The Cure「Songs Of A Lost World」のこと - WASTE OF POPS 80s-90s

The Cure「Songs Of A Lost World」のこと

The Cureの16年ぶりのニューアルバム「Songs Of A Lost World」を聴きました。

リード曲「Alone」を聴いて思ったイントロの異常な長さというか、むしろこっちが本体じゃね?状態については、結局このイントロがアルバム全体のイントロ的位置付けになるのだろう、という浅はかな推測を行っていたのですが、2曲目もイントロ3分近いし、6分以上ある4曲の全てがイントロ2分20秒以上、ラストの10分20秒ある「Endsong」に至っては、ロバート・スミスが声を発するのは6分20秒過ぎという、本当に「こっちの方が本体」状態。

イントロの長い曲は「Pornography」とか「Sinking」とか「Plainsong」とか、過去から割と彼らはやりがちなんですけど、今回の徹底っぷりはすごい。

というか、過去曲を思い浮かべながら改めて聴くと、このアルバムは随分と違う。
全編ものすごくThe Cureでありながら、フックの効いたメロとか印象的なリフとか、ここまでのThe Cureの楽曲をポップスたらしめていたパーツがこのアルバムではほぼ聴くことができません。

また、楽曲ごとの空気感の振れ幅の狭さは過去作の中でも最強です。
アルバムによっては、えれえポップな曲からえれえダークな曲までが奇跡的なバランスで1枚に収まっているものもあったりするわけですが、そんなの今回は一切ない。

「暗黒三部作」と呼ばれるアルバム群でも、もう少し振れていたような気がするのですが、逆にそれ故にその三部作と並べられるような質感でもなく。

暗いまんまだと目が慣れてきて徐々に周囲の細かいところまでわかってくるような、その機微を存分に味あわせるような、そんな感じの音楽。

キャリアも終盤であることは間違いないこの時期、そのキャリアで積み上げてきた色を出しまくりながらも、これまで過去にはなかったところに着地させるという、まだそういう冒険するんかいなという驚きの1枚。

正味、「曲が短い方が再生数伸びる」とか「最初の数秒で掴むサビ始まり」とか、最近の「売れる音楽」から全速力で遠ざかっている時点でもう何かグッと来る。

とかいって、もう別のアルバムがだいたいできているという話も出てきているわけですが、そっちはフックの効いたメロと印象的なリフだらけの超ポップアルバムだったりしたら、自分は嬉し泣きしながらぶっ倒れます。