デジタル・フィジカル環境の連携 – 早稲田大学
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デジタル・フィジカル環境の連携

3. マスタープラン -キャンパス内部の考え方 / Waseda Campus Master Plan 2023

  • #施設と風景

Mon 01 Apr 24

3. マスタープラン -キャンパス内部の考え方 / Waseda Campus Master Plan 2023

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Mon 01 Apr 24

大学における研究や教育環境は、物理的なキャンパス空間だけでなく、オンラインの空間にも拡張される。すなわち広義の「大学キャンパス」は、デジタルとフィジカルの両環境が連携し相互に補完する仕組みの全体像として捉え直す必要がある。

文部科学省「科学技術白書」(令和 2 年版)では、「誰でも、いつでも、どこでも、個人の能力· 興味に合わせた学びに対応できるデジタル環境(リアルとバーチャルの調和)」が提言され、学校の枠を超えた学習スタイルの構築と、生涯スキルアップ社会の実現を目指すことが説かれている。

これに対して早稲田大学では、次の3つの方針を掲げている。
1)教育DXの推進:学びの質の向上。学修過程·成果の可視化、学修環境のデジタルとフィジカルのシームレス化。
2)研究DXの推進:研究効率の向上。研究 ICT 基盤環境の提供。
3)大学運営DXの推進:ステークホルダーの満足度の向上。サービス充実、多様な働き方の実現、意思決定支援の強化。

これらの中で、とくに物理的な大学キャンパス空間と一体的に考えるべき項目は、「教育 DX の推進」の部分であり、具体的には次の2点である。

教育DXの推進1)学修過程の柔軟化と学修成果の可視化
·知識を共有するプラットフォーム構築
·バーチャルキャンパス·マップの整備

教育 DX の推進2)デジタル・フィジカル一 の学修環境
·キャンパスライフを支えるシェアシステムの構築
·空間性·距離感をもったオンライン授業環境の実現

図 ICTを活用した将来の大学環境に向けた「3つの指針」とマスタープランの関係

図 ICTを活用した将来の大学環境に向けた「3つの指針」とマスタープランの関係

デジタル・フィジカル環境の連携 その1
学修過程の柔軟化と学修成果の可視化

知識を共有するプラットフォーム構築

早稲田大学には数多くの選択授業があるが、人気の授業では定員からあふれる学生が多く、抽選になる現状がある。また、西早稲田キャンパスと早稲田キャンパスなど、専攻の分野を超えてキャンパスの異なる授業に参加したい学生も一定数存在するが、キャンパス間の移動の都合上、履修したい授業を選択できない場合もある。

そこで、大人数授業をオンデマンド化していくことと並走して、授業を選択していない学生にも閲覧できるような「知識共有のアーカイブ·プラットフォーム」を構築することで、分野をまたぐ自由な学びの環境を醸成する。「総合大学」として長い歴史をもつ早稲田大学の強みを生かし、分野を横断する学びを実現するには、オンライン環境での知のプラットフォーム構築は不可欠である。なお、本計画は知識を共有し創発の環境を整備するうえで重要性が高いものの、科目の履修の仕組みとの調整は必要である。動画閲覧だけでは科目の単位取得はできない条件を課すなど、いくつかの工夫によって実現可能である。

バーチャルキャンパス・マップの構築

学生証や教員証の利用データ、映像データを活用したスマート·キャンパスの実現は、同時に利用者が自由に閲覧できる「バーチャル·キャンパス·マップ」を整備することで高い効果を発揮する。大学のICT化は、キャンパスの利用者が管理されるのではなく、利用者それぞれが閲覧し自らの役に立つように活用できるようにならなければならない。

バーチャルキャンパス·マップの機能として、次の3点が想定できる。
1)キャンパス内でいま何の授業がどこで行われているか可視化し、閲覧時に利用可能な空き教室を表示する
2)予約制のラーニング·コモンズの利用状況を示し、利用予約を可能とする
3)自由に利用できるラーニング·アトリウムの混雑具合を可視化する

バーチャルキャンパス·マップは、学生や教職員が利用可能なコモンスペースを整備していくことと並行して行われることで、大学キャンパスのより活発で有効な利用を促すことが可能になる。また、混雑状況を可視化することは、利用者の集中を防ぎ、分散した利用を可能とする点で、感染症の対策としても有効である。

デジタル・フィジカル環境の連携 その2
デジタル・フィジカル一 の学修環境

キャンパスライフを支えるシェアシステムの構築

キャンパスのエネルギー消費量や、キャンパス間の移動のスマート化という観点から、キャンパスライフを支えるシェアシステムの構築が必要である。

ゼロ·エミッション·ビークル(ZEV)の利用とともに、充電用蓄電池を利用してスマートフォンのアプリで事前予約して使用する電動機付きレンタサイクルを導入し、キャンパス間の移動や「大学まち」の利用を促進するなどのシェアシステムを普及させる。早稲田キャンパスが立地する周辺には、本学の他のキャンパスだけでなく、様々な緑地や公園、文化施設に加えて、早稲田大学の歴史とともに長い時間をかけて成熟してきた商業活動の集積がある。これらをシェア·モビリティによって回遊できる仕組みを整えることは、次章で述べる神田川沿いを創造のための一体的なエリアとみなす「早稲田オープンイノベーション·バレー」の実現にもつながる。

空間性・距離感をもったオンライン授業環境の実現

早稲田大学では 2022 年時点で、すでにオンラインでの授業が実施されている。ただし、デジタル環境において教員·学生のコミュニケーションや、学生同士のグループワーク、ディスカッション、問題意識の共有などは十分行いづらい環境にあり、長期的により自由で創造的な環境を整えていく必要がある。

熟議を促進するオンライン環境構築に向けて、具体的には以下の2点の技術的達成が望まれる。

1)空間性·距離感を伴った情報空間上での授業環境を整えること
現在のオンライン環境では、複数の利用者が発言すると音声が重なり合ってしまうため、一人ずつが挙手等をして順番に発言することになる。数人程度の場合はそれでも機能しうるが、数十人や百人を超える大人数の場合、主体的に授業に参画できる者は限られる。デジタル空間上に自分の位置が表示され、位置が近い者同士の声が聞こえる「距離」の導入や、大人数と少人数グループを容易に行き来できる「スケールの自在性」の導入などが検討される必要がある。

2)授業と授業の合間の「廊下的なスペース」を情報空間上に整備すること
次に、フォーマルな環境/インフォーマルな環境の両者が用意される必要がある。ひとりずつ が発言するオンライン環境では、ただちに必要かどうか分からない意見や自信のない意見が発言 しづらいなど、一定の緊張感が生じてしまう。対面講義の前後で行う「雑談」や「個別の相談」 ができるような、教室の外の「廊下」や控室のようなスペースが充実する必要がある。

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