タイムトラベル物語の歴史といくつかの構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/07 14:49 UTC 版)
「タイムトラベル」の記事における「タイムトラベル物語の歴史といくつかの構造」の解説
ウェルズの『タイム・マシン』は未来へのタイムトラベルを題材としたが、その後のSF作品では未来だけではなく過去へのタイムトラベルを扱った作品もまた多く生み出されている。これらの作品では、必ずしもタイムマシンの登場は必須ではなく、超能力によるタイムトラベルや超常現象によるタイムトラベルなども含まれている。 作品の傾向として、未来へのタイムトラベルは『タイム・マシン』に代表されるような悲観的な未来社会が題材とされる場合が多い。これはウェルズの作品が当時のイギリスの階級問題や労働問題を未来社会になぞらえていたように、現代社会の問題点を未来に投影し描くことで現代に問題を提起する作家の意図が強いためである。 一方、過去へのタイムトラベルでは現代と過去で繫がる問題や危機が頻繁に題材とされ、過去の改変により現代の事象も影響を受けるタイムパラドックスにより、歴史が書き換わった場合に訪れる危機や現代の悲観的状況を打開するドラマが多く描かれている。また不可逆的な時間を遡る現象の特性から、経験してきた時代をもう一度体験したい、生前の時代を垣間見たい、人生をやり直せたらとの読者の願望を反映したノスタルジックな内容の作品も少なくない。これらは歴史小説的側面を持つ作品もある。過去へのタイムトラベルは、荒唐無稽になりがちな未来社会を扱った作品よりも、時代考証や史実を踏まえることでよりリアルな描写が可能である。そのためか、現代への影響が想像しやすく読者が感情移入しやすいという評価もある。
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