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キャンパスとまちの接点② ー9-10号館周辺
3. マスタープラン -キャンパス内部の考え方 / Waseda Campus Master Plan 2023
Mon 01 Apr 24
3. マスタープラン -キャンパス内部の考え方 / Waseda Campus Master Plan 2023
Mon 01 Apr 24
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キャンパスとまちの接点
「まちと融合した大学」に向けて、本整備計画では「エッジ(線的な境界)からバッファ(厚みをもった緩衝空間)へ」の転換、すなわちキャンパスとまちの両方に開かれた豊かなコモンスペースによってキャンパス外周部を彩る方針を掲げている。マスタープランの第一項目は、この「バッファ」 の計画である。
キャンパスのバッファの計画の全体像は、下図に示す通りである。キャンパスの周囲は高低差 のある地形や既存の塀や樹木によって囲われており、まちとキャンパスの往来は不自由である。 これらを部分的に解消したり、境界部の透明性·キャンパス内部の視認性を高めることがまず行 われるべきである(図中斜線で表記された帯状のエリア)。
加えて、まちと大学が出会う5つの空間を重点的に整備する必要がある。とくに、「正門·大隈記念講堂·守衛室周辺」、「9-10 号館周辺」、「中央図書館周辺」の3か所は、整備することによってキャンパスの印象を大きく変えることのできる重要なポイントである。本ページでは、これら3箇所のうち、「9-10 号館周辺」について現況とこれからの整備方針を掲げる。
なお、これら5つの空間は、キャンパスを構成するコモンスペースの全体像のなかでも最も大きく、外部に開かれた空間と位置付けられる。本計画では学内のコモンスペースの全体を4段階の階層性によって整理しているが、それについては別記事:キャンパスのコモンスペースにて説明する。
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図 大学キャンパスを取り囲むバッファの計画概念図
キャンパスのバッファ その2
9-10号館周辺
テーマ:講堂から続くキャンパス軸とキャンパス西側周辺地域との相互関係を築く
キャンパス西端では 9 号館の建て替えが決定しており、1952 年竣工の 10 号館についても今日に合わせた改良が求められている。また、9 号館の裏手には富塚跡(新宿区登録史跡)が残り、1963 年に早稲田大学が土地交換を行うまで水稲荷神社の土地であった。周辺は大学による敷地の拡張が進み、29 号館の分棟が並んでいる。
本整備計画では 9 号館の建て替えを第一段階の計画と位置付け、将来的には 10 号館の改修と周辺地域との相互関係を築くという、二段階の計画方針を定める。
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図 9-10号館周辺の計画
現況
10号館
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図 10号館の現在
10 号館は大隈記念講堂から続くキャンパス軸の最終地点になっている。しかし西側との高低差によって見通しが悪く、建物内部の階段の向きや配置は軸に沿っていない。また、ピロティの屋外用椅子や机などの設備も老朽化している。
「戸塚」の由来となった冨塚跡
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図 「江戸名所図会.十一」
富塚は戸塚の地名の起源になったとも言われ、高田富士の名で親しまれてきた。現在は第三西門へと続く道に接続しているが、アプローチが悪く、今後の使い途が求められている。
出典:国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/994940/62
整備方針 大隈記念講堂を望む視点場とまちとの結節点の形成
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図「内部再整備」・「外部への開放」という二段階のキャンパス軸の継承
第一段階ではまずキャンパス内部のアクセスの悪さを解消し、9 号館の建替によって開放的な広場を整備する。また富塚跡を継承した地域との結節点を形成する。第二段階では10号館の改修によって、キャンパス西側の高低差をつなぐ動線を可能なものとする。
9号館の建替
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図 9 号館建替案
老朽化した 9 号館の建替がまず進められる。その整備方針の要旨は、(1)東西の 2 棟構成、(2)9号館と 11 号館をシンメトリーにしたピロティによるキャンパス軸の形成、(3)10 号館へのバリアフリーな動線接続、の3点である。
10 号館(共通教室)の改修
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図 10 号館改修の方針
現況の 10 号館を活かしつつ、西側の抜け方向を意識させる改修を目指す。東西方向に大階段を設置して 1・2 階を吹き抜けのガラス張りにし、2 階にカフェを設置することでキャンパス軸を可視化する大学の視点場を形成する。