プロローグ
六月半ば、そろそろ梅雨が近づいてきたある雨の日の夕方。十五歳の葛城汀一は金沢駅で特急電車から降りた。大きな荷物は既に引っ越し先の祖父母の家に送ってあるので、リュック一つ、それと駅の売店で買ったビニール傘が一本だけという軽装である。
奈良駅で別れた両親はそろそろシンガポール行きの飛行機に乗った頃だろうか、などとぼんやり考えながら階段を下り、改札を通る。
観光客の行き交うコンコースを抜けて東口に出ると、ドーム状のガラス屋根越しに曇った空が透けて見えた。小ぶりな運動場ほどの広さのガラスを雨がバラバラと叩いている。屋根の途切れるあたりには、太った鳥居のような形の、巨大で奇妙な形のオブジェが聳えていた。
金沢生まれで金沢育ちの祖父曰く、金沢駅の新しい──と言ってもそこそこ古い──シンボル、鼓門である。雨の中にもかかわらず、ライトアップされた門の前では、性別も人種も様々な観光客たちが傘を手に写真を撮ったり撮られたりしていた。いわゆるフォトスポットというやつらしい。
祖母には、駅からはタクシーで来るように言われている。汀一はタクシー乗り場に向かおうとしたが、ふと思い立って鼓門の方へと足を向けた。せっかく金沢に来たのだから、この土地らしい場所の写真を撮っておこうと思ったのだ。
「まあ、別に見せる相手もいないけど、記念ってことで……」
誰に言うともなく苦笑しながら傘を広げ、門の外、その全景が見える位置へと移動する。傘が落ちないよう腕で挟んで固定しつつ、正月に買ってもらったスマートフォンを取り出して構えると、液晶画面に映り込んだ自分の顔と目が合った。
身長百五十六センチ、体格は平均よりも少し細め。身に着けているのはお気に入りのオレンジ色のTシャツと茶色のパンツで、短い髪の色はやや明るいがこれは地毛。小柄な上に目が大きいので、実年齢よりも子供っぽく見える。もう少し背を伸ばしたいんだよなと思いつつ、汀一はカメラアプリを起動して、レンズを門へと向けた──その矢先。
「んっ?」
戸惑いの声が思わず漏れた。
スマホを手にして見上げた先、門の上に、細身の人影が傘を差して立っていたのである。暗くてよく見えないが、黒っぽい服を身に纏っており、手にした傘もどうやら黒系だ。
しかし、なんであんなところに人が?
門の高さは十メートル以上あり、梯子も階段も付いていない。そうそう登れる場所でも、登っていい場所でもないはずなのだ。さらに不思議なことには、周辺で記念撮影中の観光客たちも、自転車の乗り入れに目を光らせる警備員も、門の上の人物に気が付いていないようだ。
困惑しながらとっさにカメラを向けてズームすると、その人物の顔が──長い前髪に白い肌、雨空を見上げる細めた目、まっすぐ通った鼻筋などが──画面いっぱいに広がった。顔立ちからするとかなり若い。汀一はスマホを下ろし、肉眼でもう一度その姿を確認しようとした。
「……あ、あれ?」
再び漏れる戸惑いの声。
今の今まで視線の先に立っていたはずの人物の姿は、いつの間にか消えていた。慌ててスマホを再度構えたが、あの傘を差した誰かの姿が画面に映ることはなかった。
気のせいだったのだろうか。それとも何かを見間違えた……?
汀一は眉根を寄せて訝ったが、考えて分かることでもなさそうだ。であれば、くどくど悩んでも仕方ないか。いつものように気楽な自問自答を心中で交わすと、汀一はその場を立ち去り、タクシー乗り場に向かった。
第一話 初勤務日の野鎌
金沢に着いた翌日の午後。祖父母とともに昼食を済ませた汀一は、「ちょっと出かけてくる」と告げ、家を出た。
海外赴任する両親の元を離れ、父方の祖父母の家に──つまり、この街に──住むことになったわけだから、これから暮らすことになる金沢の街を一人で歩いてみようと思ったのだ。祖父母の家には幼い頃から何度も訪れているとは言え、滞在してもせいぜい二泊、外に出るとしても近場で外食するくらいだったので、街中の様子はよく知らない。それに、今日は土曜日で、転入先の高校に行くのは週明けの月曜からだし、与えてもらった自室での荷物の整理は済ませたし、これといった用事もないし。
というわけでしばらくぶらついた後、汀一は、橋と川が好きな街だなあ、と思った。
東西に流れる二本の川に挟まれた街ということは地図を見て知っていたものの、それ以外にも、街中にやたらめったら川が流れているのである。「なんとか用水」と表記されているものも多かったので、ああいうのは実際は川ではないのかもだけど、ともかくそこら中に水が流れていることに違いはない。昨日まで汀一が住んでいた奈良の住宅街では用水路はほぼ暗渠だったので、なかなか新鮮な光景だ。新鮮と言えば、街路樹に柳が多いのも新鮮だった。街路樹と言ったらプラタナスやケヤキのような広葉樹だと思っていた。
あと、これは別に悪口ではないのだけれど──と汀一は胸中で誰かに断った──見通しにくい街だなあ、とも思った。
道がどれも直線ではない上に、その交わり方も垂直ではない。おまけに坂も多いので、この道を進めば何があるのか、いや、それ以前に、どちらに曲がればどの方角に行けるのかがさっぱり分からないのである。ダンジョンみたいで面白いけれど、碁盤の目状に直線道路が伸びる住宅街に住んでいた身としては、慣れるのが大変そうだなと汀一は思った。これは迷う。絶対迷う。
もっとも今日のところはどこに向かっているわけでもないので、多少迷っても問題はない。困るとしたら明日からだし、何かあったらその時になってから悩めばいいか。そんなことを思いながら、汀一は金沢の街中をあてもなく歩いた。
幸い金沢は歴史のある観光地であり、観光客も多いので、よそ者感丸出しの男子がキョロキョロふらふらしていても浮くことはなかった。
デパートやゲームセンターなどの並ぶ繁華街を抜け、大きな魚市場の前を通り、比較的落ち着いた雰囲気の方向に少し歩くと、小さなバス停の向こうにある木製の立派な門が目についた。泉鏡花という作家の記念館だそうだが、改装中で閉館していたので、汀一は近くの神社に足を向けてみた。
神社の奥には下りの石段があり、別の通りに抜けられるようだ。既に日暮れ時に差し掛かっており、東の空はそろそろ暗くなりつつある。大きな川が近いのだろう、石段の先からは水の流れる音が聞こえてくる。それに釣られるように細い石段を下ると、正面に細い道がまっすぐ伸びており、その脇には「暗がり坂」と刻まれた石碑が立っていた。この石段……と言うか、この一帯の名前らしい。
「へー。確かに暗い坂だな」
誰に言うともなく汀一は声に出して納得した。二人並んで歩くと肩がぶつかりそうなくらいに道が狭い上、道の左右には二階建てかそれ以上の高さの町家が並んでいるため、日が当たらないのだ。しかもその先はいっそう道が細く暗い。直進すると誰かの家に出てしまいそうな気がしたので、石段の下まで戻り、横道に折れることにした。
ここも細かったがさっきの道よりはまだ広く、一車線ほどの幅はある。例によって古い家が立ち並ぶ中を少し進むと、咲き誇る紫陽花に囲まれるようにしてその店が建っていた。
門柱や前庭はなく玄関がいきなり道路に面しているという、金沢市内にはよくある作りの古い町家である。黒い屋根瓦の木造二階建てで、赤茶けた柱はところどころがひび割れており、道に面した壁には目の細かい格子が縦縞のように並んでいる。板戸にも同じように格子が並んでいるので中は見えないが、戸の上にはおそろしく古い看板が掲げられ、「古道具売買 蔵借堂」という文字列が浮き彫りになっていた。
「古道具屋……ええと、『ぞうしゃくどう』……?」
読み方に首を捻りながら汀一は店構えを見回した。人気はなく、営業中の看板もなかったが、手書きで「アルバイト・パート募集中 土日のみでも可 要相談」と書かれた紙が画鋲で留められているので、閉業しているわけではないようだ。店頭には、赤黒い雨傘の刺さった傘立てが一つと、それに縦長の大ぶりな壺と古びた鏡台が放置されていた。
傘立てはともかく、壺と鏡台は店が買い入れたものか何かだろうか? にしても、置きっぱなしにするなんて不用心な……。そんなことを内心でつぶやきつつ、汀一は古道具屋の前からすぐに離れた。うっかり壺や鏡台を蹴ってしまうと大変だし、そもそも古道具に興味はない。むしろ汀一の興味を惹いたのは、古道具屋のすぐ右、薄い壁を隔ててすぐ隣にあるカフェだった。
「和風カフェ つくも」。
店先の小さな立て看板には、ポップな字体でそう記されていた。その下には、「珈琲4 5 0円」「ケーキセットあります」といった文章も並んでいる。
屋根が繫がっているところを見ると、カフェと古道具屋で同じ建物を半分ずつ共用しているようだが、店構えの印象はまるで違った。中を見せない古道具屋に対し、「つくも」の方の入り口は一部が透けたガラス戸になっているのでまだ敷居が低い。
「ケーキセットか。いくらかな」
ガラス戸の前で汀一の足が止まる。しばらく歩き回った後なので喉も渇いているし、お腹も多少減っている。そうでなくとも汀一は元々甘いものが好きだった。高校生がふらっと一人で入っても大丈夫な感じの店ならいいんだけれど……。
興味を惹かれた汀一が、店の中の様子を見ようとガラス戸の透けている部分に目を向ける。と、ウエイトレスなのだろう、エプロン姿のショートボブの少女の姿が目に留まった。店の奥にいる誰かと談笑しているようで、横顔に気さくな笑みが浮かんでいる。周りが明るくなるような柔らかで温かなその笑顔に、汀一は思わず見入った。
綺麗な子だな、と胸中で心の声が響く。せっかくだし入ってみようか。でも念のため、店の中の様子をもうちょっと見てから……。そう考えた汀一が、少し立ち位置を変えた、その時だった。
右足のかかとが、コツン、と何かに当たる。反射的に振り返ると、店先に置かれていた壺がアスファルトの上に倒れ込むところだった。
「あっ」
引き絞ったような悲鳴が口から漏れる。絶対に間に合わないと悟りながら思わず手を伸ばした……いや、伸ばそうとしたその直後、壺は汀一の眼前であっけなく地面に激突した。バリン、と派手な音が響き、陶器の破片が四方に飛び散る。
「ああああああああーっ!」
みっともない大声が古道具屋の軒先に響いた。
やってしまった! と言うか、さっきまで壺はこんな近くになかったはずでは? いやでも、実際に蹴ってしまった以上そんなはずはないのだけど、てかそれより弁償だろう! 値札も何もないけれど、こういうのって高いんじゃないか? にしても、引っ越してきた翌日にこんなことやらかすなんて! いやそれより先に謝らないと……。
様々な思いが一気にこみ上げ、冷や汗がだらだらと流れ出す。そのまま呆然と割れた壺を眺めること約一秒、ふいに古道具屋の格子戸ががらりと開いた。
その音に我に返った汀一がはっとそちらに向き直ると、古道具屋の中から出てきた人物と目が合った。
「あ! あ、あの……」
「今の音は君か」
汀一のおろおろと狼狽した声に、端的な問いかけが重なり、打ち消す。
格子戸を開けて出てきたのは、長身で色白の若者……いや、汀一の印象をそのまま言葉にするなら「少年」だった。
見たところ年齢は汀一と同じか少し上。身長百七十六センチのすらりとした痩身で、背筋はまっすぐ伸びており、ついでに鼻筋もまっすぐだ。艶やかな黒髪は男子にしては長く、襟足が首筋に、前髪が左の目に掛かっていた。身に着けているのは濃紺詰襟の長袖シャツで、ボタンは首元までしっかり締められ、黒のスラックスにはきっちりと折り目が付いている。そのすらりとした背丈とスタイルをまず羨んだ後、汀一はふと眉根を寄せた。
この、いかにも生真面目で厳しそうな端正な顔、確かどこかで見たような……? って、引っ越してきたばかりの土地に知り合いがいるはずないだろう。汀一が自問自答している間に、その少年は敷居をまたいで後ろ手で戸を閉め、青みがかった細い目をさらに細めながら再び声を発した。
「聞こえていないのか? 今の音の原因、つまり、今から僕が店内に運び込もうとしていたこの壺を割ったのは君なのか、と聞いているんだが?」
「え? ええと……このお店の人、ですか?」
「そうに決まっているだろう。それより僕の質問に答えてくれないか」
「あっ、うん──じゃない、はい! すみません、おれが割ってしまいました……」
「だろうな」
慌てて頭を下げる汀一の頭上に、少年の冷ややかな声が響く。青くなった汀一が「ほんとすみません」「弁償しますから」と弁解を続けていると、その声を聞きつけたのか、右隣のカフェのガラス戸が開き、エプロン姿の女の子と前掛けを着けた男性とが現れた。
「何何。どうしたの? ……あ、なんとなく分かったかも」
「あー、なるほど。やっちゃったねえ、これは」
お盆を手にしたショートボブの女の子と、五十代半ばほどの眼鏡の男性が古道具屋の軒先の光景を見てうなずき合う。割れた壺と頭を下げる汀一、その前で腕を組んで眉根を寄せる長髪の少年を見て、おおまかな事情を察したようだ。眼鏡に前掛けの男性は、なるほどねえ、と繰り返した後、平身低頭状態のままの汀一に歩み寄った。
身長は汀一と同じくらい、シャツにベストにネクタイに前掛けという、いかにもカフェのカウンターの中にいそうなスタイルのその男性は、人の良さそうな面長の顔を汀一に向け、困ったような笑みを浮かべて問いかけた。
「これ、君が?」
「はい……。いや、ええと、こっちの古道具屋さんとのことなので、そちらには」
「こちらのカフェには無関係って言いたいのかい? あいにくそうでもないんだよねえ。どっちもうちの店だから」
前掛け姿の男性が汀一の言葉をやんわり遮る。え、と目を瞬く汀一の前で、その男性は古道具屋とカフェを交互に指差した。
「ほら、見ての通り繫がってるわけだから。うち、元々は古道具屋『蔵借堂』一本だったんだけど、しばらく前に間口の半分をカフェにしたんだよねえ」
「あ。『くらがりどう』って読むんですね、あの看板」
「暗がり坂に近いからね。そこに因んだとかそうでないとか……。ともかく、このご時世、古道具だけじゃなかなか難しいんだよね。それに、せっかく観光地なんだから一見さんにも入りやすいお店を構えた方が賢いでしょ?」
「でしょ、と言われても……。そういうものなんですか」
「そういうものなんですよ。だから僕は今このカフェ『つくも』のマスター、もとい大将として経営状態の向上に努めて」
「大将。今その話はしなくていいよね。この子、困ってるじゃない」
長くなりそうだった自称「大将」に割り込んで止めてくれたのは、お盆を持ったエプロン姿の女の子だった。「ごめんね、この人話長くって」と、整った顔に苦笑いが浮かぶ。
少女の背丈は汀一よりほんの少し低めの百五十五センチほど。淡い黄色のブラウスと紫のスカートに、焦げ茶色のエプロンを重ねており、手には漆塗りの丸盆。髪型は丸みのあるショートボブで、少し釣り目気味の大きな瞳と下がり眉が見る人の目を引き付ける。
上品で清楚な雰囲気と言い、柔らかな体格のラインと言い、端的に言えばとても可愛い人だと汀一は思ったのだが、この状況でそんなことを話題にできるはずもなく「いえ」と返すのが精一杯だった。
* * *
その後、「店先でずっと話さなくてもよくない? 今お客さんいないしさ」という女の子の提案で、一同はカフェ「つくも」の店内へ移動した。
汀一がおずおず足を踏み入れた店内は、外観同様の落ち着いた和風な雰囲気で満たされていた。カウンターを囲んでテーブル席が四つだけのこぢんまりとした店で、行燈を模したルームライトが板張りの空間を淡く優しく照らしている。壁の棚には様々なカップがずらりと並び、「器をご指定いただけます」と張り紙が添えられていた。上品で居心地のいい店だな、と汀一は思った。
自称大将の男性は、汀一を四人掛けテーブルに案内してお冷を出し、自分はその向かいに腰を下ろした。エプロンの女の子と長髪の少年は近くの席に陣取り、汀一の方を眺めている。三対の視線に縮こまる汀一を前に、前掛け姿の大将は「そう硬くならずに」と苦笑し、口を開いた。
「そう言えばまだ名乗ってなかったね。ここの経営者の瀬戸です」
「か、葛城汀一です。あの……ほんとすみませんでした。足が当たっちゃって」
「まあ落ち着いて。不可抗力なんだろうから、そこまで責めるつもりもないし。そこまで高いものでもないしね。しかし、どうしてあれを蹴っ飛ばしちゃったわけ?」
「よそ見をしていて……」
「よそ見って何を見てたの? このあたり、見るものそんなにないよね」
口を挟んだのは隣のテーブルの女の子だった。何気ないその質問に、汀一が言葉に詰まったのは言うまでもない。
何と聞かれると、その答はまあ「あなたを見ていたからです」ということになるのだが、売り物を蹴り割った犯人がいきなりそんなことを言い始めたら開き直りもはなはだしい。だったらどう取り繕えばいい? 他に何か目を引くようなものがなかったっけか? 汀一はとっさに店先の光景を回想し、「その」と抑えた声を発した。
「ば、バイト募集の張り紙があったじゃないですか? あれをよく見ようとして……」
「ほう?」
汀一がおずおず切り出した途端、瀬戸の眼鏡の奥の目が広がった。軽く身を乗り出した瀬戸が、興味深げな視線を汀一に向ける。
「つまり君はバイト先を探していたと。つかぬことを聞くが、葛城くんは高校生かな」
「はい、高一です」
「そうなんだ! ごめん、中学生かと思ってた。じゃあわたしたちと一緒だね」
ショートボブの女の子が楽しそうにコメントし、だよね、と視線を向けられた長髪の少年が「だからどうした」と切り返す。へー、二人とも同い年なのか。親近感を覚えた汀一に、女の子がさらに尋ねる。
「家はどこ? 市内?」
「うん。確か、長町ってところ……。昨日引っ越してきたばかりなので、番地とかまではまだ覚えてないんだけど……ないんですけど、アルバイトは、できればしたいとは思っていて。おれ、昨日から祖父と祖母のところに住んでるんですが……」
同学年の二人のことも気になるが、今はそれより弁解だ。汀一はすぐに瀬戸に向き直り、ぽつぽつと言葉を重ねていった。
バイト募集のポスターに目を取られて、というのはとっさに捻り出した言い訳だったが、バイトに興味があるのは本当だった。祖父母は「年金暮らしだからって気にするな、小遣いくらいは出すから」と言ってくれているし、両親からの送金もあるのは知っている。だからそこまで気を遣う必要はないとは分かっているが、負担をかけないに越したことはないし、小遣いくらいは自分で稼ぎたいと思っていて……。
と、そんなようなことを話すと、瀬戸は「ふうむ」と一声唸り、ややあって、テーブルに片肘を突いて身を乗り出した。
「あのさ。君、割っちゃった壺は弁償しなくていいから、うちで働かない?」
「へっ?」
「えっ」
「何を……!」
瀬戸の意外な申し出に、汀一と女の子と長髪の少年の声とが重なった。少年少女の大げさなリアクションに、瀬戸は「そんな驚かなくても」と苦笑し、汀一を見つめて説明した。
曰く、さっき話したように店を半分カフェにしてしまったので、自分はそっちに常駐しなければならず、結果、古道具屋の方はどうしても手薄になりがちである。呼ばれたら行くようにはしているが、カフェの方が忙しい時はそうもいかないし、カウンターに座って「営業中です」とアピールしてくれる人が欲しいなあとは思っており、都合の付く放課後と土日だけでも入ってくれると助かるのだがどうだ、とのことだった。
「しがらみのない人が欲しかったからさ、引っ越してきたばっかりの高校生ならちょうどいいんだよねえ。あ、仕事は簡単だよ? 要するに座っててくれればいいんだから、知識も技能もなくて大丈夫。スマホを弄ってようが宿題してようが本を読んでようが歌を歌ってようが……いや歌はダメか。ともかく大体自由だよ。どうだい?」
「え? いや、どうだいと言われましても……」
期待に満ちた瀬戸の視線から逃げるように汀一は目線を逸らし、言葉を途切れさせた。そっと横目を向けた先、隣のテーブルでは、詰襟シャツの長髪の少年が「自分はこいつを雇うことには反対です」と無言で訴え続けている。その険しい顔に怯えつつ、汀一は少年をそっと手で示して問いかけた。
「そもそも、古道具屋に人手が足りていないという話ですけど……だったらこの人は」
「僕は時雨。濡神時雨だ」
はっきりとした自己紹介が汀一の質問に割り込んだ。
「ぬれがみしぐれ……?」
姓名ともに聞き慣れない名前を思わず汀一が繰り返すと、古道具屋から現れた長髪の少年──濡神時雨は深くうなずいた。その隣の席の女の子が続けて名乗る。
「そうか、まだ名乗ってなかったっけ。わたし向井崎亜香里。よろしくね」
「あ、どうも……! おれは葛城汀一で」
「それはもう聞いたよ」
「え? あっ、そっか、そうだっけ。緊張しちゃって……」
亜香里の気さくな笑みに汀一の顔が赤くなる。へへへ、としまりのない照れ隠しの笑いを浮かべた後、汀一は慌てて瀬戸と時雨に向き直り、話を戻した。
「古道具屋には、こちらの濡神……くんがいるんじゃないんですか? さっきお店から出てきたってことは、古道具屋の人なんですよね。それともたまたま居合わせただけ?」
「いや、僕はここに住んでいる。瀬戸さんや亜香里と同様に」
「『同様に』……?」
時雨のあっさりした回答を受け、汀一は思わず問い返していた。全員の苗字がまるで違うのに、一緒に暮らしてるってこと? 何か複雑な事情でもあるのかと汀一は訝ったが、この状況でプライバシーにがんがん首を突っ込めるほど図太くはないのですぐ黙る。だが、と時雨がさらに続ける。
「僕は普段は店の奥の工房で作業の手伝いをしているし、外に出ることも多い。だから店頭に常駐するわけにはいかないんだ」
「あー。だからバイトが要ると」
「それはあくまで瀬戸さんの主張だ。カウンターに誰かいた方がいいという意見はともかく、僕は部外者のバイトを雇うことには反対だ。ましてや君のような……店頭の商品をうっかり破損するような不注意な人はどうかと思う」
納得した汀一に時雨が憮然と切り返す。面と向かってそこまできっぱり否定されると一周回って気持ちが良い。汀一は「はああ」とだけ相槌を打ったが、そこに瀬戸が穏やかに口を挟んだ。
「僕は良いと思うけどねえ。それに、時雨くんに友人を作るきっかけになるかも」
「え?」
「ああ、なるほど。確かに、時雨はもっと同年代の友達作った方がいいもんね」
面食らう時雨の隣で亜香里がしみじみとうなずく。時雨は「いや、それとこれとは別の話だろう」と食い下がったが──いや、食い下がろうとしたが、そこに亜香里がすかさず反論した。
「全然別じゃないよ。それに今は瀬戸さんと葛城くんが話してるんだから、時雨はちょっと待ってなさい。いい?」
「……分かった」
亜香里にきっと見据えられた時雨が悔しそうに押し黙る。背丈こそ時雨の方がはるかに上だが、力関係では亜香里の方が上のようだ。同い年だそうだけどお姉さんと弟っぽいな、と汀一は思い、二人はどういう関係なんだろう、とも思った。
時雨が静かになったところで、汀一は改めて瀬戸からバイトの条件の説明を受けた。
仕事の内容は、土日や平日の夕方の店番である。基本、入れる時に入ってくれれば構わないから、と瀬戸は言い足した。値札が張ってあるものは普通に売ればいいし、そうでない場合は瀬戸や時雨を呼ぶこと。以上。ちなみに時給は汀一が思ったよりは高かった。正直、素人の高校生には充分な額である。
一通り聞いた汀一は、天然木のテーブルを見つめながら考えた。壺を蹴っ飛ばしてしまった時はこんなことになるとは思わなかったが、これは決して悪い話ではない。無言のまま「お前みたいなバイトは要らんのだが?」と訴え続ける時雨はちょっと怖いが、話を聞く限り仕事は楽そうだし、バイトするなら壺は弁償しなくていいらしいし、小遣い稼ぎにもなり、しかも亜香里の隣で──正確には同じ屋根の下の隣の店で──働けるわけで、だったら断る理由はない。汀一は顔を上げ、口を開いた。
「あの……おれとしては、すごくありがたいお話だと思います。ですけど、一回、家に帰って相談させてもらっていいですか」
「ああ、それもそうだよね。未成年だもんね、保護者の同意は要るよね。もちろんですよ。色よい返事をお待ちしております」
穏やかな笑顔の瀬戸が慇懃に頭を下げる。「こちらこそ」と礼を返し、瀬戸と連絡先を交換してから席を立つと、亜香里が気さくに微笑んだ。
「一緒に働けるといいね。一緒って言うか、隣だけど」
「うん。ありがとう」
「時雨もほら、『待ってます』とか言わないと」
「なぜ思ってもいないことを言わなくちゃいけないんだ。正直、店先の壺を蹴り飛ばすようなやつは、僕は店に入れたくはない」
依然として憮然とした顔で眉根を寄せる時雨である。汀一は「以後、気を付けます」と顔を伏せ、一同を見回して再度一礼した。
「今日はほんとお騒がせしました。まっすぐ帰って、このこと相談してきますので」
「まっすぐ? いや、別にそんなに急がなくてもいいよ」
「いえ、それじゃ申し訳ないので……。それに、もうそろそろ帰ろうと思ってましたし。じゃあ失礼します」
そう言って席を立った汀一は、カフェのガラス戸に手を掛け、そこでぴたりと固まった。困惑した顔で静止する汀一に、「どうしたの?」と亜香里が問いかける。
「忘れ物?」
「じゃないんだけど……あの、ええと……つかぬことを伺いますが……おれの家にまっすぐ帰るには、どうすればいいんですかね……?」
「はあっ?」
汀一がぼそぼそと尋ねると、時雨は一層険しい顔になって戸惑いの声を発した。同時に亜香里がぷっと噴き出す。
「あっ、笑っちゃってごめん。そうだよね、引っ越してきたばかりだったら、道が分からなくても仕方ないよね」
「う、うん……。ふらふら歩いてここまで来たから……」
「なるほどねえ。なら時雨くん、彼を案内して送ってあげなさい」
「僕ですか? 瀬戸さんどうして僕が」
「困った時はお互い様だよ。そっちのお店は見ておくから」
瀬戸がきっぱり言い切ると、時雨はそれはもう不本意そうに立ち上がり、縮こまる汀一に「行こう」と声を掛けてカフェを出た。一応案内してくれるようだ。瀬戸と亜香里に別れを告げ、汀一は慌てて後に続く。
時雨は古道具屋の店先の傘立てに立ててあった赤黒い傘を手に取り、歩き出す。それ、こいつの傘だったんだと納得しながら、汀一はおずおずと時雨の横に並んだ。こうして隣から見上げると、その背の高さがよく分かる。
「あの、濡神くん? なんで傘を? 雨降ってないけど」
「見れば分かる。バス停まででいいか?」
「え。あ、うん……。でも、どのバスに」
「どれに乗ってどこで降りればいいかは教える。家は長町だったな。どのあたりだ」
「それが言えれば苦労はしないわけでして」
「……近くに何がある」
「えーと……そうそう、新しい体育館があった! 市民体育館みたいなやつ」
「ああ、三丁目か」
うなずきつつ、時雨はさっき汀一が下ってきた石段の下に出た。そこを上るのかと思いきや、時雨は階段を下りた先にまっすぐ伸びる、やたらと細い道へと向かってしまう。
「そっちなの? バス停なら、階段の上の道にあった気がするんだけど」
「記念館前より浅野川大橋のたもとの乗り場の方がバスの本数が多い」
「あ、そうなんだ」
きっぱりとした物言いに汀一が応じ、会話はそこで途切れてしまった。横に並ぶのすら難しいような細い道を、時雨はずんずん進んでいく。気まずい数秒の沈黙の後、汀一は眼前のまっすぐ伸びた背中に声を掛けた。
「……壺割っちゃってごめん」
「もういい。不可抗力なら仕方ない」
「は、はい……。それとあの、もう一ついい? なんでわざわざ傘を」
「しつこいな。使うからだ」
「使うって、雨なんか降ってないのに……?」
暗くなってきた空を見上げて汀一が首を捻った、その矢先だった。汀一の眉間にぽたりと空から水滴が落ちた。え、と戸惑う間にも、水滴は──いや雨粒は、次々と汀一の上に降り注いできたが、すぐに視界に赤黒い布が広がり、雨を防いでくれた。
時雨が傘を広げたのだ。汀一が濡れないよう腕をまっすぐ伸ばしてくれている。「言ったろう」と言いたげなその顔を見上げ、汀一は立ち止まったまま目を丸くした。
「ありがとう。降るって分かってたわけ?」
「金沢は雨が多いからな」
「へー。だとしてもすごいね、濡神く」
「時雨だ」
ぶっきらぼうな一声が、汀一の言葉に割り込み、遮る。「え?」と見返す汀一に溜息を返し、行くぞ、と視線で促しながら、時雨は肩をすくめて続けた。
「『時雨』でいい。苗字では呼ばれ慣れていないし、くん付けもどうも気味が悪い」
「そうなんだ。あ、じゃあおれのことも汀一でいいから」
「分かった。もっとも、呼ぶ機会はそんなにないとは思うが」
フレンドリーに笑う汀一に時雨が呆れた顔を向け、そうかもね、と汀一が苦笑する。そうして時雨の傘に入ったまま細い道を進むと、大きな川沿いの石畳の道に出た。
開けた視界に広がる光景に、汀一は思わず立ち止まり、へえ、と声を漏らした。
川を見下ろす石畳の道沿いに軒を連ねるのは、ぼんぼりのような外灯を掲げた風情のある町家である。さっきの古道具屋でも見たような壁の格子が印象的だ。
目の前を流れる川は、川幅こそ広いが、水量は少なく流れも穏やかで、よく澄み切った水が外灯の光を淡く照り返しながら、夕闇の薄暗がりの中をさらさらと流れている。降り出した雨を避けながら数組の観光客が写真を撮っていたが、この風景を残しておきたい気持ちは汀一にもよく分かった。
「綺麗なところだね……! 絵みたいだ」
「漠然とした感想だな。絵と言っても色々あるだろう」
「……ごめん」
「別に責めているわけじゃない」
「はい……。ここって、どういう場所なの?」
「主計町の茶屋街だ。そこの川が浅野川。金沢の二つの大河のうち、『女川』と呼ばれている方だ」
「女川……? 女の人っぽいのかどうかはよく分からないけど……でも、なんだかありがたい気持ちになる川だね」
素直な感想を口にしながら、汀一は川とその周辺の光景を眺めた。何を立ち止まっている、早く歩け、と急かされるかと思ったが、時雨は地元の光景を誉められたことでまんざらでもない気持ちになったのか、汀一の横に立ち止まったままうなずいた。
「実際、この川は一種の信仰対象だからな。彼岸の中日の深夜、この川に架かる七つの橋を渡る『七つ橋渡り』という行事があるくらいだ」
「それをするとどうなるの」
「詳しくは知らない。寝たきりや中風にならないとか、そんな話だったと思うが……要するに、不穏な邪気を川に流してしまうわけだ。古来、流れる水は邪気を祓うとされているから、そのあたりから出た行事だろうと瀬戸さんは言っていた。……ほら、行くぞ」
「あ、うん。ちなみにここが女川だとすると、男川もあるわけ?」
「ああ。男川は、街の南側を東西に流れる犀川の俗称だ。あっちは浅野川に比べて流れも速いし水量も多く、雄々しいからな」
「へー。また見に行ってみるよ。にしても、大きい川っていいよね。前に住んでたところは全部暗渠だったから新鮮だ」
傘の下から川を見下ろしながら汀一が素直な感想を口にする。それを聞いた時雨は、この小柄な同い年の男子に少し興味を持ったのか、あるいは単なる社交辞令か、抑えた声を発した。
「金沢に来る前はどこに住んでいたんだ?」
「奈良だよ。奈良と大阪の県境あたりの新興住宅地。その前は埼玉で、そのもう一つ前は岐阜だった」
「引っ越しが多いんだな」
「うちの父親、プログラマーでさ。そこそこ優秀らしいんだけど、ヘッドハンティング受けるのが好きで、よく転職するんだよね。で、その度に勤め先が変わるから、あっち行ったりこっち行ったり落ち着かなくて。俺の名前が汀一なのに」
「何?」
「だから、『ていいち』なのに定位置にいなくて引っ越しが多いという……いえ、何でもないです。忘れて」
で、その父親が、今度はシンガポールの企業に引き抜かれて……と、汀一は歩きながら続けた。汀一は日本にいたかったし、両親も「高校生だから親がいなくても大丈夫だろう」と納得してくれたので、金沢にいる父方の祖父母のところに引っ越してきたのだ。
「転入試験受けなきゃいけなかったんだけど、受験勉強が抜けてないうちで助かったよ」
「転入先はどこの高校なんだ?」
「えーとね、確か石川県立の……」
週明けから通うことになっている公立高校の名前を汀一が告げる。「そこの一年四組」と言い足すと、時雨はふいに立ち止まり、怪訝な顔で傍らの汀一を見下ろした。
「今の話は本当か?」
「う、うん。そのはずだけど……どうして?」
「……僕も、その学校のそのクラスに在籍しているからだ」
抑えた声が浅野川沿いに響き、時雨が再び歩き出す。汀一は慌てて歩調を合わせ、時雨の顔をまじまじと見上げたが、すぐにほっと安堵の溜息を落とした。
「そうなんだ……! 良かった」
「『良かった』? 何がだ」
「え? いや、だって、転校前に知り合いが出来たわけだから、そりゃ喜ぶでしょ」
「……そういうものなのか?」
「そういうものだよ。おれ、転校は多かったけど、知らない人しかいないクラスに入ったことしかない」
「当然だろう。新しい土地に移るわけだから」
「分かってるけど、だからこそだよ。知り合いがいるだけで安心感が全然違う」
大げさに胸を撫で下ろした汀一が、良かった良かったと笑顔で何度もうなずく。それを見た時雨は不可解そうに首を傾げ、心底怪訝な目を傍らの小柄な同級生へと向けた。その意外な反応に、汀一は目を瞬いて問いかけた。
「なんで『わけがわからない』みたいな顔を……?」
「それはこっちが聞きたい。……自分で言うのも何だけれど、僕はさっき、君のことをかなり悪
あ
しざまに評したし、今だって決して友好的な態度を取っているわけじゃない。そんなのと同じクラスで嬉しいのか、君は? むしろ残念がるのが当然では」
「あー、なるほど。正直、時雨のことは、とっつきづらそうな人だなとは思ってるけど」
「本当に正直だな」
「ごめん! でも、残念だなんて思わないよ。さっきの状況なら時雨が怒るのは当たり前だし。自分のところの商品を蹴っ飛ばされて壊されたんだから。おれ、結構へらへら笑ってやりすごしちゃう方だから、怒れる時に怒れるのって偉いと思うし、尊敬する」
けろりとした顔でそう告げた上で、汀一は「さっきはほんとごめん」と重ねて詫びた。その答が予想外のものだったのだろう、時雨はきょとんと目を丸くしていたが、ややあって薄赤くなった顔を少し上げ、それはもう抑えた声をぼそりと発した。
「……さっきは、ちょっこし大人げなかった」
「え」
「何でもない」
ぶっきらぼうにそう言い切るなり、時雨は歩調を速めた。傘から出ると濡れてしまうので汀一も慌てて続く。
「『ちょっこし』って金沢弁?」
「え? ……ああ。たまに出てしまうんだ」
「出てしまうって、別に悪いもんじゃないんだから。他にどういうのがあるの」
「いきなり聞かれてもパッと出てこないが……『あんやと』とか、『げん』や『がん』、『がいや』のような語尾などだ。『何言うとるげん』のように使う」
「あんやとってのは、ありがとうってことだよね。うちの祖母ちゃんがよく言う」
「よく考えたら君の祖父母はこの街の人なんだろう。僕に聞かずに家で聞けばいい」
呆れた様子で時雨が告げる。そりゃそうだと汀一は笑った。
やがて立派な橋のたもとのバス停に着くと、時雨は汀一にこれから乗るべきバスと降りるべき停留所を懇切丁寧に教えてくれた。さらには「高校にバスで通うつもりなら、バス用のI Cカードを買っておくといい」とも説明し、それをどこで買えばいいのかまで教えてくれた上、汀一が乗るべきバスが来るまで一緒に待ち、見送ってくれた。
バスの窓ガラス越しに、傘を差した長身の人影が遠ざかっていく。それを見ながら、そっけないしドライで不愛想だけど、悪いやつじゃないんだな、と汀一は思い、微笑んだ。
* * *
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峰守 ひろかず
滋賀県在住。第14回電撃小説大賞〈大賞〉受賞作『ほうかご百物語』で2008年にデビュー。『絶対城先輩の妖怪学講座』『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』『うぐいす浄土逗留記』『妖怪大戦争ガーディアンズ外伝 平安百鬼譚』(全てKADOKAWA)、『今昔ばけもの奇譚』(ポプラ社)など、妖怪を扱った作品を多く手掛ける。