初期不良と配備遅延
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 04:39 UTC 版)
「F-2 (航空機)」の記事における「初期不良と配備遅延」の解説
試作・試験飛行の段階において、日本が得意とする炭素系複合素材で製作した主翼構造部位に顕微鏡レベルの微小な「ひび」が見つかる、主翼の一部強度不足が見られる、特定の非対称運動を行った場合に垂直尾翼に予測値を超える荷重がかかる、装備品の特定の組み合わせによるフラッターの可能性、増槽装備時の増槽取り付け部分にかかる荷重、などの諸問題があったため、その原因究明と改修作業により遅れが発生した。先の日米交渉の影響もあり、XF-2の今後に対し懐疑的な報道がなされたこともあった。ただし、飛行試験時においてこのような不具合が見つかることは多くの国の機体開発において決して珍しくなく、たとえば翼の「ひび」はアメリカのF/A-18E/F開発時にも見られた。 部隊配備後のレーダーの不具合については、レーダーそのものではなく機体のマッチング、艤装に問題があったと言われている。レーダー自体に問題があれば、C-1FTBで試験しているうちに判明するが、マッチングは実機を使わないと判明せず、開発経験の問題であり、初期不良の範疇であると考えられる。レーダーの不具合についてはアラート任務(領空侵犯警戒任務)付与を延期するよう航空総隊が意見具申したと報道された。 これらの不具合に対してはその後対策が施され、2004年(平成16年)2月に戦闘能力点検(ORI)に合格した。アラート任務は同年3月19日から第3飛行隊(三沢基地)、2007年(平成19年)3月から第6飛行隊(築城基地)に付与された。 F-2の量産初号機は2000年(平成12年)9月25日に航空自衛隊に納入された。56中業への記載から19年、当初の配備予定から13年遅れ、F-16改造開発決定以降の配備予定からは3年遅れであった。開発の遅れや米国企業の分担製造、物価上昇などもあり開発費は3270億円となり、米国による当初見積もりの6000億円には遠く及ばなかったが、日本側予測の1650億円を大きく超過した。これは当初、技術援助を受けて日本企業が試作機の設計・製作を行う前提だったが、実際には米国企業の分担製造や飛行制御コンピューターのソースコードの国内開発が加わったこと、不具合発生による試験遅延などが影響している。F-2の配備の遅れにより、3個支援飛行隊体制が維持できなくなることが早期に予想されたため、老朽化が進む旧式のF-4EJ改を支援戦闘機に転用、その分のF-15を追加調達する処置がとられた。 初飛行から最初の10年間で1機も失われず(2011年における喪失は東日本大震災による損害であり、運用中の事故ではない)、単発エンジンながら信頼性の高い機体ではある。なお、主力戦闘機F-15Jは最初の10年で5機を事故で失っている(ただしF-2とF-15Jでは10年間での調達機数や総飛行時間に差があり、訓練内容の違いもあるので単純な比較はできない)。
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