幻化網タントラ
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『幻化網タントラ』(げんけもうタントラ、Māyājāla Tantra、マーヤージャーラ・タントラ)とは、仏教の後期密教聖典の一つ。経典の諸本に説かれる「説会(せつえ)の曼荼羅」をはじめ、色々な曼荼羅やタンカ類があるが、共に男尊が四面四臂、女尊が一面四臂のヤブユム相の『大幻化金剛』(Mahāmāyā:マハーマーヤー)[注 1]を本尊(yi dam、イダム)[注 2]として祀る点にも特色がある[1][2][3][4][5]。
注釈
- ^ 『大幻化金剛』は、チベット密教では男尊が四面四臂、女尊が一面四臂のヤブユム相の立像が一般的ではある。なお、チベットの『三百図像』には、この坐像も収められている。また、この尊格は日本の『理趣経』に「五秘密尊」として説かれ、『胎蔵界曼荼羅』においては「金剛王菩薩」として描かれている尊格と同じものを指すと見られる。[誰?]
- ^ ここでいう「本尊」は、「秘密本尊」や「守護尊」とも訳される。主に憤怒相のヤブユムで描かれ、チベット密教における主要な五タントラを代表する尊格を五大金剛とも言うが、尊様や図像的には日本密教の明王部に相当する。ただし、チベット密教の伝承する無上瑜伽タントラではそれよりも格が上で、本初仏(Ādibuddha)や如来と等しい存在とされ、「ヘールカ」とも呼ばれている。
- ^ 依経(えきょう)ともいい、文字通りに、その宗派の教えの拠り所となる経典のこと。
- ^ 日本の密教では「大威徳明王」と呼ばれている。
- ^ ニンマ派のマハーヨーガに属する十八部大タントラの『十万品幻化網タントラ』と、旧訳経典の幻化部に属する八部の経典『幻変八部』、四部の釈タントラに属する『幻化四部』等がある。
- ^ 松長有慶は「サンウェーイニンポ」[6]、田中公明は「サンワイニンポ」と表記[16]。
- ^ サキャ・パンディタの師に当たる北インドの僧、12-13世紀。
出典
- ^ 『チベット密教の神秘 快楽の空・智慧の海』(学習研究社)、「母タントラ」写真図版、pp.85-88。
- ^ 『チベットの仏たち』(方丈堂出版)、第二十七話「マハーマーヤーとブッダカパーラ」、pp.144-147。
- ^ 川崎一洋, 「『幻化網タントラ』に見られる五秘密思想」『密教文化』 密教研究会, 2003巻 211号 2003年 p.L64-L83, doi:10.11168/jeb1947.2003.211_L64
- ^ 川崎一洋, 「五秘密尊と五秘密曼荼羅」『印度學佛教學研究』 日本印度学仏教学会, 59巻 1号 2010-2011年 p.428-423, doi:10.4259/ibk.59.1_428
- ^ 『マンダラ蓮華』(平河出版社)、第一巻「Ⅲ-34 マハーマーヤー」 p204、第二巻「Ⅲ-34 マハーマーヤー」 p109、pp.187-188。
- ^ a b c 松長有慶, 「幻化網タントラの性格」『印度学仏教学研究』 日本印度学仏教学会, 8巻 2号 1960年 p.550-551, doi:10.4259/ibk.8.550。
- ^ 『密教経典成立史論』 法蔵館 pp.240-261, ISBN 9784831873187。
- ^ 『八十四人の密教行者』(春秋社)、pp.151-154。
- ^ 『チベット密教の神秘 快楽の空・知慧の海』(学習研究社)、「母タントラ」、pp82-87。
- ^ a b 『講座 仏教の受容と変容 チベット・ネパール編』 立川武蔵・森雅秀 佼成出版社 p300
- ^ a b 『不動信仰事典』 宮坂宥勝 戎光祥出版 p212
- ^ 田中公明, 「『金剛場荘厳タントラ』の成立とインド密教史上における位置」『東洋文化研究所紀要』 東京大学東洋文化研究所, 152巻 p.400-381,(209)-(228)
- ^ 田中公明, 「『アームナーヤ・マンジャリー』に見るサンヴァラ曼荼羅の解釈法」『インド哲学仏教学研究』 16巻 2009年 p.55-68, ISSN 09197907, NCID AN10419736, 東京大学大学院人文社会系研究科・文学部インド哲学仏教学研究室。
- ^ a b 松長有慶 「『幻化網タントラ』 怒りの仏が迷いの幻網を打ち破る」 『インド後期密教(上)』 春秋社、2005年、p89
- ^ 川崎一洋, 「雲南の密教と『幻化網タントラ』」『印度學佛教學研究』 日本印度学仏教学会, 58 巻 1号 2009-2010年 p.518-513, doi:10.4259/ibk.58.1_518。
- ^ a b 田中公明 『図説 チベット密教』 春秋社、2012年、pp145-147
- ^ Sam van Schaik, "The Early Days of the Great Perfection", Journal of the International Association of Buddhist Studies Vol. 27 No. 1, 2004.
- ^ a b Sam van Schaik, In search of the Guhyagarbha tantra
- 1 幻化網タントラとは
- 2 幻化網タントラの概要
- 3 秘密蔵タントラ
- 4 脚注
- 幻化網タントラのページへのリンク