くさや液
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 06:08 UTC 版)
魚の干物を浸すための塩水を繰り返し使用してきた発酵液は、くさや液の他、しょっちょる(塩汁)とも呼ばれ、茶褐色の粘り気のある液体で魚醤に近い風味をもつ。塩分濃度は10から15パーセントで、4パーセントの例もある。約pH8の弱アルカリ性で、含まれる窒素の大部分は揮発性塩基で占められており、溶出したタンパク質はほぼ完全に分解されていることがわかる。 くさや液にはコリネバクテリウム・クサヤ(クサヤ菌)があり、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの有機酸とエステル類が特徴的な香りを醸し出す。 古いものほど旨味が出るとされ、中には200年も300年も続くものもある。そのため、製造業者はこの液を家宝として、また味の出し方や塩の加減によって味が変わるので、くさや液の製法は各店の秘伝として、代々受け継がれている。くさやの匂いや味は島ごとはもちろんだが店ごとにも差がある。「元祖」だけあって、一般的には新島産の物がもっとも匂いが強いと言われている。また、伊豆諸島の一般家庭でも、代々くさや汁を受け継ぎ、家庭でくさやを作っている家もあり、昔は嫁入り道具の一つとなっていた。 また、ビタミン、アミノ酸などが非常に豊富に含まれていて、抗菌作用もある。そのため、体に良いとされており、かつて医療体制の整備が遅れていた伊豆諸島では、ケガをしたり体調を崩すたびに、薬代わりとしてくさや液を患部に塗布したり、飲ませたりしていたという。 なお、くさや液は、ヒスタミン生成菌が少なく、ヒスタミン分解菌が含まれており、食中毒の原因となるヒスタミンが蓄積しにくいとされる。
※この「くさや液」の解説は、「くさや」の解説の一部です。
「くさや液」を含む「くさや」の記事については、「くさや」の概要を参照ください。
- くさや液のページへのリンク