる性質を示す。ダイヤモンドが炭素の同素体であることを示したのはラヴォアジエである。実験内容は、密閉容器に納めたダイヤモンドを虫眼鏡により燃焼させると二酸化炭素だけが生成されるというものである。 木炭やススなどは結晶構造を持たないアモルファス状態であり「無定形炭素」と呼ばれる。この種類には、工業的に重要な炭素繊維や活性炭、コークスなども含まれる。 以上3種は古くから知られていたが、20世紀後半以降、球状のグラフェンであるフラーレンや多分野での開発が進んでいるカーボンナノチューブ、カーボンナノバッド、カーボンナノファイバー(英語版)などや、ロンズデーライトやガラス状炭素、カーボンナノフォーム、カルビンなどの複雑な構造を持つ炭素の同素体が多数発見されている。 a. ダイヤモンド 立方晶系の結晶。産出量は少ないが産業的に利用可能な程度には豊富。宝石として、また工業用のカッターなどに利用。現在では合成ダイヤモンドの開発技術も確立され、実用化されている。 b. グラファイト(黒鉛、石墨) 六方晶系の結晶であり、炭素の結晶としてはもっとも一般的。板状のグラフェンが多数重なった構造で、平面同士の結びつきは弱く剥がれやすい。日常的なものとしては鉛筆の芯などに用いられる。 c. ロンズデーライト(六方晶ダイヤモンド) 六方晶系の結晶。隕石中にきわめて稀に見られる。今のところ非常に小さな結晶しか発見されていない。純粋なものはダイヤモンドに近い硬度をもつと推測される。 d, e, f. フラーレン 炭素原子からなるクラスターの総称。天然にはきわめて稀に存在するとみられる。図dはいわゆるサッカーボール型のC60で「バックミンスターフラーレン」と呼ばれる。図eはC540で、図f はC70である。 g. 無定形炭素 (a)と(b)の2種の構造が混在した状態(非晶質)。木炭や活性炭などの一般的な炭は、これに不純物が含まれたものである。 h. カーボンナノチューブ グラフェンが円筒状に巻かれた構造のもの。同じ重量の鋼鉄と比較すると、80倍の強度を持ちながら60度ほどの屈曲にも耐える弾力性を持つ。1層のものから多層構造を持つものがある。これに近いものとして、筒の一方が閉じた角状のものをカーボンナノホーンと呼ぶ。
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同素体
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詳細は「ホウ素の同素体」を参照 ホウ素には7つの同素体が存在しており、それらは結晶およびアモルファスの構造をとる。よく知られているものにα-菱面体、β-菱面体、β-正方晶があり、特殊な条件下ではα-正方晶やγ-斜方晶のような形もとる。アモルファスの同素体には、微細な粉末状のものとガラス状のものの2つが知られている。標準状態において最も安定なものはβ-菱面体晶であり、ほかの同素体は全て準安定状態である。少なくとも14以上の同素体が報告されているが、前述の7つ以外の同素体は弱い論拠に基づいたものであったり実験的に立証できなかったりするため、それらは単一の同素体ではなく複数の同素体の混合物や不純物によって安定化した構造であると考えられている。 層αβγβ結晶形菱面体晶 菱面体晶 斜方晶 正方晶 原子数/単位格子12 105‒108 28 192 密度/(g/cm3)2.46 2.35 2.52 2.36 ビッカース硬度/GPa42 45 50–58 体積弾性係数/GPa224 185 227 バンドギャップ/eV2 1.6 2.1 ~2.6
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いくつかの元素では、同じ元素の同素体であっても異なる性質(金属的、半金属的もしくは非金属的)を示すことがある。例えば、炭素の同素体のうち、ダイヤモンドは明らかに非金属であるが、グラファイトは半金属に特有の限定的な電気伝導度を示す。リン、セレン、スズおよびビスマスも金属もしくは半金属もしくは非金属的なふるまいを示す同素体を有している。そのため櫻井らは、半金属性は元素に固有のものではなく単体に固有の性質であると注記した。
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地球上でのおもな同素体は酸素分子O2であり、その結合長は121 pm、結合エネルギーは498 kJ/molである。酸素分子は生物の複雑な細胞呼吸に使われている。 三酸素(O3)はオゾンとしてよく知られる非常に反応性の大きい単体の気体で、吸入すると肺組織を破壊する。オゾンは高層大気において、酸素分子が紫外線によって分裂した酸素原子と別の酸素分子が結合することによって生成している。オゾンは紫外領域を強く吸収するため、高層大気にあるオゾン層は地球を放射線から保護するシールドとして機能している。地表近くでもオゾンは生成しているが、これは自動車の排気ガスなどとして生成されている大気汚染物質である。 準安定状態分子である四酸素(O4)が2001年に発見されたが、これは固体酸素の6種の相のうちの1種として存在が仮定されていた。2006年にこの相が証明され、O2を20 GPaに加圧することで合成されたが、実際には菱面体晶のO8クラスターであった。このクラスターはO2やO3よりも強力な酸化剤であるため、ロケットの推進剤としての用途が考えられている。1990年には、固体酸素に96 GPa以上の圧力を与えると金属状態となることが分かり、1998年にはこの相を超低温条件に置くことにより超伝導となることが発見された。
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同素体
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硫黄はカテネーションを生じやすく、30以上の同素体を形成する。この数はほかの元素に比べてもかなり多い。通常、天然に見られる同素体は環状のS8硫黄である。 常温、常圧で固体であるS8硫黄は3つの結晶形を持つ。 α硫黄(斜方硫黄) - 融点112.8 °C、比重2.07、淡黄色斜方晶 β硫黄(単斜硫黄) - 融点119.6 °C、比重1.96、淡黄色単斜晶 γ硫黄(単斜硫黄) - 融点106.8 °C、比重1.955、淡黄針状晶 いずれも、S8硫黄を単位構造とする結晶であるが、95.6 °C以下では斜方硫黄が安定であり、それ以上の温度では単斜硫黄系が安定である。また、250 °Cまで加熱すると50万個以上の硫黄原子がつながった直鎖状硫黄(Sn)となる。これはゴム状硫黄またはプラスチック硫黄とも呼ばれる。ゴム状硫黄は黄色を示す。純度の高い特級試薬を用いて実験を行うと黄色いゴム状硫黄が得られるが、実際は黒褐色のゴム状硫黄が得られることも多い。
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詳細は「プルトニウムの同素体」を参照 常圧下でもプルトニウムは6種の同素体を持ち、それぞれ結晶構造や密度が大きく異なる。密度は最大のα相と最小のδ相では25 %以上も違う。特に、δ相は負の熱膨張を起こすという特異的性質を持つ。 プルトニウムの同素体相結晶構造密度/(g/cm3)安定な温度範囲α単斜晶(単純格子) 19.86 <115 °C β単斜晶(体心格子) 17.70 115 – 185 °C γ斜方晶(面心格子) 17.14 115 – 310 °C δ立方晶(面心格子) 15.92 310 – 452 °C δ′正方晶(体心格子) 16.00 452 – 480 °C ε立方晶(体心格子) 16.51 480 – 640 °C 様々な同素体を持つということが、プルトニウムの機械加工を非常に難しいものにしている。加工時に加わる熱や圧力によって、相が非常に容易に変わってしまうからである。このような複雑な相変化をする原因は完全には解明されていない。最近の研究では、相変化の精密なコンピュータモデルが着目されている。 兵器への利用においては、相の安定性を増し加工性と取り扱いを容易にする目的で、他の金属と合金にして用いられる(数%のガリウムを加えるなど。「プルトニウムガリウム合金」参照)。核兵器においては、プルトニウムのコアを爆縮するための衝撃波も相変化の原因になる。この場合には通常のδ相からより密度の高いα相に変化するので、超臨界状態を実現するのに大いに助けになる。
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白リン(黄リン)・赤リン・紫リン・黒リンなどの同素体が存在する。+III(例:六酸化四リン、P4O6)、+IV(例:八酸化四リン、P4O8)、+V(例:五酸化二リン、P2O5)などの酸化数をとる。 リンは数種類の同素体をもつことが古くから知られている。白リン以外の同素体は、安定でほぼ無毒である。 白リン(P4)は四面体形の分子からなり、比重が1.82、融点が44.1 °C、沸点が280 °Cの、常温常圧で白色ロウ状の固体である。発火点は約44 °Cで些細なことで自然発火するため、水中で保存する。空気中で室温でも徐々に酸化され、熱および青白い光を発する。現在、燐光は別の発光現象の意味で用いられているが、その語源でもある。ベンゼン、二硫化炭素(CS2)などの有機溶媒によく溶ける。強い毒性を持ち、ニンニクのような臭いがある。日光にあたると赤リンに変化する。 黒リンは比重が2.69の固体である。黄リンを約12000気圧で加圧し、約200 °Cで加熱すると得られる。リンの同素体中でもっとも安定である。半導体であり鉄灰色の金属光沢を持ち、β金属リンとも呼ばれる。空気中ではなかなか発火しない。 紫リンは比重が2.36の固体である。褐色を帯びた暗紫色で金属光沢を持ち、α金属リンとも呼ばれる。白リンを鉛に溶かして密閉して加熱し、再結晶させることで得られる。電気伝導性は小さい。1865年にヴィルヘルム・ヒットルフが発見したのでヒットルフの金属リンと呼ばれることもある。 赤リンは比重が2.05~2.34。紫リンを主成分とする白リンとの混合体で、融点590 °C、発火点260 °Cの赤褐色の粉末である。二硫化炭素に不溶。マッチの材料に使われる。密閉した容器で白リンを約250 °Cで加熱すると得られる。 紅リンは比重が1.88の深紅色の粉末である。微細な粒子からなる赤リンと考えられている。 二リン(P2、P≡P)は、リン同士が三重結合して二原子分子になったものである。 結晶構造 白リンの結晶構造 黒リンの結晶構造 黒リンの結晶構造
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「同素体」の例文・使い方・用例・文例
- 同素体の、同素体に関する、または、同素体を見せている
- 炭素と硫黄とリンは、同素体の要素である
- 石墨とダイヤモンドは炭素の同素体である
- 4つの同素体を持つ金属元素
- 磁性を帯びた鉄の同素体
- 非磁性であること除き、アルファ鉄と同じ鉄の同素体
- オーステナイトの基礎である鉄の非磁性同素体
- セ氏1403度から融点(1532度)の間の温度で安定する鉄の同素体
- 黄燐という,燐の同素体
- 斜方硫黄という,硫黄の同素体
- 錫ペストという,低温における錫の同素体の転移現象
- 白燐という,燐の同素体
- 赤燐という,燐の同素体
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