双眼鏡の性能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/20 03:11 UTC 版)
ポロプリズムやダハプリズムが利用されたプリズム双眼鏡の主要性能は、7x50というように表記される倍率と対物レンズ口径、および視野角(視界)で表現される。写真の例の場合、倍率は7倍、対物レンズ口径は50mm、視野角(視界)は1000ヤード先の対象物において横幅372フィートに相当する角度、となる。また、光路内に空気ガラス界面が多いプリズム双眼鏡では、レンズやプリズム表面の反射防止コーティングの有無が性能に大きく影響する。現在では反射防止コーティングが施されている製品がほとんどであるが、反射防止コーティングが普及しつつあった第二次大戦から戦後まもなくの間は、写真の例のように性能諸元と共にCoated Opticsと記載されることも多かったようである。 倍率 倍率はどのくらい大きく見えるか、の指標であるが、7倍の場合、70m先の被写体が10mの距離から見た大きさに見える、ということになる。オペラグラスの場合は3倍から4倍、普通の手持ち双眼鏡の場合は5倍 - 10倍が一般的である。倍率が高くなるに従い手振れの影響を大きく受け、10倍程度が手持ち使用の限界とされることが多い。雑誌や新聞の広告にあるような、素人向けに高倍率を特にアピールした双眼鏡では、ひとみ径が小さく視野角が狭く、さらに手ぶれも大きくなるので実際にはとても使いにくい。 対物レンズ口径 対物レンズ口径は双眼鏡の視野の明るさに影響する。星像など点光源の明るさは対物レンズ口径の二乗に比例するが、より一般的な、面積を持つ対象物の明るさは、対物レンズ口径を倍率で割った射出ひとみ径 (en)の二乗に比例する。射出ひとみ径の二乗値は、メーカーによっては「明るさ」としてカタログ表記されている。射出ひとみとは双眼鏡を眼から離し対物レンズを明るい方に向けたとき接眼レンズに写る明るい円である。人間のひとみ径は暗夜でも7mm程度であり、7mm以上の大きさの射出ひとみ径は無意味とされており、7mmより大きい射出ひとみ径を持つ双眼鏡は極めて少ない。船舶用など夜間業務用には最大限の射出ひとみ径である7mmの射出ひとみを持つ7x50などの双眼鏡が、天体観測用としては射出ひとみ径が5-7mm程度のものが推奨されることが多い。天体観測用の場合は対物レンズ口径の絶対値も重要であり、50mm以上の口径が好まれる。人間のひとみ径は明るい屋外では2mm程度であるため、屋外や明るいステージなどのみが観賞対象である場合には射出ひとみ径の大きさを必要以上に気にする必要はないが、一般的には4mm程度以上あった方が無難と考えられている。 視野角(視界) 倍率の異なる双眼鏡間で、見える対象物の範囲(1000ヤード先で372フィート、など)が等しい場合、倍率が高い双眼鏡の方が双眼鏡を覗いた際の見かけの視野角が広くなる。このため視野角は、実際の見える対象物の範囲を表す実視野角と、覗いた際の広がりを表す見かけ視野角とに分けて記載される場合が多い。一般的には、見かけ視野角が50度前後以上のものであればストレスなく使うことができ、60度以上のものは広角双眼鏡と称されることもある。視野角を広くするためには大型のプリズムと複雑な構成の接眼レンズが必要となるため、同じ倍率で比較した場合、高額な製品ほど視野角が広い傾向がある。 接眼レンズから目をどのくらい離したときに最もよく視界全体を見ることができるか、ということも双眼鏡の使いやすさを左右する性能で、アイポイントあるいはアイレリーフという項目でカタログ表記されていることが多い。眼鏡使用の場合、アイポイントが10数mm以上ないと視界全体を見ることができないので注意が必要である。 その他双眼鏡の見え方は、視野角周辺の解像度、色収差、歪曲収差、フレア、非点収差、コマ収差、透過率、などのさまざまな光学的性能や、ピント操作の滑らかさや確実さなどにも大きく影響されるが、双眼鏡についてこれらの特性を測る標準的な方法は合意されておらず、カタログ表記もされていない。カタログでEDガラス使用(異常分散レンズ)とあれば色収差が少ないはず、マルチコートとあればフレアが少なくコントラストがいいはず、というような推測は可能だが、実際には覗いてみないとわからない。
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