パリから香港まで
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「オリエント・エクスプレス '88」の記事における「パリから香港まで」の解説
1988年9月5日、NIOEの車両は本拠地のスイス・チューリッヒを出発し、パリまで回送された。9月6日にはパリで乗客と関係者を招待して出発記念パーティーが行われた。 9月7日、フランスのパリ・リヨン駅の発車案内には「オリエント急行東京行き」と表示され、構内アナウンスもオリエント急行の東京行きと告げていた。そして、オリエント急行の先頭には、映画『オリエント急行殺人事件』にも登場した230G形蒸気機関車が連結されていた。この蒸気機関車は博物館に保存されていた が、この列車のためにフランス国鉄が用意したのである。 山之内は、現地でのテレビ局のインタビューに対して、フランス国鉄が蒸気機関車を牽引機として用意したことについて「粋な計らい」と評した上で、「日本でも蒸気機関車がこの列車を引くでしょう」と発言した。日本でテレビ中継を視聴していたJR東日本の社員は、副社長である山之内のこの発言に驚いた。当時、JR東日本ではD51形蒸気機関車の復元作業に着手していたが、当初の目的であった横浜博覧会での運行が取りやめとなり、作業の進捗は遅くなっていたのである。JR東日本では急遽会議を行い、「日本でのオリエント急行の運行の最終期にD51形に牽引させる」という方向性が決まり、突貫作業でD51形の復元作業が進められることになった。 ともあれ、東京行きのオリエント急行は、パリ・リヨン駅を予定より5分遅れの9時40分に発車した。パリから香港までは約14,600kmあり、無事に到着した場合は「ひとつの列車が乗り継ぎなしで走った最長距離」としてギネスブックにも掲載されることになっていた。 パリから香港・東京までの乗客は、阪急交通社主催のツアーとして募集された。参加したのは37名(資料により36名 あるいは39名)で、その中には作家の安部譲二が含まれる。このほかフジテレビの撮影班 と、リポーターとして上月晃が同乗した。 蒸気機関車による牽引はモーまでであった。ベルギーと西ドイツは夜間に通過し、東西ドイツの国境であるマリエンボルンからはドイツ国営鉄道 (DR) の保有する01形蒸気機関車が重連でオリエント急行を牽引した。途中、乗客の観光のためポツダムでは6時間停車したほか、東ベルリンのリヒテンベルクではこの列車の乗客を招待した晩餐会が開かれた。東ベルリンを9月8日の深夜に発車したオリエント急行はポーランドに入国したが、ポーランドのクトノからはポーランド国鉄のPt47形・Ty51形蒸気機関車が重連でオリエント急行を牽引した。東ドイツ・ポーランドとも、日中の運転区間がほとんど蒸気機関車による牽引であった。なお、乗客はソハチェフからワルシャワまではバスに乗り換えて、フレデリック・ショパンの生家を訪れている。 9月10日にワルシャワを出発したオリエント急行はソ連に入国し、ブレストで台車の交換作業を行い、同時に前3両、後1両の控車が連結された。4時間停車の予定であったが、作業が遅れたために1時間遅れでブレストを発車することになり、ここからモスクワまではソ連国鉄のP36形蒸気機関車がオリエント急行を牽引した。ここからはソ連人のシェフが乗り込み、食堂車でロシア料理を提供した。途中、モスクワで1日半、ノボシビルスクで半日、イルクーツクで2日ほどの停車時間が確保されていたが、これは乗客の観光や車両のメンテナンスを行うだけではなく、ブレストで交換した標準軌用の台車をオリエント急行よりも先に中国との国境に近いザバイカリスクに輸送しなければならないための時間稼ぎでもあった。標準軌用の台車は貨車で輸送され、途中でオリエント急行を追い抜いている。 ザバイカリスクで再び台車を交換したオリエント急行は、9月20日に満州里から中国に入国、控車も中国の車両(前2両、後1両)に交換された。この時に連結された控車は食堂車が含まれており、この食堂車で調理した中国料理をオリエント急行の食堂車に運んで提供した。中国国内では安達からハルビンまでの区間で前進型蒸気機関車がオリエント急行を牽引した。北京では2日間ほど停車し、その後は京広線・広深線・九広鉄路を経由し、9月26日午後2時45分に香港の九龍駅に到着した。 オリエント急行の客車は9月27日から28日にかけてパナマ船籍の貨物船「せき・まつやま号」に積み込まれ、9月29日に日本へ出港した。
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