ヒストンの合成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/17 06:55 UTC 版)
新たに合成されたDNAが適切に機能するためにはヌクレオソームを形成する必要があり、そのため典型的な(ヒストン・バリアントではない)ヒストンタンパク質の合成がDNA複製とともに行われる。S期の初期に、サイクリンE-CDK2複合体はヒストン遺伝子の転写のコアクチベーター(英語版)であるNPAT(英語版)をリン酸化する。NPATはリン酸化によって活性化され、Tip60(英語版)クロマチンリモデリング複合体をヒストン遺伝子のプロモーターへリクルートする。Tip60の活性によって転写阻害的なクロマチン構造が除去され、転写率は3倍から10倍増加する。 ヒストン遺伝子の転写の増大に加えて、ヒストンの産生はRNAレベルでも調節される。典型的ヒストンの転写産物は、ポリアデニル化テールが付加される代わりに、3'末端にステムループモチーフを持っており、そこへステムループ結合タンパク質(SLBP(英語版))が選択的に結合する。SLBPはヒストンmRNAの効率的なプロセシング、核外輸送、翻訳に必要であり、極めて感受性の高い生化学的な「スイッチ」として機能する。S期の間、SLBPの蓄積はNPATとともにヒストンの産生効率を劇的に上昇させる。しかしS期が終結すると、SLBPとその結合RNAの双方が速やかに分解される。これによってヒストン産生は即座に休止し、有害な遊離ヒストンの蓄積が防止される。
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