クーデター
英語:coup d'etat
クーデターとは、政府や国家の指導者を非合法的に、しばしば武力を用いて転覆させる行為を指す。これは通常、軍や政府内部の一部が行い、政権の掌握を試みる。クーデターは、政治的な混乱や不満が高まった状況下で発生することが多い。クーデターの結果、新たな政権が誕生することがある一方で、混乱を招くこともある。 クーデターは、特定の政治体制や指導者に対する不満や反発、あるいは政治的な目的を達成する手段として行われる。例えば、腐敗した政府を打倒し、新たな政治体制を樹立するために行われることがある。また、政治的な理想を実現するために、政府を転覆させることを目指すこともある。
クーデター
クー‐デター【(フランス)coup d'État】
クーデター(くーでたー)(coup d'etat)
武力を行使するなど非合法的な手段によって現行の政府を倒し、政治的権力を奪い取ること。政権内の軍部が暴走する例が多い。フランス語で「国家に対する不意打ち」という意味がある。
議会制民主主義を取り入れる現代国家では、国民主権の観点から、選挙で政権を選ぶ機会を国民に与えている。そのため、クーデターのように選挙によらない政権交代は民主的ではないと考えられるが、クーデターによって樹立された政権がその後の国家を統治するミャンマー(旧ビルマ)のような例も見られる。
タイで19日、タクシン政権を批判する陸軍がクーデターを起こした。クーデターで中心的役割を果たした陸軍のソンティ司令官はタイ憲法の効力を停止させ、民主改革評議会を組織して、プミポン国王の支持を得た上で民主的な政権への移行を目指している。
タイでは、タクシン首相の一族による不透明な株取引をきっかけに政治が混乱し、議会の解散を受けて実施された総選挙は、野党の呼びかけで大量の白票が投じられるなどしたため憲法裁判所から選挙無効の判断が出ていた。
クーデターの発生時、国連総会に出席するためにニューヨークに滞在していたタクシン首相は、ロンドンで亡命状態を余儀なくされている。タイでの軍部によるクーデターは1991年以来15年ぶり。
(2006.09.25掲載)
【クーデター】(くーでたー)
coup d'État (仏)
直訳すると「国家への一撃」。
テロリズムによって既存の国家・政府機構を破壊し、テロリストが戒厳を命じる事。
未発展の国家で武装した民間人や傭兵が企てる他、正規軍の将校が実行する事もある。
実際の戦闘が発生しないまま、降伏により決着した場合は特に「無血クーデター」と呼ばれる。
どのような形で行われるにせよ政治的変動は避けられず、しばしば治安の悪化を招く。
また、国内のテロリズムを活性化させ、紛争の引き金となる事も少なくない。
混乱や情勢悪化に伴って仮想敵国との外交関係に軋轢が生じ、(「自国市民の保護・救出」や「旧勢力の支援」などを名目とした)侵略を招く危険性もある。
付け加えて言えば、戒厳を実行できるような勢力はしばしば政治的地盤を欠く。
そもそも政治力に劣るからテロリズムに頼るのであり、クーデター勢力が旧支配層より無能である事例は数多い。
政権を奪取した反政府テロ組織が新たな政府組織として再編される際、旧弊をそのまま引き継いでしまう事も少なくない。
クーデター
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クーデター(仏: coup d'État、英: coup、中: 政変)とは一般に、軍隊組織や政治家が非合法的に、かつ公然と、暴力的な手段を行使して、政権を転覆させること、またそれを試みることを指す。
フランス語で「国家に対する一撃」を意味し[1]、発音はフランス語: [ku d‿e.ta](ク・デタ、発音例)である。日本語では「クーデタ」や「クー・デ・タ」と表記することもある。
被支配階級が権力を奪取し、体制そのものの変革を図る革命に対し、クーデターは支配階級内部の権力の争奪であり、一般に支配階級の一部が自己の権力をさらに強化するために、あるいは他者がもつ権力を奪取するために遂行される[1]。
概要
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歴史的には、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの発展途上国においてはしばしば政治変動はクーデターによってもたらされている。政治的な暴力としてはクーデターだけではなく革命(revolution)や反乱(rebellion)などの概念もあるが、クーデターの概念はその暴力行為の政治的な意図によって区別される。
革命はイデオロギーの抜本的な改革を行い、政治権力や社会制度などの体制そのものの変革を目的とする。反乱は政治的な暴力の行使であり、より保守的な政治性を持ち政治的支配の変更を達成するために行われる。対してクーデターでは支配階級内部での権力移動の中で、既存の支配勢力の一部が非合法的な武力行使によって政権を奪うことであり、行為主体である軍事組織により、臨時政府の樹立と直接的な統治が意図された活動である。
このような定義に基づいた定量的な研究では、クーデターの発生が歴史的または地域的に偏っていることが明らかになっている。ファイナー(Finer, 1978)の研究によれば、1958年から1977年にかけて157件のクーデターが集中していることが分かっており、トンプソン(Thompson, 1978)の研究では59か国で生じた274件のクーデターを分析しており、熱帯地域のアフリカでは特にクーデターが集中していると指摘している。
クーデターを成功させるための戦略と戦術について、ルトワク(Luttwak, 1979)が述べているように奇襲の成功と資源の確保が重要である。ただし、既存の統治機構から権力を奪取して臨時政府を樹立することが目標となるために、通常の軍事作戦とは異なる側面も指摘できる。
戦略的な局面においては、クーデターの達成を確実なものにするためには反撃を阻止して第三勢力による対抗クーデターや政治的介入を防ぐために活動の基盤となる物資や人員の喪失を回避しなければならない。また、速やかに大衆の支持を獲得して既存の政府に対する支持を無力化する必要がある。軍事組織それ自体は政治的な正当性を備えた組織ではないために、迅速に国家の首都に部隊で占拠して権力の中枢に関与している指導的な政治勢力を排除するか、もしくは従属させることを計画しなければならない。
戦術的な局面においては、クーデターは戦闘部隊が相手となるわけではないために少数の部隊で実施することが可能である。しかし、防諜の観点から実行部隊の人員は技能だけでなく信頼可能かどうかを判断して秘密裏に選抜しなければならない。一般に、有効な攻撃目標としては通信施設、空港などの交通施設、政府首脳の官邸、国防省や警察本部などの官庁を挙げることが可能であり、反撃を準備する猶予を与えないように短時間のうちに目標を完遂することが不可欠である。
鎮圧され失敗に終わった場合には、関与者への大規模な粛清が従来の政権によって行われることもある。
クーデターは多くの場合実力行使を伴う為批判されるケースが多いが、成功した場合、極稀であるが革命と見なされ評価される事もある(1969年リビア・クーデターなど)。社会主義・共産主義の隆盛を促した総本山と言えるロシアの十月革命も、社会主義・共産主義が衰退した21世紀以降の現代では、クーデターであったと見なす見解が強まってきている[2][3]。
クーデターの歴史
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歴史上のクーデターは、政権内の有力者、もしくは軍隊などを掌握している人物によって行われることが多い。 一方で最高権力者、あるいは君主などが行う「自主クーデター」もしばしば存在する。 ルイ・ナポレオン(ナポレオン3世)による1851年12月2日のクーデター、第三共和制下の韓国で行われた十月維新、ペルーのアルベルト・フジモリ大統領のクーデター(アウトゴルペ)などがある。
自らがトップに立とうとする場合だけでなく、有力者を担いだ者または有力者を担ぐことを標榜する者が実行する場合もある。
中央集権化が著しい体制の下では中央政権のトップが入れ替わると地方勢力もそれに従う傾向が強いが、一方封建制など地方分権の強い体制では、中央政権のトップが入れ替わったとしても必ずしも地方勢力がそれに従うとは限らず、クーデターの効果も限定的なものになったり、地方勢力の反撃によってクーデターが失敗に追い込まれることもしばしば見られる。
近世に入ってからは多くの国で中央集権化が進んだためクーデターが容易になったが、近代に工業化が進み大衆が豊かになり社会構造が複雑化すると、地方政府、政党、官僚、警察、企業、労働組合、宗教団体、利益団体、報道機関、その他コミュニティーといった多岐にわたる権力集団をすべて軍事力で掌握することは非常に困難になり、一般に、先進工業社会ではクーデターが稀になってきている。しかし、一般大衆の子弟が高等教育を受けることが困難で、立身出世を望む者が軍に集中する構造の社会では今もクーデターが頻発する。
現代では、軍事力は国軍が排他的に掌握しているため、国家体制が未発達の国で傭兵[注釈 1]や民兵[注釈 2]、暴徒[注釈 3]、過激派組織[注釈 4]が企てる以外は、国軍によるクーデターがほとんどである。軍の最高幹部が起こすものと中堅幹部が起こすものがあり、後者の方がより体制変革(革命)の意識が強いが、どちらも革命評議会、臨時救国政府等と名乗る軍事政権(フンタ ― 西: Junta。“評議会”)を作ることが多い。そうでなければ最高幹部が名目上退役し、軍の力を背景に利権と弾圧によって形式上は民政に移行したうえで大統領になるというものである。
主なクーデター
日本
- 乙巳の変(大化の改新)
- 昌泰の変
- 平治の乱
- 治承三年の政変
- 法住寺合戦
- 公暁による源実朝の暗殺
- 明応の政変
- 永禄の変
- 本能寺の変
- 慶安の変(未遂)
- 功山寺挙兵
- 王政復古の大号令
- 三月事件(未遂)
- 十月事件(未遂)
- 五・一五事件(未遂[4])
- 陸軍士官学校事件(未遂)
- 二・二六事件(未遂)
- 皇民有志決起事件(未遂)
- 宮城事件(未遂)
- 松江騒擾事件(未遂)
- 三無事件(未遂)
- 三島事件(未遂)
- 創価学会による1971年のクーデター計画(青年部最高幹部間で計画が立てられたのみで決行されず[5])
- オウム真理教の国家転覆計画(未遂)
世界
- オドアケルによる西ローマ帝国皇帝の廃位
- 宇文化及・宇文智及らによる煬帝の弑逆
- 玄武門の変
- 靖難の変
- エカチェリーナ皇后によるピョートル3世の廃位
- テルミドール9日のクーデター
- ブリュメール18日のクーデター
- 1851年12月2日のクーデター
近代
- 壬午軍乱
- 甲申政変(未遂)
- ハワイ事変(ハワイ革命)
- 戊戌の政変
- カップ一揆(未遂)
- ローマ進軍
- ミュンヘン一揆(未遂)
- ユゼフ・ピウスツキのクーデター
- スペイン内戦
- ムッソリーニ失脚
- 7月20日事件(未遂)
- 1952年のキューバのクーデター
- 1953年のイランのクーデター
- 将軍達の反乱(未遂)
- 5・16軍事クーデター
- フルシチョフ失脚
- 1970年カンボジアクーデター
- 林彪事件(未遂)[6]
- チリ・クーデター
- バラクーダ作戦
- 23-F(未遂)
- ソ連8月クーデター(未遂)
- アウトゴルペ
- 北朝鮮クーデター陰謀事件(未遂)
- 第6軍団事件(未遂)
21世紀
- 2014年タイ軍事クーデター
- 2016年トルコクーデター未遂事件(未遂)
- 2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件(未遂)[7]
- 2021年ミャンマークーデター
- 2022年ドイツクーデター未遂事件(未遂)
- 2024年大韓民国非常戒厳令(未遂)
カウンター・クーデター
クーデター後に成立した政権に対して、更に行われるクーデターを指す。青年トルコ人革命後のオスマン帝国において行われた1909年のオスマン帝国カウンター・クーデターや、インドネシアの9月30日事件、大韓民国における粛軍クーデターがこう呼ばれる。
比喩としてのクーデター
会社や団体の最高実力者の交代に使われることもある。合法だが慣例を無視したやり方で、急速、強引に進められる人事を指す。事前に周到に準備を進めた役員が、役員会取締役会でいきなり最高責任者の解任の緊急動議を提出し、根回しを受けていた他の役員も賛成して強引に交代させるなどはその典型的なものであり、武力は使わないものの、週刊誌やタブロイドなどで比喩的にクーデターと呼ぶことがある。1982年に起こった三越の岡田茂社長に対する解任劇(三越事件)、セイコーホールディングスで起きた、子会社和光の長年の放漫経営に端を発した2010年の役員解任劇、2013年に川崎重工業で起きた三井造船との経営統合に端を発した長谷川聰社長などの解任劇等がその代表である。
脚注
注釈
- ^ 1975年8月のコモロクーデター。社会主義革命の側面も持つこのクーデターで、傭兵ボブ・ディナールは有名となった。
- ^ 1977年のセイシェル共和国クーデター
- ^ ザンジバル革命、2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件(未遂)
- ^ トリニダード・トバゴの1990年クーデター未遂事件
出典
- ^ a b 『クーデター』 - コトバンク
- ^ “ロシア10月革命90周年にあたって(上)”. かけはし (2007年11月5日). 2025年1月4日閲覧。
- ^ “<視点>変貌したロシア ソ連崩壊30年 権威主義は必然か 外報部・常盤伸”. 東京新聞デジタル. (2021年12月27日) 2023年7月3日閲覧。
- ^ “五・一五事件から90年 小山・帝京大教授に聞く 背景に「格差拡大という現代との共通項」 実行犯に甘かった新聞に責任も:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 東京新聞. 2024年8月20日閲覧。 “1932年5月15日、海軍青年将校らが犬養毅首相を殺害したクーデター未遂事件「五・一五事件」から90年を迎えた。”
- ^ 矢野絢也『黒い手帖 : 創価学会「日本占領計画」の全記録』講談社、2009年2月。ISBN 978-4-06-215272-3。
- ^ “林彪事件(りんぴょうじけん)とは?”. コトバンク. 2025年1月3日閲覧。
- ^ “議会襲撃は「クーデター未遂」でトランプ氏が扇動と非難、米調査委公聴会”. BBC NEWS JAPAN (2022年6月10日). 2025年1月1日閲覧。
参考文献
- Finer, S. E. 1962. The man on horseback: The role of the military in politics. New York: Praeger.
- Finer, S. E. 1978. The military and politics in the third world. in The Third World: Premises of U.S. policy, ed. W. S. Thompson, pp. 63-97. San Francisco: Institute for Contemporary Studies.
- Fitch, J. S. 1977. The military coup d'etat as a political process: Ecuador, 1948-1966. Baltimore, Md.: Johns Hopkins Univ. Press.
- Huntington, S. P. 1968. Political order in changing societies. New Have, Conn.: Yale Univ. Press.
- 内山秀夫訳『変革期社会の政治秩序 上下』サイマル出版会、1972年
- Luttwak, E. 1979. Coup d'etat: A practical handbook. 2d ed. Cambridge, Mass.: Harvard Univ. Press.
- 遠藤浩訳『クーデター入門 その攻防の技術』徳間書店、1970年
- Welch, C. E., and A. K. Smith. 1974. Military role and rule: Perspectives on civil-military relations. Duxbury, Mass.: Wadsworth.
関連項目
- 内戦
- 反乱
- 政軍関係
- 政権交代
- 軍事政権
- 白色テロ
- 倒閣
- 放伐
- 簒奪
- 謀反
- 主君押込
- お家騒動
- ローマ進軍 - 国軍以外の組織によって企てられたクーデターの例
- クーデター合理論
- クーデターとクーデター未遂事件の一覧
- アフリカの軍事クーデターの一覧
外部リンク
クーデター
「クーデター」の例文・使い方・用例・文例
- 2006年9月の軍事クーデターで失脚、事実上亡命中だったタイのタクシン元首相が28日、約1年半ぶりに帰国した。
- そのクーデターの間接的な情報しか得ていない。
- クーデター計画はぎりぎりのところで阻止されました。
- クーデターは慎重に遂行された。
- 市民の騒ぎがクーデターを助けた.
- クーデターによって.
- この情報から彼はクーデターが企てられていると推測した.
- 側近革命 《現政権の有力者による(無血)クーデター》.
- テレタイプがクーデターのニュースを打ち出していた.
- クーデター未遂事件に携わった人びとは罰せられるだろう.
- 無血クーデター
- クーデターは冷血に独裁者を処分した
- クーデターの後、すべてが不安定だった
- クーデターによって権限を手に入れた政府の突然のまた決定的な転覆
- 1917年11月のレーニン支配下のボリシェヴィキによるクーデターで、1922年にボリシェヴィキの勝利に終わった内戦時代へとつながった
- エジプトの王で、1952年の軍のクーデターにより追放された(1920年−1965年)
- 1969年に軍事クーデターで覇権を握ったリビアの指導者
- インドネシアの政治家で、1949年にオランダからインドネシアの独立を得て、クーデターでスハルトに追放されるまで大統領として務めた(1901年−1970年)
- 未遂のクーデターである1936年の二・二六事件では,建物が占領された。
- 彼が米国へ行く途中,飛行機に乗っている間に,彼の国でクーデターが起こる。
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