夕闇通り商店街 コハク妖菓子店 - WEB asta
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夕闇通り商店街 コハク妖菓子店

プロローグ

 おや、いらっしゃいませ。人間のお客様とは珍しいですね。
 こんな場所に来るのは、だいたいが霊か生き霊、あとは存在が不安定になった人だけですから。
 ここはかくりよ町の果て、夕闇ゆうやみ通り商店街。私のようなはぐれ者や、行き場のない者しか住んでいない忘れられた場所です。
 申し遅れました。私は『コハク妖菓子ようがし店』の店主、孤月こげつです。どうぞお見知りおきを。
 この店にたどりついたということは、あなたにもなにか悩みがあるんじゃないですか? 存在が不安定になってしまうほどの悩みが。
 どうしてわかるのかって? さあ……、ただの勘ですかね。
 ─おや、そちらの菓子がお気に召しましたか。お買い上げありがとうございます。それではお包みしますので、こちらへどうぞ。
 おっと、店の奥は覗かぬようお願いします。ちらっと見えた大きな棚が気になる? ふふ、ダメですよ。好奇心は猫をも殺しますから。
 では商品はこちらです。
 当店の妖菓子は、どんな効果が現れるかわかりません。用法・用量に気をつけてお召し上がりください。
 もしなにか不思議なことが起こっても、当店では一切責任を負いませんので、お気をつけて……。


第1話 よくばりこんぺいとう

 最近、彼氏が冷たい。
 彼氏のせいではなく、受験生だから忙しいっていうのは理解しているけれど、それでも寂しい。
 メールも電話も減ったし、向こうから連絡が来ることはほとんどない。『試験前だから返事できなくなるかも』と告げられ、ものわかりのいい彼女のふりをしてうなずいたけれど、こんなに毎月模試があるなんて知らなかった。むしろ、試験前じゃない時期のほうが少ないくらいだ。
 友達には、『彼氏がいるだけいいじゃん』『贅沢ぜいたくな悩みだよ』って言われるけれど、みんなわかっていない。
 中学のときからずっと好きだった一学年上の先輩。中学時代は生徒会長を務めていて、かっこよくて頭もいいのに気さくなその姿に憧れていた。
 死ぬほど勉強して同じ高校に入ったのに、一年近く見ていることしかできなかった。やっとのことで告白して、OKをもらえて……。とりたてて美人でも成績優秀でもない平凡な自分が付き合ってもらえたのは、いまだに奇跡だと思っている。
 でも、楽しかったのは春休みくらい。三年生になったら先輩はいきなり受験生モードに変わって、私に対する態度もそっけなくなった。
 休みの日にどこかに遊びにいくなんてもってのほかだし、登下校は貴重なデートの時間だったのに、予備校に通い始めた先輩は講義がない日でも自習室に行って勉強している。
 片思いのときよりマシ、と感じるかもしれないけれど、悩みは今のほうがずっと深刻になっている。
 わがままを言って嫌われたくない。面倒くさい彼女だと思われて、別れを切り出されたくない。
 それでも会いたいし、声を聞きたいし、もっと優しくしてほしい。
 やっぱり、私がよくばりなんだろうか。我慢して、先輩の受験が終わるまで待てばいいのだろうか。今が五月だから、あと十ヶ月も。
 でも、大学生になったらますます距離が遠くなってしまう。私のことなんて忘れて、同じサークルやバイト先の女の子と仲良くなって、自然消滅するかもしれない。
 一年近く我慢して、そんな結末だったらつらすぎる。
 どうしたらいいんだろう。なにもしなくても先輩が私のほうを向いてくれる、そんな魔法なんてあるわけないのに。
 私は放課後、とぼとぼと学校近くの神社に向かっていた。住宅街からちょっと離れたところにある、こぢんまりしたさびれた神社。周りには木が生い茂っていて少し高台にあるので、石造りの短い階段を上ることになる。
 ここは高校受験のときも、先輩に告白するときもお参りした神社だ。二回とも成功したため、それ以来重要なイベントのたびにここを訪れている。しょっちゅう神頼みしている女子高生なんて絶対重いから、このことはだれにも内緒。
 木や階段のおかげで、こうして境内けいだいに入ってしまえば人の目から逃れられるのも都合がよかった。
 お賽銭さいせんを入れ、古びた鈴を鳴らして、手を合わせる。
 先輩と長く恋人同士でいられますように。もっと仲良くなれますように。
 しんみりと心の中でお願いしていると、暗い考えがふつふつと湧いてきた。
 そもそも先輩は、私のことを本当に好きなのだろうか。振るのが面倒だから、付き合ったままでいてくれるのでは……? 告白をOKしてくれたのだって、気まぐれだったのかもしれない。
 じわぁ、とまぶたが熱くなって、涙がにじむ。
 今の自分がとてもナーバスになっているのはわかる。雑誌に載っていた『重い彼女・嫌われる彼女』一直線なのもわかっている。でも、初めての彼氏なのに、なにもかもうまくできる人なんているのだろうか。
 そのとき、懐かしい香りの風が吹いた気がして、ふっと境内の奥に目をやる。
「……あれ?」
 木や草が生い茂っていたはずの場所、その一部がぽっかりと拓けていて、私は目を見開いた。
 神主かんぬしさんが、ジャマな木を切ったのだろうか? でもなぜ、あの一部分だけ?
 それに、この風はあの場所から吹いている気がする。お香のような、古い木のような、不思議な匂い。
 スクールバッグの持ち手をぎゅっと握りしめて境内の奥に向かう。木と木の間が覗けるくらいまで歩を進めると、向こう側には予想もしなかった風景が広がっていた。
「えっ……?」
 まっすぐに延びる、舗装されていない道。その両側に並んだ、レトロ感ただよう木造のお店。お祭りのときのように吊り下げられた提灯ちょうちん
 夕焼けのオレンジ色に沈んだそこは、古びた商店街だった。
「な、なんで……?」
 神社の裏に、こんな商店街なんてあっただろうか。しかもどうして、道がこちらに向かって延びているのだろう。まるでこの神社が商店街の入口みたいじゃないか。
 怪しい匂いを感じながらも、好奇心のほうが大きかった。以前映画で見た昭和の町並みに似ていたからかもしれない。
 履き慣れたローファーで、一歩踏み出してみる。アスファルトとは違う、砂を固めたような道には小石も点在していて、〝道路〟と呼んでいいものか迷う。
 お世辞にもキレイとは言えないくたびれた店はほとんどが閉まっているようだ。扉に『休業中』という札がかかっている店もあれば、私が通りかかる前にぴしゃりと扉を閉ざしてしまう店もある。なんだか、感じが悪い。
 外観だけではなにを扱っているのかわからない店も、日本語ではない文字で看板が書かれた店もあって若干気味が悪い。街灯がなくて、赤や白の提灯が下がっているのもまた、現実味がなくて肌がぞわぞわする。
 それでも引き返さずに進んでいるのはどうしてなのか、自分でもわからない。悩みすぎて、やけっぱちな気分になっているのだろうか。普段は臆病で、文化祭のお化け屋敷だって入れないタイプなのに。この場に先輩がいたら、『こんなところ行くのやめましょうよ。怖い』って腕を引っ張って止めていただろう。たぶん。
 そろそろ道の突き当たり、というところで、やっと明かりの漏れているお店を見つける。商店街の端にあるその店は、ほかの店よりも小綺麗に見えた。古いけれど、手入れはされていそうな飴色の木壁。ガラスの覗き窓がついた木の扉は立体的な装飾が施されていて、桃色のぼんぼりが飾られている。
 看板には、筆文字で『コハク妖菓子店』と書いてあった。
 洋菓子店ではなく、妖菓子店? と疑問に思う。しかも、定休日が『新月と満月の日』とはどういうことだろう。
 でも、お菓子屋さんなら高い商品を無理にすすめられなそうだし、ちょうど甘いものが食べたかったし、と入る理由を考えながら扉を開けてみる。キイィ……と木のきしむ音がして、薄暗い店内の風景が目に飛び込んできた。
 天井のランプに照らされ、腰の高さほどの棚に雑然と置かれているのは、大福やおまんじゅうなどの和菓子や、こんぺいとうや金太郎飴、キャラメルみたいなレトロなお菓子。
「いらっしゃいませ。人間のお客様なんて珍しいですね」
 暗がりから声がして、びくっと肩が跳ねる。店の奥に視線を向けると、金髪で袴姿のイケメンが立っていた。年は二十代半ばくらいだろうか。切れ長の目も金色で、肌の色も白く、日本人離れした容姿をしている。……そして一瞬、長めのショートヘアの上に薄茶色の、狐のような耳が見えたような気がするのだが、見間違いだろうか。
「こ、こんにちは。……人間が珍しいって、どういうことですか?」
 ふ、とイケメンが口角を上げる。作りものめいた微笑みを浮かべると、余計に現実味がなく精巧な人形のように思える。
「ここは現世うつしよ幽世かくりよの狭間、夕闇通り商店街。ここに来るのは霊か生き霊、もしくはあなたのように存在が不安定になった人間だけです」
「ええっ……」
 その説明にびっくりしたけれど、すぐに理解が追いつく。
 おそらく、ここはこういったコンセプトの店なのだ。設定があって、テーマパークのような接客をするタイプの。
 最近こういうカフェやお店が増えているのは知っている。でも、こんな辺鄙へんぴな場所でやっても話題にならないと思うのだけど。
「申し遅れました。私は店主の孤月といいます」
 男性にしてはやや高めな、涼やかな声で挨拶すると、孤月さんは頭を下げた。
「ど、どうも……。じゃあそうすると、孤月さんは狐かなにかなんですか?」
 さっき一瞬だけ見えた耳はコスプレ道具だろう、と当たりをつけてたずねてみる。きっと久しぶりのお客さんで張り切っているだろうし、ここまで演出してもらって黙っているのも申し訳ない。
「おや、鋭いですね。半分だけ正解です」
「半分だけ……?」
 続きをうながしてみたけれど、孤月さんはそれ以上なにも言わない。ついでだし、ほかに気になったことも質問してみようか。
「あの。どうして新月と満月の日がお休みなんですか?」
「嫌いなんです、新月も満月も。私は中途半端な存在なので、月の力が極端に強まる日や弱まる日には、具合が悪くなるのですよ」
 皮肉めいた声色で孤月さんが答える。先ほど『半分だけ狐』と言っていた設定が関係しているのだろうか。というか、月に二回しかお休みがなかったら、具合が悪くなって当然だと思うのだが……。ほかに従業員もいなそうだし、このお店はひとりで経営しているのかもしれない。
 せっかくこんなにイケメンなのに、流行らない店をやっているなんてもったいないなあ……と思いつつ商品を眺めていると、
「存在が不安定になるのには理由があるのですよ。あなたも、なにか思い悩んでいることがあるんじゃないですか」
 と声をかけられ、手に取ったこんぺいとうを落としそうになった。
「な……なんで、わかるんですか?」
 思わず、孤月さんの金色の目を凝視してしまう。まつげも金色で、マッチ棒が載るくらい長かった。
「経験と、勘ですかね。……おや、そのこんぺいとうが気になりますか?」
「あ……、えっと……」
 私の手にあるお菓子を見て、孤月さんがにやりとした。丸みのある透明な容器に入ったこんぺいとうは、淡い紫色と青色のグラデーションが紫陽花あじさいのようだ。見た目がかわいいのはもちろんだけど、私が気になったのはそこではなかった。
「商品名が気になって……」
 ここのお菓子はどれも、少し変わった商品名がついている。ただの『豆大福』や『どら焼き』ではなく、なにかしらの修飾語が付属しているのだ。
 このこんぺいとうは、『よくばりこんぺいとう』。自分はよくばりなのだろうか、と考えていたのでつい手に取ってしまった。
「これは、食べると小さないいことが起きるこんぺいとうなんですよ。でも、一日一粒しか食べてはいけません」
 内緒話をするように人差し指を唇に当てて、孤月さんがメルヘンな設定を説明する。
「なるほど、それで『よくばり』なんですね。でも、こんぺいとうを一日一粒だけって、難しくないですか?」
「そうですね。……でもそれでなにかが起きても、私には責任が持てませんから」
 ドキリ、と心臓が大きく動いた。孤月さんの冷たい表情が、まるで脅しているみたいだったから。
 なにかって、なんだろう。孤月さんの演技があまりにもリアルだから、設定ということを忘れて怯えてしまった。
「─これ、買います」
 腰が引けたのを悟られたくなくて、孤月さんに押しつけるようにこんぺいとうを渡す。
 値段は、『三百圓』と書いてあった。安いし、粒も大きくておいしそうだし、買っても無駄にはならないだろう。
 手打ちのアンティークなレジがあるカウンターでお金を払うと、孤月さんはこんぺいとうをセピア色の紙袋に入れてくれた。
「ありがとうございます。用法・用量に気をつけてお召し上がりください」

   * * *

 変わった店だったな、と、家に帰ってからも自室でこんぺいとうを眺めてぼうっとしていた。あのやたら鋭い店長さんの副業は、占い師なのかもしれない。それだったら、ミステリアスな雰囲気も芝居がかった演出もうなずける。
「……食べてみようかな」
 夕飯も終わったし、歯を磨く前だし。
 横になっていたベッドから起き上がり、机の上に飾ったこんぺいとうの入れ物を手に取る。中身をざらっと手のひらに出してから、孤月さんのセリフを思い出して容器に戻した。
 びびっているわけじゃなくて、一応設定に合わせてあげるだけだし、と一粒だけ残したこんぺいとうを見て心の中でつぶやく。
 ぱくりと口に放り込むと、砂糖の混じりけのない甘さが広がった。すごく甘いけれど、ちょっとだけハッカの風味もして食べやすい。これを一粒だけで我慢しろなんて、けっこう無茶なお願いだと思う。
 まあでも─。おまじないを信じる歳じゃないけど、本当に三百円でいいことがあったらラッキーだよね。
 このまま明日の予習をすませようと椅子に座ると、枕元に置いた携帯電話がピリリと鳴った。これはメールじゃなくて着信音だ。
 あわてて携帯に飛びつくと、画面には先輩の名前が表示されている。
「も、もしもし? 先輩?」
 緊張して、声が少し裏返ってしまった。だって、電話なんて久しぶりだし。
「あ、加奈かな? 今、電話大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です。どうしたんですか? 先輩から電話なんて珍しい……」
「予備校での模試が終わったところでさ。今日は長めに話せるよ」
 手応えがあったのか、先輩の声は晴れ晴れとしていた。
「ほんとですか? うれしい……」
「いつも加奈にかけてもらってばかりだから、たまには俺からと思って」
 先輩の言葉に、胸がじーんとする。
 いつもは聞き役が多い先輩も、今日は積極的に話を振ってくれる。授業中に先生が言ったギャグとか、友達のやらかした失敗とか、私のくだらない話にも笑って相づちを打ってくれるので、すっかりうれしくなってしまった。
 そのあと一時間くらい楽しく雑談して、気分が高揚したまま私は電話を切った。
 は~っと熱い息を吐き出しながら、携帯電話を胸に抱きしめる。こんなに幸せな気持ち、久しぶり。
「もしかして、本当にこんぺいとうのおかげなのかな……?」
 ちらりとこんぺいとうに目をやり、その甘さを舌先で反芻はんすうする。
 いや、まさかね。たまたまタイミングが重なっただけだって。
 そう自分に言い聞かせたのに、次の日も私は、一粒だけこんぺいとうを口にして登校した。
 教室の席に着くなり、珍しくほかのクラスの友達に廊下から呼ばれた。去年同じクラスで、今でもメールでやりとりを続けている子だ。スクールバッグを机に置いて、廊下まで出る。
「おはよう。うちのクラスまで来るなんて、なにか急用でもあった?」
「ちょっと加奈に渡したいものがあって。はい!」
 満面の笑みで手渡されたのは、映画のチケットだ。しかも、公開前から話題になっているアニメの。
「えっ。どうしたの? これ」
 たずねると、友達はふふ、と含み笑いをした。
「前売り券についてくるグッズ目当てでたくさん買っちゃって。でもひとりでそんなに見にいけないから、加奈におすそわけしようと思って。ほら、加奈の彼氏、このアニメ好きって言ってたでしょ」
「う、うん」
 そういえば、そんな話を友達にしたこともあったっけ。先輩と話題を共有したくて、私もアニメを見ていたのだ。
「今週の土曜日から公開だから、ふたりで見にいきなよ」
「あ……。ありがとう!」
 感極まってお礼を告げると、友達は「いいっていいって。じゃあね」と手を振りながら自分のクラスに戻っていった。
 もらったチケットは二枚ある。私は急いで、先輩にメールを打った。
 前売り券を友達にもらったから一緒に映画に行かないかと誘うと、すぐに返事がくる。土曜日だったら予備校がないからちょうどいいという内容だった。
 やった、久しぶりのデートだ!
 思わず廊下でガッツポーズをしそうになって、ハッと冷静になる。
 昨日の電話に引き続き、今日も予想外のいいことが起こった。ただの偶然ですませようとしていたけれど、いよいよこんぺいとうの効果が真実味を帯びてくる。
『これは、食べると小さないいことが起きるこんぺいとうなんですよ』
 コハク妖菓子店の不思議な雰囲気と、孤月さんの作りものめいた美貌を思い出す。あのお店に行ったらだれだって、ほんの少しの可能性を信じたくなるだろう。
 ラッキーグッズにすがるわけじゃないけれど、『小さないいこと』が続く限り、こんぺいとうを信じて食べ続けてみようと心に決めた。
 それからの毎日は、絶好調だった。コンビニのくじに当たったり、直前に見直していたところが小テストに出たりと、幸運が続いた。それはどれもささやかなものだったけど、毎日代わり映えのしない学生生活を楽しく彩るには充分だった。
 先輩との映画デートもバッチリで、『受験が終わるまで加奈が寂しくないように』とおそろいのシャープペンシルまでプレゼントしてくれたのだ。私が普段使っているキャラものとは違う、シンプルで大人っぽいシャープペンシル。記念日でもない日の思いがけない贈り物に涙ぐんでしまい、『そこまで喜んでくれるなんて』と先輩は驚いていた。
 そうして五月も下旬になるころ、一学期の中間テスト期間がやってきた。
 テスト範囲が発表されたあたりから、図書室や学習室で見かける三年生はピリピリし始め、先輩からメールが届いていた携帯電話もまったく鳴らなくなった。あっという間に、電話するのにも気を遣う日々に元通りだ。
 テスト中にも小さないいことは起きていたけれど、テストのストレスと、先輩と連絡がとれない寂しさには勝てなかった。私はすっかり、ラッキーが続く日常に慣れてしまっていたのだ。
 試験最終日、先輩とおそろいのシャープペンシルで問題を解きながら、ため息をつく。寂しさをまぎらわすために真剣に勉強をしたからか、テストの手応えはあった。『彼氏ができてから成績が下がった』なんてお小言は聞かなくてすむだろう。
 普段だったら解放感にあふれているはずの最終日でも、私の心は晴れなかった。このあと予備校でも定期試験があり、先輩はそちらの対策に忙しくなるらしいのだ。予備校はレベルごとにクラス分けされていて、試験の結果が悪いとクラスを落とされるので、これは仕方のないことだ。
 でも、仕方のないことと、我慢のできることは違う。
 家に帰り、モヤモヤしたままベッドに寝転んだ。せっかくテストが終わったのに、ドラマを見る気にも漫画を読む気にもならない。いつもだったら、待っていましたとばかりに好きなことをして過ごすのに。
 丸っこいこんぺいとうの容器を、手のひらでもてあそぶ。毎日食べているせいで容器の半分くらいまで中身が減ってしまった。
 小さな幸せじゃ解決できないこともあるんだなぁと、なんだかがっかりした気持ちにもなっていた。最初はあんなに、無敵になったような気分だったのに。
『でも、一日一粒しか食べてはいけません』
 ふいに、孤月さんの声がよみがえる。
 私は律儀にその言葉を守っていたけれど、破ったらどうなるのだろう。たくさん食べたらどうなるかなんて、孤月さんは具体的なことは教えてくれなかった。
 一日一粒で小さないいことが起こるのなら、たくさん食べればすごくいいことが起こるのでは? そんな考えが頭に浮かぶ。
 どうして禁止されたのかはわからないけれど、ためしてみたい気持ちがふつふつと湧いてきた。
 ─いいや、食べちゃえ。
 心の中の悪魔がささやいてすぐ、私は容器の蓋を開けて手のひらにざらざらとこんぺいとうを取り出すと、一度に口の中に放り込んだ。
 口いっぱいの、なかなか嚙み砕けないこんぺいとう。強烈に甘くて、ちょっと涙が出てきた。
 容器の中身はさらに半分になってしまったけれど、後悔はない。むしろお菓子をやけ食いしたときのようなすっきりした気持ちだ。
「加奈ー、ごはんよー!」
 階下から母の呼ぶ声がする。「はーい」と答えてダイニングに向かうと、テーブルの上には私の好きなチキンのトマト煮込みが載っていた。しかも、サラダがタラモサラダだ。マッシュポテトに明太子を混ぜたタラモサラダは、『手間がかかって嫌』と母はあまり作ってくれないのに。
「わあ、これ、好きなやつ!」
 椅子に座りながら歓声をあげると、母は「ふふ」と笑った。
「今日、テスト最終日だったんでしょ。今回、テスト勉強もマジメにがんばってたみたいだから、ごほうび」
「うん……、ありがとう」
 がんばったのは本当なのに、その理由を母には隠しているため、罪悪感がある。彼氏のことをいろいろ相談するのって、なんだか恥ずかしいし。
 でも、これってもうこんぺいとうの効果が出ているってことだよね。まだほんのラッキー程度だけど、これからもっと大きないいことが起こるのだろうか。
 父も食卓にそろい、家族全員で夕飯に舌鼓を打っていると、つけっぱなしだったテレビのニュースを見て父が声をあげた。
「ん? このニュース、うちの市じゃないか?」
「えっ?」
 私もテレビに視線を向ける。するとそこには、見覚えのある予備校の名前が映っていた。
「汚職疑惑でしばらく閉校ですって。大変ねえ。加奈の周りには、ここの予備校に通ってる子、いない? ……加奈?」
 母の言葉は耳に入っていなかった。たった今、経営陣の汚職疑惑が報道された予備校は、先輩の通っているところだったから。
「噓……でしょ」
 顔色が真っ青になって、それ以上夕飯を食べ進められなくなった私を両親は心配してくれた。「大丈夫、テストで疲れただけだから」とごまかして部屋に戻る。
 ベッドに倒れ込むと、寒気でぶるっと身体が震えた。
 まさかこれも、こんぺいとうの効果なの? 私のせいで、先輩の予備校がなくなっちゃうかもしれないの?
 予備校がなければもっと会えるのにって、思うこともあった。せめて放課後、一緒に帰れるのにって。
「でも……だからって……」
 こんな大事になるのを望んでいたわけじゃない。
 携帯電話が鳴って、メールの受信を知らせる。おそるおそる開くと、先輩からだった。予備校がしばらく閉まることになった、もうニュースで報道されているらしいと、先輩らしくない簡潔な文面。
 いつもと違う、絵文字がひとつもないメールの文面から、消沈している先輩の様子が伝わるようだった。
 とても電話をかける気にはならなくて、ニュースを見たことと心配していることをメールで伝える。
 明日が来るのが怖い。こんぺいとうの効果は、これで終わりなのだろうか。いや、あんなにたくさん食べたのだから、このまま終わるわけがない。
 もういいことなんて起きなくていいから、どうかこのまま効果が切れますようにと、その日は震えながら眠った。
 次の日。予備校が休みになったから一緒に下校しようと先輩に誘われた。ニュースに関しては、『まだどうなるか決まったわけじゃないし。もし予備校がなくなるようだったら違うところを探すよ』とあっさりした答えだったけれど、無理しているのがわかる。私の話にも笑顔で返してくれて、一見いつも通りの先輩なのだけど、話が途切れたときに横顔を見ると、真剣な顔で考え込んでいるから。
 別れ際に、次の土日は一緒に図書館で勉強しようと誘われた。放課後も休みの日も一緒に過ごせてうれしいはずなのに、ちっとも気分が弾まない。一緒にいても先輩の元気がなかったら、楽しくない。
『……でもそれでなにかが起きても、私には責任が持てませんから』
 一日一粒しか食べてはいけないと注意したときの、孤月さんの言葉を思い出す。
 もしかして、バチが当たったのだろうか。小さないいことじゃ満足できなくて、自分に都合のいい展開を望んだよくばりな私への、警告なのだろうか。
 びくびくしながら一日を過ごし、再び放課後が訪れたときには少し安心していた。
 昨日はこんぺいとうを食べなかったし、今日もなにも起きなかった。これでもう、こんぺいとうの効果は切れたのかも。家に置いておくのが心配で、バッグの奥にこっそりしのばせてきたこんぺいとうの容器を見て、ホッとため息をつく。
 今日返ってきたテスト結果も、予想通りの点数と順位だった。苦手な数学も平均点をとれたのはうれしかったけれど、がんばってもこのくらいなのか、という残念さもあった。もっといい成績をとるには、テスト前だけの努力じゃ無理なのだろう。やっぱり進学校は甘くないなと肩を落とす。
 でも、先輩は三年生になってからずっとがんばってきたし、きっといい結果が返ってきただろう。
 そう思っていたのに、校門で待ち合わせた先輩の表情は暗かった。
「加奈、テスト結果、返ってきた?」
 私がたずねるより早く、先輩から話を振ってきた。学校を出たばかりの通学路はまだ生徒が多く、周りを気にしながら答える。
「あ、はい……。前回よりは少し順位が上がっていました。先輩のほうは?」
「俺も今日返ってきたよ。でも、点数は上がっていたけれど全体の順位は下がっていた」
 期待していた返事と違って、私は一瞬言葉を失った。
「えっ……? だって先輩、あんなにがんばっていたのに」
 テスト前だけ勉強していた私と違って、先輩はずっと努力していた。
「三年になってからがんばり始めたのは、俺だけじゃないってことだよ。特に今まで部活をやっていて、三年になってから引退したやつらの伸びがすごい。予備校に通い始めて安心していた自分が甘かったよ」
 自嘲するような先輩の声色。たしかに、学年が上がってから三年生の空気はがらりと変わった。努力しているのが先輩だけじゃないのも知っていた。でも、こんな厳しい結果になるなんて予想もできなかった。
「このままじゃ、志望校を変えないといけないかもしれない。うちの家計だと国立しか無理って言われているから、そもそも大学進学すらできないかも」
「そんな!」
 反射的に大きな声を出してしまう。家がそれほど裕福じゃないから私立は受験できないという話は聞いていた。だけどどこかで、先輩は自分と違って優等生だから余裕だと楽観視していたんだ。
「ごめん、悪いほうに考えすぎた。予備校の先生を信頼していたから、思ったより気落ちしているのかも」
 そう明るく返す先輩の目は、笑っていない。こんな先輩の表情を見るのは初めてだった。目の下にクマができているのにも、いつもサラサラの髪の毛に寝癖がついているのにも、今気づいた。
 いつもきちんとしていてかっこいい、自慢の彼氏。私は先輩を、完璧な人間だと思い込んでいたのだろうか。どんな状況でも強くて、弱音なんて吐かない人だと信じていたのだろうか。
 そうじゃなかった。ひとつ年上だってだけで、先輩だって私と同じ高校生なんだ。通っている予備校がニュースになって、努力も報われなくて、平気なわけがない。
「加奈、どうしたの?」
 先輩が私の顔を見て目をみはる。いつの間にか私の目からは、ぼろぼろと涙があふれていた。
「わた……、私のせいかも」
 鳥肌が立ち、震える腕で自分を抱きしめる。
「加奈?」
「予備校がこんなふうになったの、私のせいかもしれないんです……!」
 嗚咽おえつをこぼす私の手を引き、先輩は人通りの少ない裏道に連れていった。
「どういうこと? 落ち着いて話してみて」
 優しくうながすように、先輩は私の肩に手をポンと置く。
 私はしゃくりあげながら、不思議なこんぺいとうを買ったこと、それからいいことが続いて、映画のチケットもこんぺいとうを食べたあとにもらったことを説明した。
「でも私、それでも満足できなくて……っ。約束を破って、こんぺいとうを一度にたくさん食べてしまったんです……! 一日一粒って言われていたのに……!」
 あのときに時間を戻したい。そうしたら、殴ってでも自分を止めるのに。
「よくばりになった自分のせいなんです! 先輩の都合なんて考えないで、一緒にいられれば幸せだと思っていたんです……! 自分だけ幸せでも、相手がそうじゃなかったら意味がないって、ずっと気づけなかった……。ごめんなさい……!」
 そこまでひと息にしゃべった私は、バッグを抱えてしゃがみ込んだ。力が抜けて、とても立ったままではいられなかった。
「加奈……」
 バカにするでも失望するでもなく、先輩は真剣な顔でなにかを考えていた。
「そのこんぺいとうって、今持ってる?」
「は、い……。家に置いておくのが怖くて、バッグの中に」
 バッグのファスナーを開けて、しまっておいたこんぺいとうを出す。底が見えそうなくらい減っているそれを、先輩は手に取ってしげしげと眺めた。
 もしかして、信じてくれたのだろうか。こんな荒唐無稽こうとうむけいな話、笑い飛ばされても仕方ないと思っていたけれど。
「見た目は普通のこんぺいとうだね。なんのラベルも貼ってないし、飾り紐も独特だから市販のものではないみたいだけど」
 こんぺいとうの蓋を開けた先輩は、容器に鼻を近づけると「ハッカの匂いがする」とつぶやいた。
「これを一日一粒だけ食べれば、いいことがあるんだよね?」
「あっ」
 先輩は容器に素早く手を突っ込むと、私が止める前にこんぺいとうの粒を口に入れた。
「だ、ダメです、食べちゃ……! なにが起こるかわからないのに……!」
 焦って立ち上がり、先輩の手からこんぺいとうの容器を奪い取る。
「大丈夫。加奈の話だと、一日一粒を守っていれば、いいことしか起こらないんでしょ?」
「そうですけど、でも……」
 ハラハラしながらこんぺいとうを嚙み砕く先輩を見守っていると、携帯電話の着信音が鳴った。
「ごめん、俺の携帯だ。……予備校から?」
 制服のズボンのポケットから携帯電話を取り出すと、先輩は私に断ってから「もしもし」と電話に出た。
「はい。……はい。えっ、本当ですか!?」
 相手の声は聞こえないけれど、先輩の声がワントーン高くなって、驚きに満ちた表情に変わる。
 電話を切ると、先輩は晴れやかな顔で私に向き合った。
「朗報だ。汚職疑惑が晴れて、明日から予備校が再開されるって」
「えっ、本当に……!? よかった……!」
 昨日の今日で、ニュースが撤回されるなんて思ってもいなかった。先輩の頰も上気していてうれしそうだ。
「またあの講義を受けられるなら、もっとがんばれそうな気がする。予備校のレベル分け試験で挽回しないと」
「はい……。早く解決して、本当によかったです」
 もしかして、先輩がこんぺいとうを食べたから、いいことが起こったということなのだろうか。
「そうか……。最初から、そうすればよかったんだ」
 ふたりの関係を良くしたいんだったら、最初からふたりで分け合えばよかったんだ。こんな簡単な方法に気づかないくらい、私は自分のことしか考えていなかった。
「これで予備校のことは解決したんだから、もう加奈の心配事はないよね?」
 棒立ちになったままの私に手を差し伸べながら、先輩が声をかける。
 だけど私は、その手を取らずに首を横に振った。
「いえ……。今回のことで気づきました。私は先輩の彼女でいる資格がないです」
 え、という口のまま、先輩は固まっている。そして、顔をくしゃりとゆがませながら、ゆっくり言葉を発した。
「それは……、俺のことが嫌いになった、ってことでいいの?」
「そんなわけないです! 私が嫌いになったのは……自分のことです!」
 手のひらを握りしめて叫ぶと、またまぶたがじわっと熱くなってきた。
「先輩のことは大好きです。でも、私、またよくばりになって迷惑をかけるかもしれない……。自分がどれだけ自分勝手で子どもなのか、よくわかったんです」
 先輩は、じっと私を見ている。いつ『わかった、別れよう』と言われるのか緊張しながら身体をこわばらせていたら、今度は先輩が首を横に振った。
「そんなの、加奈だけじゃない。俺もだよ。受験勉強をがんばらなきゃいけないのに、加奈の告白を断れなかった。受験でいい結果を出すことも、彼女との高校生活も、両方手に入れたかったから」
「そう、なんですか? 私、告白をOKしてもらえたのは運がよかっただけだと思っていて……」
「そんなことないよ。加奈のことは中学のころから知っていたし、好きだな、かわいいなと思えたからOKしたんだよ」
 カアッと顔が赤くなって、うつむく。先輩がそんなことを考えていたなんて、知らなかった。
「でもその結果、自分のことでいっぱいいっぱいで、加奈がそんなに寂しがっていたのにも気づかなかった。よくばりで自分勝手なのは、俺も同じなんだよ」
「知らなかったです……。先輩はいつも落ち着いていたし、余裕があるように見えていました」
「必死でかっこつけてただけ。実は今だって、こんなこと話して嫌われないかけっこうドキドキしてるし」
 苦笑する先輩を見てやっと、彼をクラスの男子と同じ、等身大の男の子として見ることができた。
「そんなこと、絶対にないです。むしろもっと、好きになりました」
「うん、ありがとう」と言って、先輩は私の頭をぽんぽんとなでる。
「だからもう、これからは大丈夫。こんぺいとうに頼らなくても、ちゃんと自分たちで話し合って問題を解決していけるよ。今日みたいに」
「はい……。ありがとう、ございます……」
 泣くのを我慢していると、先輩はそっと私を引き寄せ、抱きしめてくれた。
 身長差のある先輩の胸は私がすっぽりおさまってしまうくらい大きくて、背中に腕を回しながらドキドキしていた。
 しばらく無言で抱きしめ合ったあと、お互い照れくさそうな表情で離れる。
「これからは……、ひとりで悩む前に、ちゃんと話します」
「うん。そうしてくれるとうれしい」
 理解のある彼女になりたくて、面倒くさい彼女と思われたくなくて、我慢していた。
 それがそもそもの間違いだったんだ。ひとりでは解決できなくても、ふたりだったらなんとかできる問題だって、きっとたくさんあるんだから。
 その後。残ったこんぺいとうは自分で食べずに、家族と友達に一粒ずつ配った。『食べるといいことが起こるらしいよ』と話すと、みんなおみくじを引くときみたいなワクワクした顔になる。
 このこんぺいとうは、本当はこんな気持ちで食べなきゃいけなかったんだ。なにかいいことが起こるかなって考えるだけで楽しくて、それだけで『小さないいこと』が叶うような。
「でもいいの? そんなラッキーアイテムなのに、みんなに配っちゃって」
 こんぺいとうの粒を口に入れずに見つめていた、クラスの友達が気遣うようにたずねる。
「うん、いいの。みんなに食べてほしいの」
 大切な人たちに『小さないいこと』が起こってくれたら、それは自分にとっての幸せにもなるんだって、気づいたから。
 放課後、ひとりであの神社に行ってみると、境内の奥の道はなくなっていた。ぽっかり拓けていた部分にも、元通り木と草が生えている。
 あの日訪れた商店街が現実のものなのか、コハク妖菓子店は本当に存在するのか、わからなくなってきた。
「……もしかしたら、狐につままれたのかな?」
 そうつぶやくと、『心外です』と顔をしかめた孤月さんが頭に浮かんできて、私はふふっと笑みを漏らしてしまった。
   * * *

 少女が佇む神社の屋根に、夕陽に照らされた人影がひとつ。袴姿のその人物には、狐耳としっぽがついていた。
「実は、こんぺいとうを一度にたくさん食べても、一日ひとつしかいいことが起きないだけで、悪いことなんて起きないんですけどね。少し脅かしすぎましたか」
 まったく反省の色が見えない愉快そうな声で、孤月はつぶやく。
「ただ偶然起こっただけの悪いことでも、うしろめたいことがあると自分の行動と結びつけてしまうものなんですね。予想外でした」
 孤月が目を細めると、その動きに合わせてしっぽが揺れた。
「では、いつも通り、いただくとしましょうか」
 手を宙にかざすと、少女の持っていたスクールバッグからこんぺいとうの容器が浮き上がり、ぽうっと光ったまま孤月の手に渡った。
「しかし、よくばりな自分に気づいたとき、人間はこういう行動をとるんですね。非常に興味深い」
 一粒だけ残っていたこんぺいとうを取り出し、ふうっと息を吹きかけると、薄紫色の小さなお菓子は一瞬で琥珀に包まれた。
「また感情のサンプルがとれました。でも、もっと集めなければ」
 少女がバッグの中身をあさって首をかしげるのを見届けると、孤月はわずかに口角を上げた微笑みだけ残して、ふっと姿を消した。



続きは発売中の『夕闇通り商店街 コハク妖菓子店』でぜひお楽しみください!!


栗栖 ひよ子
2018年『菓子先輩のおいしいレシピ』で小説家になろう×スターツ出版文庫大賞の特別賞を受賞し、書籍化デビュー。著者に『恋する金曜日のおつまみごはん〜心ときめく三色餃子〜』、『異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました』などがある。

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