初期胚のパターン形成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 09:41 UTC 版)
「β-カテニン」の記事における「初期胚のパターン形成」の解説
Wntシグナル伝達経路とβ-カテニン依存的な遺伝子発現は、初期胚でのさまざまな部位の形成に重要な役割を果たす。β-カテニンを発現しないよう実験的に改変された胚では中胚葉の発生と原腸形成の開始が起こらなくなる。胞胚期と原腸胚期には、Wntは、BMP経路やFGF経路とともに前後軸形成を誘導し、原条の正確な配置(原腸形成と中胚葉の形成)や神経胚形成(英語版)(中枢神経系の発生)の過程を調節する。 ツメガエルXenopusの卵母細胞では、β-カテニンは当初は卵の全領域に均等に存在しているが、β-カテニン分解複合体によるユビキチン化と分解の標的となっている。卵が受精することで卵の表層が回転し、FrizzledとDshタンパク質のクラスターが赤道面の近くへ移動する。この細胞質領域を受け継いだ細胞では、Wntシグナルの影響によってβ-カテニンが局所的に増加する。最終的にβ-カテニンは核へ移行してTCF3と結合し、背側細胞の特徴を誘導するいくつかの遺伝子が活性化される。このシグナル伝達の結果、典型的な胚発生のオーガナイザー(形成体)領域である、灰色三日月環(grey crescent、灰色新月環)として知られる細胞領域が形成される。胚からこの領域を外科的に除去した場合、原腸形成は全く起こらない。β-カテニンは、原腸形成を開始する原口唇の誘導にも重要な役割を果たす。アンチセンスmRNAの注入によってGSK-3の翻訳阻害を行うと、2つ目の原口が形成され余計な体軸が形成されることとなる。同様の影響はβ-カテニンの過剰発現によっても引き起こされる。
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